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57.貴族のカギ

第3部完結まで連続投稿します!

追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!

 大食堂へ向かう廊下は、淡い蝋燭の光に照らされ、壁に掛けられた油絵や古い甲冑の影がゆらゆらと揺れていた。

 その薄暗い空間を歩きながら、リンジー・ロッドフォードが突然言った。


 「ウェル様とお友達になりたいですわ!」


 その一言で、俺とリンジーの間にあった緊張の壁が、すっと消えた。

 そして自然に――お互いを名前で呼び合う仲になった。

 前世ではなかった出来事なので、心の奥が熱くなる。


 しかし、屋敷の中でさえ、リンジーが男と一緒にいることを警戒する父イーニアス様と兄ジョーディ様に知られたら……発狂どころか、俺は国外追放されかねない。

 そんな危険が頭をよぎる。


 「大丈夫ですわウェル。ウェルにあのお二人が何かしようとしたら、一生許しませんわ」


 リンジーはにっこり笑った。

 その笑顔――恐ろしいくらい強い意志を秘めている。

 なぜか心を読まれたかのような感覚が走る。


 そして、廊下の先にある大食堂の扉を開けると、すでにイーニアス様とジョーディ様は席に着いていた。

 長テーブルには美しく並べられた料理がずらりと並び、柔らかな燭光が銀の食器を煌めかせている。


 「今日はリンジーお嬢様の快復祝いだ! ドンドン作ってやるから腹いっぱい食いやがれ!!」


 シェフのアルデンさんは、まるで戦場に出る兵士のような勢いで宣言した。

 公爵家のシェフとは思えぬワイルドな口調だが、嫌いではない。


 俺は深呼吸して、まずはスープから口に運ぶ。

 ナイフやフォークは外側から順に使う――エリスお嬢様の屋敷で仕込まれたマナーが体に染みついている。


 談笑しながら食事を進めると、リンジーがふと俺を見て言った。


 「…平民の方なのに食べ方がキレイですわね…」


 俺が平民だから、テーブルマナーなど知らないと思ったらしい。

 そのため、シェフはテーブルマナーに囚われず、自由に食べられるよう工夫した料理を用意してくれていた。

 しかし、俺は既にマナーが身についているので、自然と所作は整ってしまう。

 その様子をリンジーはじっと見ていたのだ。


 俺は少し考えた。

 この場でグランベル家の話をするべきかどうか。


 グランベル家は全員死亡したことにして、メイドで剣士のココさんとエリスお嬢様、そして俺の三人だけが真実を知っている。

 だが、公爵家の協力を得られれば、暗殺を企てた闇ギルド【ナハト】を効率的に追い詰められるかもしれない。


 リンジーへの愛情、使用人たちへの信頼――その直感に従い、俺は決意した。


 「その件ですが、イーニアス様、ジョーディ様、リンジーの四人だけで話してもらっていいですか?」


 今回も信頼できる面々で情報を共有したい。また、暗殺を企てるスパイが潜んでいる可能性もある。


 「む? リンジー…?」


 「…ウェルくん…ちょっといいかな?」


 はっ!! 呼び捨てにしてしまった――!

 お父様とお兄様から殺気が――!?


 「お父様? お兄様?『二度と口を聞きません』ことよ?」


 しゅん……

 しゅん……


 イーニアス様とジョーディ様は、一瞬で凹んだ。

 リンジー、つよし!


 「……ま…そうだな…ではお前たち、席を開けてくれるかな?」


 威厳を取り戻した口調で、使用人たちに大食堂から退くよう指示を出す。


 「かしこまりました」


 こうして、大食堂は俺とイーニアス様、ジョーディ様、リンジーの四人だけになった。

 柔らかな蝋燭の光がテーブルに落ち、影が壁に映る。屋敷の静寂と、祝宴の期待が混ざり合った空間だった。


 「実は…俺はグランベル家という貴族で執事をやっておりました」


 「グランベル家…!! まさか…あの貴族たちの生き残りか!」


 イーニアス様の態度が一気に変わった。

 【ナハト】のNo.8【ベルモット】と戦ったときもそうだが、どうやらグランベル家について知っているらしい。


 「はい、俺はエリス・グランベルお嬢様に仕える者です」


 「しかし、グランベル家の屋敷が火事になり、グランベル家は潰えたと聞いていたが…」


 ジョーディ様や貴族たちに伝わる情報はそうだった。だが、真実は違う。


 「いえ、違います。グランベル家の最後まで仕えていた俺を含めた三人は生き残りました」


 「なんと!? ということはエリスは無事なのか!?」


 「はい、メイドのココさんも無事です」


 貴族間で語られる情報は偽りだった。屋敷に住む者たちは全員無事だと告げると、イーニアス様は静かに頷いた。


 「そして、グランベル家が焼失したのは事故ではなく、暗殺によるものです」


 「そうか…暗殺であったのか…」


 イーニアス様は驚いた様子は薄い。むしろ、暗殺が行われたことを予測していたようだ。


 「そして、その暗殺を行ったのが闇ギルド【ナハト】です」


 「闇ギルド【ナハト】…。コボルトに成り代わってリンジーを暗殺しようとした組織か…。まさか、グランベル家もそうだったとは」


 そう、グランベル家もロッドフォード家も、闇ギルド【ナハト】の影響下にあった。


 俺は経緯を語る。

 グランベル家にいた者たちは全員無事で、エリスお嬢様と俺は、冒険者として貴族レベルの地位を目指し奮闘していること。

 ココさんとは別行動で、暗殺を企てる【ナハト】の捜索を続けていること。


 「そして、エリスお嬢様も闇ギルドも、貴族のカギを狙っているそうです。カギとは何でしょうか?」


 カギ――

 グランベル家のエリスお嬢様を狙った理由。

 ロッドフォード家のリンジーを狙った理由。

 もしかしたら繋がっているのかもしれない。


 「…そうだな…私の知る限り話そう…」

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


と思ったら


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