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55.お嬢様が目覚める

第3部完結まで連続投稿します!

追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!

 公爵家のリンジー・ロッドフォードを毒の呪いで暗殺しようとした犯人――それは、執事コボルトに成り代わった暗殺ギルドのメンバーだった。


 暗殺専門の闇ギルド【ナハト】。

 その中でもNo.8、【ベルモット】として知られる男――その正体をウェル・ベルクは見破った。


 だが、追い詰められたベルモットは、部屋全体に毒を広げる固有魔法【ポイズンカース】を一瞬で発動した。


 誰も助からない――そう思われたその瞬間。


 シュバ!!!!!!!!

 ズバーン!!!!


 刹那の出来事。


 誰も、その瞬間を目撃できなかった。


 そして、誰が首を斬ったのかも――。


 その中で一番歳下。

 いや、まだ子どもに近いA級冒険者。


 犬族の姿をした少年――ウェル・ベルク。


 その立ち位置、剣の構え、そして残像のように残る気配。

 それだけで誰がやったか、わかる。


 いつベルモットの背後に回ったのか、

 首を斬った瞬間も――誰も知覚できなかった。


 【魔導気】制限時間1秒。


 俺はヒュドラ戦から1か月、前もって【魔導気】を扱うタイミングと量を決め、『気』と『魔力』を融合するトレーニングを積んでいた。


 その結果、一瞬の間であっても全身の力と魔力を最大限に引き出せるようになったのだ。

 【魔導気】によって、身体能力と魔力量は桁外れに跳ね上がる。


 そして、ベルモットの首が宙から床に落ちた瞬間。


 部屋中に蠢いていた不気味な文字――【ポイズンカース】の魔法陣は、すべて消え去った。


「………」


 全員、ただ呆然と立ち尽くす。


「終わりました。みなさん」


 俺は剣を収め、静かに微笑みながら周囲を見渡す。


「…お…終わった…の…か…」


 イーニアス・ロッドフォード様、ジョーディ・ロッドフォード様――

 剣の腕に自信を持つ二人でさえ、圧倒的な実力の前に言葉を失う。


 メイドのレッティ、シェフのアルデンは、何が起こったのか理解できず、混乱した表情のまま固まっていた。


「な…なにがどうなってるんだ!?」


 レッティより先に口を開いたのはアルデンだった。


「…助かった…ということでいいんですよね?」


 レッティは安堵の息をつく。状況は理解できないが、まず安全が確保されたことを確認する。


「……そのようだ…」


 ロッドフォード家の当主、イーニアス様が答える。


「…えっと…犯人は倒したので、リンジー様がお目覚めになると思います。様子を見に行きませんか?」


 状況説明の前に、俺はまずリンジー様が呪いから解放されたことを伝える。


「は! そうだ! そうだった!! すぐに娘の元へ!!!!」


「妹の元へ!!!!」


 叫びながら、イーニアス様とジョーディ様は同時に扉に駆け寄る。


「うおおおおぉ!!!!!!!!」


 ズガーン!!!!


 二人同時の飛び蹴りで扉は砕けた。

 親子の呼吸がぴたりと合う、絶妙な連携だ。


 そして、光のごとく速さでリンジー様の部屋へ駆ける。


「…公爵家の飛び蹴りが見れた…」


 俺は、公爵家らしからぬ豪快な行動に唖然とする。

 しかも当主と次期当主の親子コンビだ。


 リンジー様のことになると、レッティさんやアルデンさんは驚きもしない。

 日常の一幕のようだ。


「俺たちも向かうぞ!!」

「ええ!!」


 アルデンの呼びかけに応じるように、レッティも走り出す。

「お! 俺も!!」


 あとから俺も追いかける。

 ズドドドトドドドドドトドドドドドトドドドドドトドド。


「リーーーーーーーーーーーンジーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!」


 と、声を張り上げながら、イーニアスとジョーディは走る。


「旦那さま方! 私たちも行きます!!!!」


 レッティとアルデンも後を追う。


「この屋敷の人たちって、みんな身体能力高すぎじゃないか?」


 そう呟きながら、俺も追う。


 そして、リンジー様の部屋の扉に到達――


「うおおおおぉ!!!!!!!!」


 ズガーン!!!!


 またしても、親子の飛び蹴りで扉は粉砕される。


「いや、そこもかよ!?!?」


 思わず俺はツッコむ。


「リンジーー!!!!!!! 無事かーーー!?!?!?!?」


 イーニアスが大声で娘の名を叫ぶ。


「お…おぉ…」


 涙を流しながら視線を向ける父と兄。

 ベッドの上には、決して目覚めないと思われたリンジー様が起き上がっていた。


「おはようございますわ。お父様、お兄様」


 病み上がりだが、笑顔で挨拶するリンジー様。


「リンジー…本当にもう…具合は悪くないのか…?」


 涙と鼻水を垂らしながら心配するジョーディ。

 イケメンが台無しだ。


「はいお兄様。わたくしはもう大丈夫です。皆様に大変ご心配おかけしました」


 俺は内心で思う。


 あんなに苦しんで命が危ぶまれていたのに、周囲を気遣うなんて――

 15歳前後とは思えないしっかりした女の子だ。


「…ぐす…ぐす…うおおおおぉ!!!! リーーーンジーーーー!!!!」


 嬉しさのあまり、イーニアス様とジョーディ様は涙と鼻水まみれでリンジーにハグしようとジャンプする。


「……ところで御二方…」


 ズドドーン!!!!


 リンジー様の回し蹴りがイーニアス様とジョーディ様の顔面にクリーンヒット。


「ブボロ!?!?」

「ボエバフ!?!?」


「ええええええええええええぇぇぇぇ!?!?!?」


 感動の再会は、一瞬で怒りに変わった。


「…殿方が淑女のお部屋に無断で…。しかも扉を壊して入ってくるなんて、いささか無粋ではありませんか…?」


 ゴゴゴゴゴゴゴ!!

 リンジーは笑顔だが、誰の目にも明らかに怒っていた。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


と思ったら


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面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします。

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