547.ダークエルフの最後
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
そして、こちらはタルタロスに挑む冒険者たち。
「少しは楽しめるかと思ったが…これでは余興にもならんな」
黒い魔力が渦巻き、タルタロスの圧倒的な力の前で、アルテナ、エリス、シルフの三人は倒れていた。
タルタロスは薄ら笑いを浮かべながら、ゆっくりと歩みを進める。
「くっ…! この魔力…まるで災害そのものと戦っているようです…!」
シルフが歯を食いしばる。
タルタロスが指を軽く弾くと、黒い雷のような魔力の塊が奔り、アルテナたちを襲った。
「ぎゃっ…!」
「くっ…!」
三人はタルタロスの魔力に直撃し、地面に叩きつけられる。息をするのも苦しいほどの衝撃だった。
「【魔力を放出しただけ】でこれか。つまらんな」
なんのスキルでもない、タルタロスにとってはただ魔力を放出しただけだった。
アルテナたちとの力の差が大きすぎると感じたエリシアが、彼女たちを助けようとその場に立ち上がった。
「…やめて…もうやめて…!」
エリシアの瞳には、決意の光が宿っていた。
「…お前たちは、私のせいで…ここまで傷ついた…」
エリシアは震える身体でアルテナたちを見る。
呪術と魔法を組み合わせた新技法【魔術】を打ち破った彼女たちは、今ではボロ雑巾のように地面に倒れ込んでいた。
「もういい…タルタロス…今からそっちへ行くから、こいつらに手を出すな!」
エリシアはゆっくりとタルタロスへ向かう。
「そうだ。それでいい」
「…行かないで…エリシア…!」
アルテナが苦しげに叫ぶが、エリシアは歩みを止めず微笑んだ。
「ありがとう…でも、私は…このまま黙って死ぬつもりはない」
タルタロスに接近した次の瞬間――エリシアの体が黒い光に包まれた。
「ん? 何をする気だ…!?」
「これが私の最後の力…魔術を暴走させて自爆する!! 道連れだ! タルタロス!!!」
エリシアの身体が黒い炎で燃え上がり、凄まじい魔力と呪力が周囲を包み込む。
「やめなさい!! エリシア!!!」
「…アルテナ…私を友と呼んでくれてありがとう…」
ドゴオオオオオオオオオオオオン!!!!
炸裂する黒い爆発が辺り一帯を呑み込んだ。
「エリシアァァァァァッ!!!」
アルテナの絶叫が響く中、空間が歪み、大地が裂け、光の奔流が全てを押し流す――。
──そして。
爆発の黒い光が消えたとき、そこには巨大なクレーターが残っていた。あらゆるものが吹き飛び、辺りは焼け焦げている。
「エリシア…エリシアァァァァァッ!!!」
アルテナは悲痛にエリシアを呼ぶが、彼女は木っ端微塵となり、死体すら残っていない。すでに彼女の魂は燃え尽き、存在すら消え去ったのだ。
しかも。
「…なるほど、なかなか美しい花火だったぞ」
その中心に、タルタロスは立っていた。無傷のまま。
「しかし残念だ…ダークエルフの手土産ならラルスと兄者が喜んだであろうに…」
冷たく笑うタルタロス。
そして、残された冒険者たちは、ただ絶望に沈むしかなかった――。
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