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520.最強のエルフ族VSダークエルフ(7)

追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!

 黒い残滓がゆらゆらと揺れる中、エリシアは目を細めた。


「いくら闇属性とはいえ魔術を魔法で防ぐことは、とてつもない技量が必要だ…さすが…エルフ最強の魔導士…魔術では対抗できないか…」


 その声には、驚嘆とわずかな苛立ちが混ざっていた。

 本来、魔法では魔術を防ぐことは不可能に近い。

 理論上は属性の相殺で対応できるとされているが、魔法と魔術は異なる系統の力。まるで違う形のパズルのピースを無理やりはめるようなもので、実戦で成り立つことはまずない。


 だが、アルテナはその不可能をやってのけた。

 しかも【初見】で、闇魔術の構造を瞬時に分析し、光魔法の出力と波長を微細に調整して、魔術に干渉させたのだ。

 常識では考えられない精密さだった。


「お前の分析の速さには感服した…が…それだけでは相殺したとはいえないな!」


 エリシアの言葉と同時に、辺りの木々が音を立てて枯れ始めた。

 さっきまで青々と葉を茂らせていた森が、急速に灰色へと変わっていく。

 風に舞った葉が、粉のように崩れ落ちた。


「相殺は…したはずですが…」


 アルテナが小さく呟く。確かに、彼女は闇の呪いを打ち消した手応えを感じていた。

 それなのに、目の前の景色が明らかに死に染まっていく。


「相殺したのはあくまでもお前の周囲だけだ! お前の魔法の効果の外は魔術【デスペナルティ】による生命の吸収が始まっている!」


 エリシアの声が森全体に響き渡る。

 アルテナは息を呑んだ。

 目を凝らすと、闇は塊だけではなく、地面の下、森の奥深くにまで染み込んでいる。

 上空から見れば、黒い波紋が何kmにも広がっていくようだった。


「そして今、お前の周りの木々や大地にも新たにデバフが侵食していったということだ。お前自身には届かないだろうがな」


 足元の草が音もなく枯れ落ち、乾いた音を立てて崩れる。

 魔術【デスペナルティ】の恐ろしさは、その持続性にある。

 発動した闇は消えず、時間とともに広がり、命を蝕む。

 その侵食が、再びアルテナの結界の外縁へと到達していた。


「この魔術の真骨頂は、生命を奪うだけではない。【奪った力を私が吸収する】ことができるのだ!!」


 ゴゴゴゴゴ!!


 空気が震えた。地面に亀裂が走り、エリシアの身体を包む闇が渦を巻く。

 次の瞬間、彼女の魔力が急激に膨張し、空間が歪むほどの圧が放たれた。


「…これは…一筋ではいきませんね…」


 アルテナは息を整える。だが、その表情にはわずかな焦りが浮かんでいた。

 闇の密度が違う――ただの魔力ではない。奪った命の残滓が混ざっている。


「…魔術を放ったところでまた分析されて対策を立てられるだろうな。ならばこの魔力を【全て身体能力の向上】に当てよう」


 カッ!!


 闇が爆ぜるように光を飲み込み、エリシアの体を包み込む。

 ズォォォォォォ!!!


 彼女の全身にまとわりついた闇のオーラが凝固し、黒い鎧へと姿を変える。

 まるで影そのものを実体化させたような禍々しい装甲だった。


 ヒュー…ズドン!!


 空中にいたエリシアは、地上に降りる。

 着地の衝撃で地面が陥没し、砂塵が舞い上がった。


 ドンッ!!!


 次の瞬間、黒い残光を引き裂くように、エリシアが突進した。

 その速度は視認を許さず、残像だけが森を切り裂いていく。


「なっ!?」


 アルテナは咄嗟に防御の詠唱を展開する。

「面白かった!」


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