475.エルフ族の秘密
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
【世界樹】
地下通路を進む一行の頭上に、クラルテの声が静かに響き渡る。
薄暗い石の壁には微かな苔の緑が広がり、所々に文字の彫刻が光を受けて浮かび上がっている。
空気はひんやりと重く、足音が階段の石に反響して神秘的な静けさを作り出していた。
【世界樹】とは、精霊界と冥界の間に存在する、世界の全ての理を具現化した巨大な大樹である。
全ての理とは、自然界の事象、人々の歴史、生物の記憶に当たる。
死後の魂は冥界の奥深くで分解され、世界樹の一部となる。
そして時が流れると、新たな生命として生まれ変わるのだ。
世界樹は、世界の流れを循環させる役割を担っている。
その世界樹を操作することによって、世界そのものを改変できる。
例えば、
エルフ族だけの世界に作り替える。
魔法や魔物のいない世界にする。
自分だけ過去をやり直す。
今までの歴史を無にする。
全ての生物を消す。
クラルテの言葉は地下通路の冷たい空気に反響し、壁の影が揺れるたびに一層の重みを帯びた。
一同の顔が青ざめ、息を呑む音だけが静寂を破る。
「そ、そんな重要なことアタシたちに言って大丈夫アルか!?」
テンテンは眉を寄せ、緊張で体をこわばらせる。
同じエルフ族でさえ知らない秘密を、自分たちに明かしてよいのかと疑問に思ったのだ。
「秘匿ですが安心してください。世界樹を改変できるのは、精霊と深い繋がりのあるエルフ族にしかできないのです」
クラルテは静かに言う。
精霊と契約しているだけでは世界樹に手を触れることはできない。
リーズは少し安堵の息を吐いた。
「…歴史上一切公になっていませんが、エルフ族は【精霊と血が繋がっている一族】なのです」
「え!?」
その告白に、一同は目を見開く。
アルテナも知らなかった秘密に、息が止まる。
「え…?…私も…精霊の血を…?」
アルテナは自分自身が精霊の血を引いていることに驚愕する。
地下通路の奥で、神秘的な空間が一層の威圧感を帯びる。
「はい…ですがあなたも世界樹を改変させることはできません」
アルテナには血が繋がっていても、世界樹を動かすことはできないという。
「アルテナさんには、お子さんがいらっいますね? 他種族と契りを交わすと純粋なエルフ族でなくなり、世界樹を改変することができないのです」
「ちょ! なんでそんなことまで知ってるんですか!?」
アルテナは突然のプライベート暴露に赤面し、声を荒げた。
地下通路に響く声が、重厚な石壁に跳ね返る。
「おっと…デリカシーがありませんでしたね…失礼しました」
クラルテは事情を語らず謝罪だけする。
その情報源は、言うまでもなくグリムリペアからのものだった。
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