表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/620

44.新技再び

第2部完結まで連続投稿します!

追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!

 「俺は…守りたいんです! 命だけじゃない! できるだけ大切なものを! 俺は冒険者だから!」


 空気は冷たく、土と焦げた木の匂いが鼻を刺す。


 村や建物はまた作ればいい。それも選択肢。しかし、一生懸命に作り上げたものを、怪物に壊されるのはあまりに悲しすぎる。


 「できるだけ…足掻いていたい! 後悔したくないから!」


 俺は胸の奥から絞り出すように、エリスお嬢様とテンちゃんへ想いを告げた。


 「ウェル…」


 その言葉に、テンちゃんは返す声を失った。そしてエリスお嬢様が話しかける。


 「…自分の命を犠牲にするお人好しが一番の根底じゃろう? 全く、しょうがないやつなのじゃ」


 まぁ、そうなんですよねぇ。わかっていても足は止まらない。


 「ウェルは顔の割に頑固アルな。しょうがないから付き合ってやるアル!」


 顔の割にって…。


 「シャアアアアアアアア!!!!!!!!」


 大地が揺れ、巨体が森を割って現れる。ヒュドラだ。無数の蛇の首を持つその怪物が、血の臭いと共にこちらへ迫ってくる。地面に残る爪痕と焦げた草木が、その凶暴さを雄弁に語っていた。


 このままヒュドラが前進すれば村は飲み込まれる。


 「なんとか食い止めなければ!」


 しかし、どうする?胸の鼓動がうるさいほど鳴り響く。


 「アタシが時間を稼ぐネ!」


 「テンちゃん! 無理をしては…」


 彼女の胸は荒く上下し、血に濡れた衣が痛々しい。アバラが折れた重症だというのに。


 「ウェルの想いは受け取ったアル…時間稼ぎくらいわけないネ!」


 俺の気持ちを受け取ったからこそ、彼女は無茶を選ぶ。あぁ、そうか…。俺も同じだ。お互いさまなのかもしれない。


 「光魔法【ヒール】!」


 エリスお嬢様が、光の魔法を放つ。柔らかな光がテンちゃんを包み、ひび割れた骨に一瞬の安らぎを与える。


 「揃いも揃って無鉄砲なやつらじゃ。無詠唱じゃがこれで少しは動けるようになるじゃろう」


 光が消えたあとも傷は残る。それでも立ち上がれるだけの力を取り戻す。


 「エリス! 感謝するアル!」


 テンちゃんは地を蹴り、ヒュドラの進路に立ちはだかった。


 「シャアアアアアアアア!!!!」


 迫る巨体。足元の土がえぐれ、空気が震える。


 「来いアル!!!!」


 ズガーン!!!! ズガーン!!!!


 大地が割れ、岩が砕け飛ぶ。テンちゃんはその中で舞うようにかわし、拳を打ち込んで注意を引きつけていた。


 「本当に硬いウロコアル…」


 刃をも通さぬ鱗に、拳が沈むたび骨まで響く。だが彼女は叫んだ。


 「でもあきらめないアル! 仲間があきらめないならアタシもあきらめないアル!!」


 幾度も繰り返される八極気功拳。拳の衝撃で空気が爆ぜるたび、ヒュドラの首がしなり、唸り声を上げる。


 「今のうちにウェルを回復させるのじゃ!」


 エリスお嬢様の詠唱が響き、白い光が俺の体を癒す。冷たい体に再び熱が戻り、痺れた指先が力を取り戻す。


 「はぁ…はぁ…まだ…まだアル!!」


 テンちゃんの息は荒い。傷口から血が滲み、彼女の足元を赤く染めていく。それでも拳を止めない。


 その時――。


 「うおおおおぉぉぉおおおお!!!!」


 大地を揺らす雄叫び。背後から駆け寄る人影。


 「なにアル!?」


 テンちゃんが振り返ると、そこには村人たちがいた。顔は決意に満ち、手には古びた剣や農具を握りしめている。


 「オラたつも戦うど!」

 「この村はオラたつの村だ!」

 「好き勝手にさせねぇべ!」


 震える声の奥にあるのは、恐怖ではなく覚悟だった。


 「田舎モンだげど団結力は負けねぇだ!」

 「隙あらば攻撃するだ!!」


 村人たちが散開し、鎌や斧でヒュドラに挑む。連携はぎこちないが必死だ。


 「アタシに任せるアル! 取っておきをお見舞いしてなるネ!!」


 テンちゃんが残る【気】を練り上げる。空気が震え、彼女の手に蒼白い光が集まっていく。


 「八極気功拳!!! ……【超発勁】!!!!!!!!」


ズガーン!!!!


 大地を割るほどの衝撃が走り、ヒュドラの一つの頭が陥没した。土煙が上がり、空気が爆ぜる。


 「…あとは…任せるアル…」


 力尽きたテンちゃんは地面に倒れ込んだ。


 「シャアアアアアアアア!!!!!!!!」


 ヒュドラの影が覆いかぶさる。鋭い牙が迫り――。


 「待て!!!! ヒュドラ!!!!」


 声が空気を裂いた。


 犬耳に尻尾、痩せた身体に鋭い瞳――ワンコ姿の少年。ウェル・ベルクが立っていた。


 その頃、エリスは地面に膝をつき、血の気を失った顔で笑っていた。


 「ぜぇ、ぜぇ、何とかしてやったのじゃ…妾がここまでしてやったのじゃ。勝ってくれなければ地獄でお仕置してやるのじゃ!」


 ここまで繋いでくれたみんなの想いを無駄にできるはずがない。


 「ラーニング発動!!!!」


 俺は左手に【気】を、右手に【魔力】を集める。手のひらで光と力が渦巻き、轟音を立てる。


 「【気】と【魔】の融合!!!!」


 指先から火花が散り、空気が震えた。武器を通さず、掌に直接凝縮させる。


 「凄い力を感じる!」


 圧倒的な力のうねりが身体を突き抜ける。これなら――ヒュドラを倒せる!


 だが。


 「もって10秒といったところか…」


 決着をつける猶予は、わずか10秒。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


と思ったら


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ