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438.宿敵の最後

追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!

 そして、現在。


「アリストクラキーで悪魔を呼び出し世界を滅ぼす。その後、神が降臨して世界をリセットするそうだ」


 耳に残る言葉の響きに、俺の頭の中がざわめく。

 悪魔を呼んでも神がやってくるのか――俺が知っている伝承とは少し違っていた。


「ウォーカーは人生をやり直したかったから、その願いを叶えてやりたかった…」


 ウォーカーとは面識がない。だが、スラムでどれだけ過酷な日々を過ごしたのか、想像はできる。


「…それでも…誰かの命を奪っていい理由にはならない…!」


 俺は拳を握りしめ、冷たい風を受けながら心を奮い立たせる。

 自分が不幸だからといって、他人を不幸にしていいはずはない。


「世界がリセットされたら死んだ人間も生き返る…だからあいつは罪悪感などなかったみたいだな」


「な…!?…そんなことが…可能なのか?」


 正直、アリストクラキーも悪魔も、世界のリセットも、ほとんど知らない。

 神にだって、さっき初めて会ったばかりだ。

 あいつが本当に世界をリセットできるのか――?


「くっくっく…言い伝えだからホントのところ俺も知らん…だがあいつは信じていた。それこそがすがる唯一の希望だったのだろう」


 どんどん身体が崩れ、首だけになったシュラムの姿が視界に映る。


「最後に…俺を倒した褒美に教えてやる! 悪魔が現れる場所も、7人の令嬢のアリストクラキーを埋め込む場所も【世界樹】だ!」


「世界樹!? …ってなんだ!?」


 初めて聞く単語に、思わず息を飲む。


「知らねぇのも無理はねぇ…そいつは【大教会デウス】にあるらしい…あとは自分で調べろ!」


 また聞き慣れない言葉が出てきた。大教会デウス――一体どんな場所なのか。


「さらばだ…我が宿敵ウェル・ベルク! 地獄があったらまた会おうぞ!!」


 パラパラ…。


 最後の言葉とともに、シュラムの身体は灰となって宙に散った。

 風がその灰を遠くまで運び、山間に小さな渦を作る。


「…地獄か…俺は行かないから会うこともないよ…」


 極悪人だったが、最後まで信念を貫いた潔さがあった。

 シュラムとは色々あったが、あいつもまた、必死に考えていたのだろう。

 少しだが、あいつのことを知れた気がした。


 そして、忘れてはならない情報。


 アリストクラキーに世界樹、大教会デウス――。

 スタンピードで世界を滅ぼせば、神が降りるとジョーカーから聞いた。

 だが、世界を滅ぼすほどの災害を起こせば、本当に何でもいいのだろうか。

 わからないことが多すぎる。


 今度、神に会ったら尋ねてみるか。

 その前に、大教会デウスという場所に足を運んでみるのも手だろう。


「…んあ…!?」


 考え事をしていたその瞬間、体から力が抜けた。

 ヴァンパイアの魔力が切れたようだ。


 ヒューン――。


 風魔法【エアウォーク】の力が途切れ、宙に浮かんだまま体が沈み始める。

 今日で三度目の落下だ。


 ビュン!


「ウェル先生!!」

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


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