40.本物の危険度Sランク
第2部完結まで連続投稿します!
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
「ほーっほっほっほ! さぁ! あきらめてヒュドラのエサになりさい!」
森を裂くように高笑いが響いた。黒いローブをまとったアザトースが、うねる八つ首のヒュドラの頭のひとつに立ち、狂気を帯びた眼光をこちらに投げかける。
「調子に乗りおって…!」
肩の上で小さな拳を握りしめ、エリスお嬢様が苛立ちを隠さず吐き捨てる。
さて、俺もそろそろ試してみるか――あの新技を。
一週間前。
夜更けの宿舎の庭で、俺はひとり剣を構えていた。月明かりに照らされる大地の上で、何度も深呼吸を繰り返しながら【気】と【魔力】の同時発動を試みる。
「うーん…むずい…」
額から汗が滴り落ちる。集中すればするほど、気の流れが暴れ、魔力の制御が乱れる。
「【気】を集中すると魔力が疎かになる。魔力を集中すると【気】が分散する…。同じラーニングベースの発動なのに、これほど難しいとは…」
剣を握る手が震える。前にも剣術と魔法の同時発動でつまずいたことがあったな。懐かしい失敗が頭をよぎる。
「でも、魔力と【気】が一緒になったらどうなるんだろう?」
好奇心に突き動かされ、結局エリスお嬢様とテンちゃんに相談した。仕事を終えたばかりの二人は湯気の立つ茶を手に、俺の話に耳を傾けてくれる。
「魔力と【気】は基本的に相反するものと聞いているアル」
「妾もそう思うのじゃ」
やはり二人も同じ見解だ。
「じゃから魔力と【気】は別々で使うのが良いじゃろう。両方扱えるなんて聞いたこともない。恐らくウェルは超希少な存在じゃ」
確かに文化的にも両立はありえないらしい。テンちゃん曰く、【気】を使う者は魔力が小さく、魔法使いは気が小さいのだと。
「もしかしたら【気】と【魔力】を融合したら爆発するかもしれないアル!」
「それは面白そうじゃな!」
いや、面白がるな!!!!!!!!
「まぁ、冗談はさておき。ウェルは体術や剣術に【気】を合成させる辺りから慣れていくのが良いじゃろう」
やはりエリスお嬢様の助言は的確だった。
そして、今。
「ラーニング2つ同時発動! 【発勁】【剛剣】 合成!【剛気発剣】!!」
俺は剣に力を込め、ヒュドラの首へと叩きつけた。
ズガーン!!!!
「キシャアアアアアアアア!?!?」
巨体の首が弾き飛び、大地に激突して轟音を響かせる。地面が揺れ、木々がざわめいた。
「くそ! これでも斬れないのか!」
確かに吹き飛ばせはした。だが硬い鱗は斬り裂けず、わずかな傷しか残せていない。
「な、なんですと!?」
アザトースが顔色を変えるが、ヒュドラの別の首が俺を呑み込もうと迫ってくる。
「シャアアアアアア!!!」
「まだまだいくぞ!!!」
俺は剣を収め、次の技へと切り替えた。
「ラーニング2つ同時発動! 【発勁】【ドラゴンクロー】 合成!【竜爪発勁】!!」
ズガーン!!!!
「キシャアアアアアアアア!?!?」
巨蛇の頭が地面に叩きつけられ、鱗に裂け目が走る。
「よし! でも浅い!」
想像以上に硬い…。オークロードより格段に強い。
「す、すごいアル…」
テンちゃんが息を呑む。しかしすぐに拳を握り、前へ踏み込んだ。
「アタシも負けてられないアル!」
彼女はヒュドラの胴体へと疾走する。
「八極気功拳!【鉄山靠】!!!!」
地を砕くほどの踏み込みから背を押し当て、巨体へ体当たり。
ズドーン!!!!
「シャアアアアアアアア!?!?」
ヒュドラがよろめき、バランスを崩す。
「今だ!!」
俺はがら空きとなった腹へ突撃した。
「ラーニング3つ同時発動! 【発勁】【ドラゴンクロー】【獣豪腕】! 名付けて――【獣勁竜爪】!!!!」
スガーン!!!!!!!!!!!!
「うおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」
「シャアアアアアアアア!!!!」
力と力のぶつかり合い。俺は渾身の力で押し込み、ヒュドラを吹き飛ばした。
ズドーン!!!!
大地が揺れ、木々が次々と薙ぎ倒される。
「よし…倒した!」
そう思った瞬間。
「シャアアアアアアア!!!!」
ゴゴゴゴゴゴ!!!!
「な!?」
ヒュドラが立ち上がった。無傷のように。
「ほーっほっほっほ! 素晴らしいほどの攻撃の数々! さすがの私も焦りましたよ!」
アザトースが高笑いする。その声は不気味に森に響き渡った。
「だがしかし、あなた方はA級かB級の冒険者でしょう? 本物の危険度Sランクの魔物には勝てませんよ!」
「本物の危険度Sランク!? なんだそれ!?」
「ほーっほっほっほ! あなたはグリーンドラゴンやオークロードを倒したそうですね。しかし、闇魔法【マナメイク】で魔素を固めて作った魔物は劣化版! Sランクには届かないのです!」
嘘だろ…。あれで劣化版だと!? オークロードでさえ、皆でやっと倒せたというのに――。
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