04.悪役令嬢から受け継がれるスキル
第一部完結まで連続投稿します!
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
炎に包まれた屋敷を駆け抜ける。
俺を救ってくれたエリスお嬢様は、無事なのか――?!
いやだ。
二人とも!! 死なないでくれ!!!
こんなにも人を想ったのは初めてなんだ!!
こんなにも人に救われたのは初めてなんだ!!
だから――
だから!!!
この世に神様がいるのなら――
どうか二人を――
エリスお嬢様を――
助けてくれ!!
俺の命の恩人なんだ!!!!!!
俺は必死にエリスお嬢様の部屋の前までたどり着き、ドアを力任せにこじ開けた。
「エリスお嬢様!!!!」
しかし、部屋は既に炎に包まれていた。
辺りを必死に目で追うと、横たわるお嬢様の姿を見つけた。
「エリスお嬢様!!!!!!」
俺は駆け寄り、彼女の身体を抱き起こす。
しかし――
「そんな…そんな…」
胸部から刃物で刺されたように血を流し、口からも血を吐く――生きているとは到底思えない姿だった。
「うわああああああああああああああぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」
燃え盛る炎。
屋敷は全体が火の海となり、誰も助けに来ない。
焼け死ぬには十分すぎる熱さだ。
その炎の中で、俺はエリスお嬢様を抱きしめながら泣き叫んだ。
「なんで…なんで…なんでこんなことになったんだあああああああああああ!!!!!!!!!」
救えなかった。
何もできなかった。
俺の命の恩人は――もういない。
その時、エリスお嬢様の身体が光を放った。
「な、なんだ!?」
光が消えると、彼女は目を開け――
「…いちいち騒ぐでない。覗きスケベ男…」
「エリスお嬢様!!!」
よかった。
死んだかと思った。
もう二度と会えないのかと思った。
「妾はもう長くはない…だから最後に…お主に託す」
え? 長くない?
「それは…いったい…」
俺は絶望と奇跡の間を行き来し、頭が混乱していた。
「光魔法『リメイクライフ』。
死ぬ前にこの魔法をかけることで、死んだ者を数分だけ生き返らせる魔法じゃ」
「す、数分!? じゃあエリスお嬢様は…」
一度死んだのか。
やはり俺は守れなかったのか。
「そんな…い、いやだ!!」
ビシッ!
「わめくでないわ! 男じゃろ!」
エリスお嬢様に頭をチョップされた。
火の手は見る見る広がり、俺の逃げ場も失われていく。
俺も死ぬのか――。
だが、これで死ぬのも悪くない。
異世界転生して初めて感じた幸せな気持ちだ。
大好きなエリスお嬢様と一緒に死ぬのも悪くない――。
「さて、なぜ妾がお主を雇ったか…。
その辺りから説明せねばな」
初めて会った時からの思い出話か。
最後は楽しく笑って語ろう――。
「お主が異世界転生してきた日本人だと分かったからじゃ」
そうか、俺が異世界転生者だと分かったから――。
ん?
ええええええええええええええええええええええ!?!?!?
まだ死ねないと思えるほど驚いた。
これは続きを聞くまで死ねない!!!
「鎖ノ国から来たのかと問うたとき、鎖ノ国を知らぬと答えた。さらに…鎖ノ国は竜族のみの国で、身体能力は人族と雲泥の差。まぁ、お主のはずではないと思ったのじゃ」
なるほど。
「そして妾の本名は雛森雫。9年前、異世界転生してきた日本人じゃ」
……。
ええええええええええええええええええええええ!?!?!?
衝撃で心の中が海老反りになった。
9年前、エリスの両親が亡くなった1年後、馬車の車輪が外れ崖から転落。
奇跡的に生き残ったが、エリス・グランベルは死んでしまった。
変わりに雛森雫の魂が入り、転生したエリス・グランベルとなった――。
その固有魔法【ラーニング】を駆使し、全属性魔法を扱い、剣技も習得していたという。
【神様】。
いや、どこの誰だか知らないが――。
俺が異世界転生したとき、なぜ何も授けてくれなかった。
不公平だ…。
うぅ…。
そして9年間、頭脳とセンスで全てを習得したという。
チートスキルだ。
「まぁ、お主を拾ったのは同じ日本人のよしみじゃ。
そこまで深い理由はないのう。
じゃが、お主と共に過ごせた時間は楽しかったぞ。
妾は日本でもこの世界でも愛を知らずに育った。
ココもいてくれたが…甘えたことはない」
なるほど、幼い頃から命を狙われ、親の愛も受けられなかったのか――。
俺と同じだ。
結局、異世界転生しても人生は変わらなかった。
「お主の気さくで優しく、少しスケベなところ。嫌いではなかったぞ」
「……はは…スケベは余計ですよ…エリスお嬢様…」
ほほに雫が伝う。
俺は半笑いで彼女の話を聞く。
「そろそろ時間じゃ…」
逃げ場のない炎。
熱さで意識が朦朧としてくる。
これで終わってしまうのか――。
でも、良い人生だった。
そう言える最後だ。
「妾の固有魔法『ラーニング』をお主に譲渡する」
そうか、時間がない――エリスお嬢様の固有魔法を俺に託すのか。
「エリスお嬢様の固有魔法を俺に譲渡する?」
「そうじゃ…妾の『ラーニング』で習得した魔法をお主に譲渡する。妾はもうダメじゃが…お主は助けられる。妾の魔法を使ってここを打開し、ココを救うのじゃ」
可能なのか――。
しかし、俺にできるのか?
エリスお嬢様は――助からないのか?
「妾を想う気持ちは嬉しいぞ…。じゃが、亡き者より生きている者を救え。命令じゃ」
合理的だ。
「いつまでもメソメソするでない!
男であろう!」
怒られた。
しかし、サラリーマン時代に上司に怒られた時とは違う。
厳しく、優しく、温かい。
…こんな小さな子に怒られて、俺は情けない。
覚悟を決めよう。
戦う覚悟を!
生きる覚悟を!
「エリスお嬢様…。お願い致します。
そして…さようなら…」
「頼んだぞ誠一…固有魔法【メタフォラ】」
エリスお嬢様は最後の力を振り絞るように、俺に魔法を託した。
【メタフォラ】――自身の魔法を一つだけ譲渡する固有魔法。
エリスお嬢様は固有魔法『ラーニング』を俺に受け継がせた。
その瞬間、俺の身体に焼けるような痛みが走る。
「うおおおおぉ!?!?」
【ラーニング】を譲渡すると追加効果があり、受けた魔法やスキルも全て扱えるようになる。
身体が暴走し、頭も割れるように痛い。
そして――わかる。
【ラーニング】が全て教えてくれる。
「ココさん…今行きます」
一方その頃、黒装束の暗殺者たちと戦うココさん。
「はぁ…はぁ…」
限界で立つのもやっとだ。
剣も折れ、絶体絶命。
その時――
「氷魔法『コールドランス』!!』
四本の大きな氷の槍が暗殺者たちを貫く。
「は、初めて魔法使えた…」
異世界転生して2年半。
初めて魔法を使った瞬間だった。
「セーイチ!?」
ココさんは驚きと安堵の入り混じった表情で俺を見る。
「はい、ココさん! 聞きたいことは山ほどあると思いますが、まずはこいつらを片付けましょう」
暗殺者の一人が毒矢を放つ。
グサッ
「くっ!」
俺は反射的に左手で防ぎ、毒は耐性で効かない。
「来い!! このクソ野郎ども!!」
戦闘開始――
固有魔法『サーチ』。
半径100mの生物を感知し、敵の位置と攻撃経路を把握する魔法。
「見える! 見えてるぞ!」
毒ダガーもすべて避け、風魔法『ウィンドウジャベリン』、毒魔法『ヴェノム』で敵を翻弄。
「うおおおおぉ!!!!!」
瞬く間に倒す。
初めての殺し合い。
初めての魔法。
初めて人を守り抜いた――。
全ての暗殺者を倒した後、深い疲労に襲われ、俺は倒れた。
やがて雨が降り、屋敷の炎は全て消える。
その雨は、深い悲しみを表すように――
いつまでも
いつまでも
降り続けるのであった。
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