382.初めての携帯食
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
ここはダンジョン299階。
空気は重く湿り、壁には粘ついた水滴が流れ落ちている。
ウェルとエリスを探しながら、サヤ、テンテン、リーズ、ココの四人は岩肌むき出しの洞窟を慎重に進んでいた。
危険度Sランクの魔物との戦闘を幾度も繰り返したせいで、全員の息は荒く、服は土と血で汚れていた。
「はぁ…はぁ…随分と降りてきたアルね…」
「ウェルたちは見つかりませんでしたわね…」
「大丈夫でござる! あの二人ならこのくらいの余裕で生き抜くでござる!」
「今は先を進みましょう」
テンテン、リーズ、サヤ、ココがそれぞれ短く言葉を交わす。
疲労と不安を押し殺しながらも、彼女たちはただひたすらに仲間の痕跡を追った。
「それにしても【気】の消耗を回復させる薬が欲しいでござるなぁ…このままではいずれ力尽きてしまうでござる…」
「ほんとアル! 今すぐ誰か作ってほしいアル!」
「霊力を回復させるポーションもほしいですわ!」
サヤとテンテンは魔力ではなく【気】を、リーズは【霊力】を使う。
しかし、体力や魔力を回復させるポーションはあっても、気や霊力を補う薬は存在しない。
彼女たちの肩は重く落ち、息を整える音が洞窟にこだまする。
やがて、ココが前方にひらけた空洞を見つけた。
岩盤の裂け目から青白い光が差し込み、薄く霧が漂っている。
「ここで休みましょう。セーフティポイントがあればよかったのですが見つかりませんでしたからね。交代で休み各々回復に専念するほうがいいでしょう」
ココの冷静な提案に、全員が黙ってうなずいた。
疲れ切った身体が岩壁に寄りかかり、硬い地面に座り込む。
「これは冒険者が日々食べている携帯食です。これで飢えをしのぎながら一晩過ごしましょう」
【気】や霊力を回復するには、睡眠が最も効率的。
そのためには、水分と最低限の栄養が欠かせない。
「そういえばこの携帯食を食べるのは初めてアルな」
「どんな味なのか楽しみになってきましたわ!」
ウェルのアイテムボックスには常に食料と水が備蓄されており、彼女たちはそれに頼るのが常だった。
だが今はウェル不在。初めて自分たちだけの食事となる。
テンテンとリーズはわずかに胸を弾ませながら包みを開けた。
パクッ――ザクザク。
「…思ってたのと違うアル」
「…美味しくないですわ…」
「うむ。美味くも不味くもないでござるな」
「本来、遠征して食料にありつけない時の冒険者の食事はこんなものです。あなたがたはウェルがいたから特殊だったのですよ?」
ココが淡々と告げる声が、静まり返った空洞に響く。
それを聞いた三人は、ふと手を止め、噛みしめるように携帯食を口に運んだ。
乾いたパンのような食感の奥に、ウェルの笑顔がよぎる。
彼がいれば、美味しい食事にありつけただろうと。
――ウェル、無事でいて。
ダンジョン299階。静寂の中、彼女たちの眠りを邪魔するように、どこか遠くでうなり声が響いていた。
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