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369.固有魔法は進化する

追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!

「ラプラスの一員だと!? しかもリチャードを逃がしたのはお前か!?」


 衝撃の事実が、稲妻のように二人の胸を貫いた。

 ガルの拳が震える。アルテナの唇がかすかに開いたまま固まる。


 ジョーカーの正体は、まさかのラプラスの一員。

 牢屋からリチャードを連れ出し、アモスデウスとブラッドに匿わせていた張本人——。

 その事実を知った瞬間、部屋の空気が一変した。


「ジョーカー…許さない…!」


 アルテナは怒りで頬を紅潮させ、ロッドを強く握りしめた。

 白い指が食い込み、関節が白く浮かび上がる。

 その眼には恐怖ではなく、怒りと裏切りへの絶望が燃えていた。


「こーわーいーー!!! でも魔法は使わないほうがいいよ~? 僕の能力わかるでしょう~?」


 おちょくるような口調。

 ジョーカーの声が、低く湿った笑いを含みながら壁に反響した。


「くっ!」


 アルテナは悔しげに唇を噛む。

 ジョーカーの固有魔法【カード】の恐ろしさを知っている。

 あらゆる魔法を収納し、放つことができる。

 つまり、彼に向かって強力な魔法を撃てば撃つほど——自らに返ってくる。


「アルテナ! あんたはとにかくこの部屋から出ろ!! そして、リョウマの所へ!」


「しかし! 1人では!!」


「へ! 心配すんな! ジョーカーの冒険者ランクはS+1(エスプラスワン)。俺の冒険者ランクはS+2(エスプラスツー)だ! 負けるどおりはねぇ!」


 ガルの声には、痛みと決意が入り混じっていた。


「…わかりました…ここは任せます!」


 アルテナは振り返らず、背後の扉へ駆け出した。


「あれあれ~? 逃げられちゃった~?」


「…わざと逃がしたんじゃないのか? それとも俺を警戒して何も出来なかったのか?」


 ガルの額の血管が浮き上がる。

 憤怒が喉の奥から噴き出しそうだった。


「同じ釜の飯を食った仲間だが…こうなってしまったらもう容赦はしねぇ!! 覚悟しろ!!!」


 ガルは両足を開き、重心を落とす。

 冷たい床が足裏に伝わり、息を吐くたびに白い蒸気が上がる。


「ん~? 誤解がいろいろあるね~?」


 ジョーカーは首を傾げ、笑いながらも一歩も退かない。


「この期に及んで命声か!?」


「いやいやいやとんでもない~! まず訂正が一つ。ラプラスの悪魔に仕える僕が君より格下なわけないじゃな~い!」


「なんだと!?」


 その仕草は芝居がかった余裕のようでいて、どこか本気の異常さを孕んでいた。


「では聞こう…知らないのも無理はないが…なぜ固有魔法保持者は他の魔法が使えないと思う~?」


 ジョーカーの声が、低く響いた。

 ガルは一瞬たじろぐ。

 固有魔法保持者は基本の十属性魔法を使えない——それは常識だ。

 彼も、ウェルも、ジョーカー自身もそうだった。

 例外は、あの天才魔族シンティアのみ。


 彼だけは、固有魔法と超級魔法を同時に使ってみせた。


「固有魔法は鍛錬によって進化するのは知らないか~い? これを【セカンドユニーク】という!! そして、セカンドユニークに進化した固有魔法の先にあるのが呪術なんだよ~!!」


「セカンドユニーク!? なんだそれは!?」


 ガルの驚愕に、ジョーカーの唇が大きく歪む。

 狂気と誇りが混じった笑み。


「ではお見せしよう! セカンドユニーク【クリエイティブカード】」

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


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