368.ジョーカーの意味
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
いっぽうこちらは、転送魔法陣によって別の場所へ飛ばされたアルテナ、ガル、ジョーカーの三人だった。
「くそ! 何だこの部屋は!? 早く【マーク】で移動しないと!?」
「お願いします! 早くリョウマの所へ!!」
彼らが転送された先は、壁も天井も床もすべてアダマンタイトで囲まれた閉鎖空間。
光を吸い込むような灰銀色の壁が、冷たい反射光を返している。
圧迫感があり、空気は重く、息をするたび胸が締めつけられた。
部屋には分厚い鉄扉が一つだけ。
そこから出ることもできるが、【マーク】を使って転移するほうが早いと誰もが考えた。
「それじゃぁ~早く~移動しよう~!」
アルテナは焦るようにガルの肩に手を置いた。
その手は震えていた。リョウマの危機が頭をよぎり、胸がざわめく。
「よし! 行くぞ! リョウマの所へ!」
ガルが魔力を集中させる。
その瞬間——
グサッ!
ドン!
「ガル!?」
ドサッ!
突き飛ばされたアルテナは床に倒れ込んだ。冷たい金属の感触が背中を打つ。
「ガル!? 何を!? これは…!?」
ガルの背中には、【カードから出現したナイフ】が深々と突き刺さっていた。
血がアダマンタイトの床を汚し、蒸気のように薄く漂う。
「やっぱ…てめぇの仕業か!! ジョーカー!!」
「よく気づいたね~? 急所も避けて~? 残念~!」
ナイフを刺した張本人、ジョーカーはニヤつきながら一歩下がった。
リョウマと分断する転送魔法陣を発動させたのも、ガルを刺したのも、すべてジョーカーの仕業だった。
「ジョーカー!! どうして…!?」
アルテナの声は震えた。
普段の彼女なら冷静に分析できただろう。
だが、さきほど見たリョウマの苦戦が脳裏に焼きつき、感情が先走っていた。
「…転送魔法陣はもともとそこにはなかった。あったら俺やリョウマが気づいているはずだからな…となれば誰かが発動させたということになる。お前の【カード】なら転送魔法陣を収納していつでも引き出せるだろうからな!」
ガルの言葉は荒い息に混じっていた。
血が喉に絡む。それでも、仲間を守ろうとする眼差しは揺らがなかった。
ジョーカーの固有魔法【カード】。
それは魔法・物・生物を【カード】に収納し、好きなときに出し入れできるスキルだった。
「その通り~! 【モルモット】の大事な試運転の邪魔になるから強制的に退場しました~! なのでリョウマの所に戻るのは許さないよ~?」
悪びれるどころか、楽しげに全てを語るジョーカー。
その笑い声が、密閉空間に反響して耳を裂く。
ブゥン——
次の瞬間、ジョーカーはカードから黒いローブを取り出した。
それをゆっくりと身にまとい、深くフードをかぶる。
見覚えのあるそのローブ——ウェルたちが何度も見た、あのラプラスの象徴だった。
「【ジョーカー】は【不正確な行動】を意味する隠喩。そして、僕は楽園の使徒【ラプラス】の一員であり【アモスデウス】様の右腕。四肢切りのリチャードを牢屋からここへ連れ出したのも僕さ! ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!! これを着ると信仰心が蘇るねぇぇぇぇ!!!!! 全てはラプラス様のためにぃぃぃぃぃ!!!!!」
ローブを着たジョーカーの瞳が狂気に染まる。
血走った眼が天井を仰ぎ、口からは涎が垂れ、全身が痙攣するように震えていた。
その光景に、アルテナは息を呑んだ。
目の前にいるのは、もうかつての仲間ではなかった。
ラプラスの信徒——狂信者、そして裏切り者。
アダマンタイトの壁に響く笑い声は、まるでこの空間そのものを歪ませているかのようだった。
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