364.イザベラのような姿をした少女
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
グチャグチャ……。
血と肉片がぬるりと音を立てながら、黒い地面の上で蠢いていた。
それはまるで自我を持ったかのように一つに集まり、再び人の形を取り戻していく。
「く…はぁ…はぁ…」
ブラッドは再生を終えるも、その姿は見る影もなかった。
皮膚は爛れ、筋肉は裂け、血で全身が染まっている。
不完全な再生――もはや立っているのもやっとの状態だ。
「その様子だと再生できるのはあと1回か2回か…どちらにしても長くはないでござるな」
リョウマが静かに告げる。
抜刀したまま、冷たい視線をブラッドへと向けていた。
「く…くそ…」
絶対絶命のブラッド。
その時――。
コツ、コツ、と硬い靴音が、静寂を破って響く。
崩れた館の奥、揺らめく炎の向こうから何者かが歩いてきた。
「…誰でござるか…? …少女…?」
現れたのは、下半分が露出した白い仮面をつけた少女だった。
白いドレスの裾が焦げ跡を引きずり、闇に溶け込むような存在感。
その雰囲気には、どこかイザベラを思わせるものがあった。
「…お…おぉ…た…助かった…早くこいつを殺せ! 同胞よ!!」
ブラッドが歓喜の声を上げ、少女に命令を下す。
しかし――。
ズバン!!!
「……へ……!?」
ドチャッ。
次の瞬間、ブラッドの首が宙を舞い、地面に転がった。
遅れて血が噴き出し、燃える館の床を赤く染める。
その手にかけたのは、他でもない――仮面の少女。
サラサラ……。
ブラッドの身体は灰になり、風に溶けるように消えていった。
「今…何をしたでござるか…? 何も見えなかったでござる…それに同胞ということはあの少女もヴァンパイアでござるか?」
リョウマの鋭い眼光が、少女を捉える。
剣の達人として、斬撃の軌跡を見逃したことは一度もない。
だが今の一撃は――何も見えなかった。
ザッ、ザッ、と少女がリョウマに向かって歩み寄る。
焦げた床を踏みしめるたび、音が低く響いた。
バッ!
リョウマは即座に刀を構える。
「止まるでござる!! 殺気は感じられぬがこれ以上近づけば容赦はしないでごさる!!」
炎の中、少女は無言のまま立ち止まる。
その仮面の奥の瞳が、赤く光ったように見えた。
――ズバン!!!
「ぐぁ!?」
視界が揺れる。リョウマの左脚が膝から切断されていた。
血が地面に飛び散り、床を赤黒く染める。
ガキン!!
二本の刀を地面に突き立て、リョウマはそれに身体を預けた。
「く…やはり何が起こったのかわからなかったでござる…殺気もなしに…この少女…拙者よりもはるかに強い…!!」
彼の額を汗が伝う。
ただの一合で、自分と彼女の実力差を悟った。
タッタッタッ!!
「リョウマ!!」
アルテナたちが駆け寄る。
崩れ落ちそうな彼の姿に、ジョーカーが声を上げた。
「こ…これどういうこと~!?」
「なんでリョウマが傷ついてるんだ!? あの少女は何者だ!?」
「今、回復させます!」
アルテナが詠唱に入ろうとしたその瞬間――。
「く…来るな!! こいつの能力は得体がしれない!!」
リョウマが叫ぶ。だがその声は、轟く魔力の音にかき消された。
ヴォン!!
青白い光が地面を包み、複雑な魔法陣が展開する。
「!? 転送魔法陣!?」
「なんでこんなところに!?」
アルテナとガルが驚愕する間もなく、眩い光が彼らを包み込んだ。
次の瞬間――。
アルテナ、ガル、ジョーカーの姿はその場から完全に消え去っていた。
残されたのは、血に濡れたリョウマと、仮面の少女だけだった。
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