36.ショタワンコと悪役令嬢とロリっ子チャイナ娘の新パーティー
第2部完結まで連続投稿します!
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
「さぁ! 今日もがんばるアル!」
朝の光が差し込むギルドの扉を、元気いっぱいに押し開けて入ってきたのはテンちゃんだ。
まだ小柄な身体に似合わぬ勢いで、胸を張りながら堂々とホールを横切る。
赤いチャイナ服がひらりと舞い、お団子ピンクヘアーが弾むたびに周囲の冒険者たちの視線が彼女に集まる。
テンちゃんがギルドに顔を出してから、すでに一週間が経った。
その間、彼女は討伐クエストを次々とこなし、特にモンスター討伐系の依頼をメインに受けている。
しかも一人で、危険度CランクやBランクの任務を成功させて帰ってくるのだから、その腕は誰もが認めざるを得ない。
しかし――。
「危険度Bランクだとケガすることがあるんだよな」
受付で報告を受けたときのテンちゃんは、血の滲んだ包帯を腕や脚に巻いていることが少なくない。
すり傷や切り傷程度とはいえ、油断できない。以前のオーガ討伐のときもそうだった。やはり彼女一人では危うさを感じる。
それでもテンちゃんは強さと可愛らしさを併せ持つ存在だ。屈託のない笑顔で誰にでも挨拶を欠かさず、気の強い一面すら魅力に見える。
だからこそ、彼女を自分のパーティーにと誘う冒険者は後を絶たない。
だが、そのたびにテンちゃんは首を横に振って断ってきた。理由は単純明快――「人数が増えたら収入が減るから」。
確かにクエストの報酬は基本的に人数割りだ。少人数のほうが取り分は増える。しかし、命あっての冒険者だ。
金を惜しんで命を落としたら元も子もない。やはり、彼女には仲間が必要だと強く思う。
「おはようテンちゃん」
俺はタイミングを見計らい、まずは軽く声をかける。
「おはようアル! エリスもおはようネ!」
「おはようなのじゃ」
俺の頭の上から、エリスお嬢様がしれっと挨拶を返す。小さな体を器用に乗せているが、その瞳は相変わらず尊大さを宿している。
最初はテンちゃんと反発し合っていたが、今ではそれなりに打ち解けているらしい。
「ちょっと話があるんだけどいいかな?」
「どうしたアルか?」
俺とエリス、そしてテンちゃんの三人でテーブルに腰を下ろす。冒険者たちの賑わいがざわめきとなって響く中、俺は切り出した。
「…確かに危険度Bランクでは、ちょっとしたイレギュラーが入ると余裕がなくなるアル」
テンちゃん自身も薄々感じていたらしい。瞳に浮かぶのは、少しの不安と、それを押し隠すような強がりだ。
「それならウェルたちのパーティーに入りたいアル!」
思いがけない返答に、俺は思わず目を見開く。
「俺たちでいいの?」
「初めてのクエストでウェルとは連携が上手くいったし、ウェルと組めばアタシにはできないクエストも成功できそうアル!」
なるほど。俺としても願ってもないことだ。テンちゃんが入れば戦力は一気に跳ね上がる。
「妾も異論はないぞ。テンテンの腕前は本物じゃからな」
エリスお嬢様も渋々ながら認める。だがやはり上から目線だ。
「エリスは態度がいつもデカいアルネ。まぁ、パーティーを組んでくれるなら別にいいアル!」
さっぱりした笑顔で受け流すテンちゃん。
「それよりアタシのこと、テンちゃんと呼ぶことを許すアルよ?」
えらそうに腕を組むその姿に、俺は苦笑する。
「気が向いたらのう。妾のガラではないから今のところはなしじゃ」
やはりエリスはエリスだ。
こうして、俺、エリスお嬢様、テンちゃん――三人のパーティーが正式に結成された。ギルドでも屈指の戦力を誇ることになるだろう。
そして俺たちが選んだのは、最近になって急増している依頼のひとつ。
「ワイバーンの討伐に挑戦だ!」
Aランク危険度の依頼。その言葉にテンちゃんの瞳がきらりと輝いた。
ワイバーン――ドラゴンに似た姿を持ちながら、両腕が翼となり炎を吐く魔物。ドラゴンほどの硬い鱗はないが、Bランクの魔物など比べ物にならないほどの強敵だ。
俺とエリスのパーティー以外、誰も受けようとしない依頼に、ギルドマスターのゲルドさんも頭を抱えていた。だが、今の俺たちなら挑める。
俺は心の中で誓う。必ず強くなり、S級冒険者となってエリスお嬢様を守るのだ。
そして馬車に揺られ、依頼主の元へと向かう。四日かけて森を越える道中、テンちゃんとエリスは女子トークで盛り上がり、俺は一人で窓の外の景色を眺めた。
夜。森の中にテントを張り、焚き火の灯りが揺れる。
「…それ便利すぎるアル…」
俺がアイテムボックスから調理器具を取り出すと、テンちゃんが感心の声を上げる。
「ウェルのすごいところはこれだけではないぞ! 料理が特にすごいのじゃ!」
なぜかドヤ顔するエリスお嬢様。……あなたじゃなくて俺が作るんですけどね。
取り出した食材を手際よく調理していく。豚肉に似た肉を使った【ポークソテー】、白身魚のような素材で作る【ムニエル】。香ばしい匂いが焚き火とともに森に広がっていく。
「ふあああああ!!! めちゃくちゃ美味しいアル!!! こんなの食べたことないアル!!!」
「美味いのじゃ! 美味いのじゃ!」
二人の美少女が笑顔で頬を染める。俺にとっては、それが何よりのご馳走だ。
――そして。
翌日の深夜、俺が立ててしまった「ラッキースケベフラグ」が、思わぬ形で回収されることになるとは、このときの俺はまだ知らなかった。
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