329.ダンジョン10階層
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
「…おかしいでござるなぁ…魔物が出ないでござる…」
リョウマの低い声が、湿った岩壁に反響した。
ここは【アルゴプリズン】の三階層。通常であれば、通路を進むだけで魔物が襲いかかってくるはずの危険地帯だ。
しかし、今はただ、水滴が落ちる音と、仲間たちの足音だけが響いている。
異様な静けさに、誰もが息を呑んだ。
「スンスン…魔物の血の匂いがする…って思ったらそこいらにあるぞ!」
犬族のガルが鼻を鳴らし、岩壁の陰に素早く移動した。
そこには、乾きかけた赤黒い血が飛び散っている。壁面にも床にも点々と残り、戦闘があったことを示していた。
「…どういうことでしょう…魔物の血はあれど死体がないなんて…基本的にダンジョン内で放置すればどちらもダンジョンの壁に呑み込まれて消えるのですが…【ジョーカーみたいな魔法】が使えるのでしょうか?」
アルテナが慎重に辺りを見回しながら分析する。
ダンジョン内では、魔物の死体は一定時間後に壁へ吸い込まれて消える。
なので、一般的には魔物の使える素材であるドロップアイテムだけを取り出して解体して討伐の証明とともに換金したりして都市に貢献する。
だから、魔物の死体は丸ごと残っているか、解体された後になって放置されて残っているかしていないとおかしい。
「ウェルたちもいないようだね~。まさかもう下に降りたのかな~?」
ジョーカーが、ふざけた調子で言うが、声にはわずかな焦りが混じっていた。
「なら次は何階層にするんだ?」
ガルがリョウマを見た。彼の指はすでに次の転移準備に入っている。
「…10階層にするでござる」
「10!? さすがに早すぎだろ!」
ガルが目を剥いた。アルテナもジョーカーも、息を呑んでリョウマを見つめる。
「どうやら拙者たちはウェル殿たちを甘くみているのかもしれないでござる。この乾いてきている血の跡を見る限り、もうかなり奥まで降りたであろう」
リョウマの真剣な眼差しに、誰も反論できなかった。
そして、ガルが頷き。
「【瞬身】!」
シュン――。
四人の姿が、消えた。
次の瞬間、彼らは【アルゴプリズン】10階層に立っていた。
空気は冷たく、息を吐けば白く濁る。
壁には青白い鉱石が点在し、淡い光で周囲を照らしている。
だがその静寂は、すぐに破られた。
「グルルルル…」
低く、喉を鳴らすような唸り声が四方から響く。
目を凝らせば、暗闇の奥で光る瞳がいくつも。
リザードマン、ハイオーク、コカトリス――10階層に棲む猛獣たちが、彼らを取り囲んでいた。
「いや~ん! こわ~い! 大歓迎されてる~!」
ジョーカーがおどけて見せるが、その手はいつでも魔法を発動できるよう構えている。
「はっはっは! さすがに10階層はまだ来てなかったみたいでござるな!」
「だから言ったじゃねえか!!」
ガルが怒鳴りながら牙を剥いた。だが、リョウマは笑っていた。
「まぁいいではないか! そろそろウォーミングアップをしたいと思っていたところでござる!」
リョウマが二本の刀を抜き放つ。刃が青い光を反射し、周囲に冷たい輝きを放つ。
「では殲滅しましょう」
アルテナの声と同時に、魔力の粒子が宙を舞う。
「さーて、どいつからぶった斬ってやるでござるかな!?」
リョウマが一歩踏み出した、その瞬間――。
「危ない!!!」
背後から幼い声が響いた。
そして、闇の中から、巨大な影が飛び出した――。
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