319.眠り姫の場合(8)
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
「…さよなら…お父さん…」
イザベラの声がかすかに震える。
父の心情は理解できない。
しかし、自分の仲間を傷つけたことには変わりなく、さらに自分を使って多くの人を殺そうと企んでいた。
イザベラは迷いなく、父よりもGクラスの仲間を選んだのだった。
ズギューーーーン!!!
ダッダッダ!!
「大丈夫か!?!?」
「ウェル先生!?」
結界に阻まれ、転送魔法陣を使えなかった俺は、ダンジョンへ向かうのが遅れた。仕方なく自力で、Gクラスのいる現場まで駆けてきたのだ。
【魔導霊気】を纏い、風魔法【エアウォーク】で宙を舞う。ダンジョンの薄暗い空間に、白く輝く光柱が見えた瞬間、俺はそこへ飛び込んだ。
「えっと…イザベラ…?」
かなり豹変したイザベラに俺は戸惑った。
「…はい…」
小さな声で、不安を隠すように返事をした。
「そうか! みんなは無事なのか?」
「…ケガはありますが…命に別状はないかと思います」
「よ、良かった…」
安心の吐息が漏れる。パァァァ…。
俺は【魔導霊気】を解除した。何が起きたのか正確にはわからない。だが、イザベラが生徒たちを守ったことだけは確かだ。
「良かったわね~。ウェル先生~」
【魔導霊気】を解除すると、空気が静まり返り、いつものように俺とレナが分離した。
レナはくすくすと笑い、からかうように「先生」と呼ぶ。
「ほんとに良かった…さぁみんなで帰ろう…たぶん今日の模擬クエストは中止になるだろうからな!」
突然のイレギュラーによって、模擬クエストは中止になることが決まった。
「ウェル先生…ごめんなさい…私は…行けない」
「え!?」
イザベラの予想外の返答に、思わず声が裏返る。
「私のせいなの…私が…魔物だから…もうみんなとはいられない…」
イザベラが魔物?
このイレギュラーは自分のせい?
俺はイザベラが何を言っているのか呑み込めずにいた。
「ど、どういうこと…!?」
「…さようなら…」
パァァァ!!!
突然、彼女は白光を放ち、【ホーリーバニッシュ】で空けたダンジョンの天井の穴から空へと飛び去った。
「イザベラ!? 風魔法【エアウォーク】!」
混乱を押し殺し、俺はすぐに後を追った。だが、光の消えた空には、もう彼女の姿はなかった。
「…イザベラ…とりあえず生徒たちを運ぼう…」
俺は【アイテムボックス】と【エクストラテレポート】を駆使して、Gクラスの生徒たちを安全な場所へ移動させた。
その光景を、物陰からじっと観察している影があった。
「…ターゲットは消滅したようだな」
グリムリペアのグアルだった。結界が消えたことにより、【影移動】でウェルより先に現場に到達していたのだ。
翌日。
目を覚ましたGクラスの生徒たちから、事件の経緯を聞いた。
ヴァンパイアの父ヴラド、ハーフであるイザベラ、そして人類を滅ぼすキーワード【ラグナロク】──。
物騒な話が飛び交った結果、模擬クエストは正式に中止となった。
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