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29.追放した冒険者とショタワンコの因縁

第一部完結まで連続投稿します!

追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!

 少年のころのビリーは、困っている人を助けることが正しいと信じていた。


 青空の下、街の路地や丘の草原で、誰かが泣いていればすぐ駆け寄る。


 しかし、貴族とのもめ事を経験し、考え方は変わった。


 弱い者は間違っている。弱い者は、悪者になる。


 ユルゲンもカーリンも同じ気持ちだった。


 だからこそ、川端誠一という男がビリーの目には許せなかった。


 人は良く、世話好きで、弱いくせに周囲から好かれる。


 弱い者はみんな地獄を見る。


 なのに、なぜあの男は罰を受けず、皆に頼られ、好かれるのか――


 気に入らない。


 荷物持ちにして徹底的に扱ってやろう。


 そして、とっととギルドを去らせる。


 そう心に決め、ビリーは川端誠一をパーティーに荷物持ちとして誘った。


 その後は酷い扱いが続く。


 3人分もあろうかという荷物をわざと持たせ、遠回りの山道を歩かせ、遅れれば


「この無能なおっさんが! 荷物もまともに持てねぇのか!!」


 と暴言を吐く。


 誰もが逃げ出すほどの苛烈な扱い。


 それでも川端誠一は、一度も不満を口にせず、黙々と2年間荷物持ちを務めた。


 ビリーはイライラが募る。


 なんでこんなに酷い扱いをしているのにヘラヘラしているんだ!?


 なんで俺たちの暴言にも離れない!?


 胸の奥で叫ぶ。


 俺たちは間違っていない! 俺たちは間違っていない!! 俺たちは間違っていない!!!


 弱い者は何をしても悪者になる。


 弱い者は誰からも嫌われる。


 弱い者は一生不幸だ。


 そして、ついにビリーは実力行使に出た。


「お前はもういらない」


 川端誠一にクビを宣告した。


 そうだ、こいつをギルドから追い出すのだ。


 領主の息子として、無能っぷりを広めれば、誰もが『無能なおっさん』として受け入れるはず――


 しかし、現実は違った。


 川端誠一は、仕事は遅いが丁寧で、雑用や薬草採取、畑仕事には定評があった。


 だがそれが気に入らない。


 自分たちがかつて受けた酷い目に比べ、なぜあの男は慕われるのか――納得がいかない。


 結局、ビリーたちは噂をでっち上げ、ワイロをギルドマスターに送りつけ、川端誠一を追い出すことに成功した。


「ざまぁああみろおおおお!!!」


 弱い者はひどい目に遭わなければならない。


 それがビリーの考えだった。


 半年後――


 川端誠一は名をウェル・ベルクと変え、再びビリーの前に現れた。


「新人なのに俺たちより上のランクだと!?」


 寝る間も惜しんで素振りを重ね、地位を上げるための汚い手回しもしてきた。


 なのに、まだクエストすらこなしていないあのガキが、自分たちよりランクが上――許せなかった。


 そして、ビリーはウェルに勝負を挑む。


 だが結果は敗北。


 約束通り、全裸逆立ちで街を一周させられる羽目になった。


 この件が父の耳に入り――


「またやらかしおったな!!! このバカ息子が!!!!」


 激怒。


「お前はもう私の息子ではない!!! どこへでも行くがいい!!!! この出来損ないが!!!!」


「そ、そんな! 父上!!」


「私を父上と呼ぶな!!!」


 こうしてビリーは家を失った。


 酒に溺れ、精神状態は不安定となる。


「ビリー…私たちがついてるから…」


 カーリンとユルゲンは離れず、三人で宿に泊まりながら日々を過ごした。


 しかし、調子を崩したビリーはクエストの失敗が続いた。


 そして、とある洞窟で――


「くへひゃひゃひゃひゃ!! ひゃははははっ!!」


 ビリーの奇怪な行動と叫び声に、楽園の使徒は目を輝かせた。


「素晴らしい!!! あなたには才能があります!! これほど神の恩恵を与えられるなど!! さぁ、奥へ参りましょう。あなたに力を授けます」


「早く!! 早く早く力を!!! あのガキをぶっ殺してやる!!!」


 闇に染まったビリーの心は頂点に達し、使徒に利用される。


「さぁ!! あなたに新しい力を与えましょう!! 闇魔法【マナメイク】!!!」


 洞窟の奥にはオークの群れ。


 黒い煙のように姿を変え、ビリーの体を包み込む。


「ぐあああぁぁぁ!!!!」


 そしてビリーはオークの姿へ変貌。


 洞窟から飛び出し暴れ、途中で他のオークを食べ、力を吸収していく。


「モットダ! モットチカラヲ!!!」


 こうしてビリーはオークロードとなった。


 ――そして現代。


「ビリー!!!!」


「…まだ俺の名前を呼ぶのか」


「起きてくれ!!!!」


「…眠らせてくれ…もう…つかれた…」


「ポーションで回復を!! あと、ウェルくんにも!!」


「………………………………ウェル………………………?」


「ウェル…ベルク……。そうか…俺はオークロードになって…。またアイツと戦って……。負けたのか………」


「…ビリー…?」


「ビリーが……ビリーが……!! 目を覚ました!!!!」


 満身創痍のビリー。五体満足で生きていた。


 涙が頬を伝う。その涙は助かった喜びか、仲間の想いか、敗北の悔しさか――本人にもわからなかった。


「…よぉ…心配…かけたな…」


 大切な仲間を失うところだった。


「バカヤロウ!! 俺たちはガキのころからずっと仲間だろ!! お前を今さら見捨てるわけねぇだろ!!」


「そうよバカ!! もう二度と危ないことしないで!!!」


 ユルゲンとカーリンは泣きながら説教する。


 ビリーは頭を下げ、苦笑するしかなかった。


「…ハハハ…。ところであのガキ…。ウェルはどうした?」


 目の前には倒れたウェルの姿があった。


「疲労で倒れているだけじゃ。あんなになるまで必死にお主を助けたのじゃ。感謝せよ!」


 大きな態度でそう言うのはエリスお嬢様。


「妾は止めたのじゃが、どうしてもお主を助けたいと言って聞かなかったのじゃ。ウェルがお人好しで良かったのう!」


「……なんで…俺なんかのために…」


「理由なんて妾も知らん! 強いて言うなら理解ができないほどのお人好しということじゃ!」


 ビリーはぽかんと空を見上げた。


「…ハ…ハハハ…。なんか久しぶりにあの【無能なおっさん】思い出したぜ。ウェルとあのおっさん…なんか似てるなぁ…」


 ウェルは、かつての川端誠一その人だった。


「…今頃…何してんのかな…? …あのおっさん……」


 ビリーは空を見上げ、呟く。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


と思ったら


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面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


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