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281.青髪縦ロール令嬢の場合(2)

追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!

 テスト本番まで、残すところあと二週間。

 夜の帳が降りる頃、屋敷のリビングには紙とペンの擦れる音が響いていた。

 ニャウンシェ、アンブル、レネー、シルヴィア、イザベラの五人が、それぞれ真剣な表情で机に向かっている。

 魔法の灯りがゆらめき、淡い橙色の光がみんなの顔を照らしていた。


 予想外の出来事が起きたのは、そのときだ。


「イザベラさん全教科満点ですわ!」


「ウソだろ!?」


 リーズが採点した答案用紙を掲げ、目を丸くしている。

 思わず俺も腰を浮かせた。

 そういえばイザベラ、普段は授業中ずっと寝てたな……。

 つまり、あれで本気を出してなかったってことか。


「…昼は眠くて答案用紙が読めないの…」


 眠たげに目をこすりながら、イザベラが小さく呟く。

 どうやら、昼は完全に機能停止してるらしい。

 なるほど、夜型か。

 この時間なら頭が冴えるのも納得だ。


 それにしても、学年トップになれるほどとは恐れ入る。

 この調子なら、夜に合わせた勉強計画を組めば問題なさそうだな。


「にゃー! 点数上がったにゃー!」

「もう勉強したくないのだー!」

「…疲れた…」


 周囲の面々も順調に成績を伸ばしている。

 ニャウンシェは机の上で尻尾をぱたぱたさせ、アンブルは床に寝転がり、レネーは肩を回して大きくため息をついた。

 どうやら単純に、勉強が嫌いなだけだったようだ。

 やればできるタイプってやつだな。


「この分なら問題なさそうだな」


 俺が一息つくと、エリスが静かに首を振った。


「…シルヴィアは全教科25点なのじゃ」


 成績表を見て、空気が一瞬止まる。

 頑張ってるのはわかるんだが、なかなか伸びない。

 それでも0点からここまで上がったんだ。進歩はしてる。


「…あきらめませんわ!!」


 拳を握るシルヴィアの瞳に、強い光が宿っていた。


「わたくしたちも全力でサポートしますわ!」


 リーズが励ますと、周囲にも活気が戻る。

 みんな、シルヴィアを放っておけないんだろう。

 真っ直ぐで努力家だからな。


 だが、ここからさらに点を上げるには――何か工夫が必要だ。


 …そうだ。


「実技と勉強を並行してみてはどうだろうか!」


 ふと思いついた案を口にした。

 シルヴィアは理論より実践の方が得意だ。

 身体を動かしながら覚えることで、記憶が定着するって話をどこかで聞いたことがある。


「実技でしたら腕がなりますわ!」


 彼女の表情がぱっと明るくなる。

 青い髪がふわりと揺れ、まるで夜の光を受けてきらめいた。

 これなら、きっとやり方次第で化ける。


 とはいえ、もう夜も更けていた。


「今日はもう帰って休もう! 休むのも勉強のうちだ」


 全員の集中力が限界に近いのは明らかだった。

 無理に詰め込んでも、脳が疲れるだけだ。


 昔の俺もそうだった。一夜漬けしても、次の日にはきれいさっぱり忘れる。

 だからこそ、今の彼女たちには、ただ点を取るためじゃなく、【本当の力】を身につけてほしい。

 今日の勉強会はお開きとなった。

「面白かった!」


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