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28.追放した冒険者の過去

第一部完結まで連続投稿します!

追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!

 真っ暗だ…。

 目の前には何も見えない。

 体の力が抜け、足も手も重く感じる。


「ビリー!!!!!!」


 誰だ…俺の名前を呼ぶ声は…。

 俺は…今、何をしているんだ…?

 胸の奥で遠い記憶がざわめく。


 ――10年前。


 少年時代のカーリンとユルゲンは、平民という理由だけで街中でいじめられていた。

 石畳の路地に落ち葉が散り、秋風が冷たく吹き抜ける中、貴族の少年たちが二人を取り囲む。


「平民のくせに俺の前を素通りするなんて生意気だ! しつけてやる!!」


 高慢な笑みを浮かべた少年たちが、棒や石を振りかざしカーリンとユルゲンに暴力を加える。


「や、やめて…」


「やめてくれ!!」


「ギャハハハハハ!!!」


 少年たちの悲鳴を嘲笑うように響く笑い声。

 そんな時だった。


「必殺!! ウルトラスーパージャンピンググレート ハイパースペシャルキーーーーーーーック!!!!!!!!!!!!!!!!」


 ドカッ!!!

 カーリンを踏みつけていた貴族の少年が、突如現れた一人の少年の蹴りで吹き飛ぶ。


「な! 誰だ!!! って…ビリーじゃねえか!!!」


「てめぇはこっち側だろ!! なんで邪魔すんだ!!」


 助けに入ったのは、まぎれもなくビリーだった。


「うるさい!!! この貴族の恥さらしどもめ!!!」


 ビリーは怒りに満ちた瞳で、貴族の少年たちを次々と打ちのめす。


「ちくしょう!! パパに言いつけてやるからな!!」


「覚えてろよ!!! バーカ!!!」


 泣きながら去っていく貴族の少年たち。


「おい! 大丈夫か!?」


 こうしてビリーとカーリン、ユルゲンは出会った。


「あ、あんた…なんで俺たちを助けたんだ…」


 ユルゲンの問いに、ビリーは少し照れながらも答えた。


「そんなもん! 困っている人を助けるのは普通だろ! 俺はああいうやつらがキライなんだ!」


 ビリーは幼い頃から父の教えを守っていた。


 ――【困っている人を助けなさい】


 その信念が、彼を行動へと駆り立てていたのだ。


「ところで名前はなんて言うんだ?」


「私は…カーリン…」


「俺はユルゲンだ」


「カーリンとユルゲンか! 俺はビリー! よろしくな!」


 こうして三人は友達となった。


 しかし、数日後――ビリーの屋敷では嵐のような光景が待っていた。


「なんてことしてくれたんだ!!!」


 怒鳴るのはビリーの父。貴族の間で悪評が広まったことを理由に、父は息子を叱責する。


「違う!! 俺はいじめられている子がいたから助けたんだ!」


「言い訳するな!!」


 父は耳を貸そうともしない。


「お前のせいでこの街に居られなくなったんだぞ! このバカ息子が!!」


 友達を救う喜びと、家族の愛を失った痛み。ビリーはそのとき、初めて心に深い闇を抱えることとなった。

 だが、支えになったのはカーリンとユルゲンの存在だった。こうして三人は【シーサイドタウン】に移転することになった。


 街は海風が漂い、波の音が遠くから聞こえる港町。

 カーリンとユルゲンも共に、新しい生活を始めた。

 ビリーの父は領主として町を支配するが、息子たちは自由を求め、冒険者としての道を歩む決意を固める。


 ――力を持たねば、弱者は救えない。


 力を得るため、ビリーは冒険者ギルド【ルミネスゲート】へと足を踏み入れた。


 木陰で木刀を振るビリー。

 道端でシャドーボクシングをするユルゲン。

 図書室で魔導書を読みふけるカーリン。


 彼らは心に刻まれた屈辱と悔しさを胸に、ただ強くなるためだけに日々を重ねていった。


 5年後。


 C級冒険者として名を上げた三人は、さらに上を目指す。


「もっとだ! もっと上だ!! どんなことをしてものし上がってやる!!!」


 力を持つこと、一流になることに執着するビリー。


 その意志を支えるユルゲンとカーリン。


 彼らは時に手段を選ばず、ギルド内の競争を勝ち抜き、B級冒険者としても頭角を現した。


 そして、今から2年半前。


 汚い手段でのし上がった彼らは、無能なおっさん――【川端誠一】と出会うことになる。


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


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