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269.武術科志望の無口な魚族の場合(2)

追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!

「うぐ…ナイス攻撃だぜ…テンちゃん…」


 ガク。


 と言い残す俺。


「新技の練習中にいきなり現れると危ないアル!」


 空間魔法のテレポート系統は、あくまでも指定した場所に移動するものだ。

 だが、到着先がどうなっているかはわからない。

 今回のように、予期せぬ衝撃を受けるリスクがある。

 今後は、テレポート先の安全確認を怠れないな。


 リン・テンテン。


 異国の地【シン】の出身者。

 彼の国では、魔法ではなく【気】という生体エネルギーを使い、さまざまな武術を操る者が多い。


 そのひとつが【八極気功拳】。

 【気】を利用した滑らかな受け流しと強力な打撃を繰り出す武術だ。

 そのエキスパートがテンちゃんであり、技の正確さと威力は折り紙付きだ。


 偶然にも【八極気功拳】の概念は、レネーが学ぶ【海流拳】に似ている。

 もしかしたら、レネーの武術習得に最適な機会かもしれない。


「その子は誰アルか?」


 テンちゃんがレネーに目を向ける。


「…レネー…」


 無口なレネーが、精一杯の声であいさつする。


「この子はレネー。俺が担当しているクラスの生徒だ。テンちゃんに武術と【気】の扱いを教えてもらおうと、テレポートで来たんだ」


「国外から一瞬で移動なんて…ウェルは【どこでもワンコ】アルな!」


「誰が【どこでもワンコ】じゃい!」


 という茶番は置いといて、話を進める。


「まずはどのくらい【気】を扱えるかみてみるネ!」


 テンちゃんはレネーの手を握った。


「…!!」


 レネーは女の子に触れられて、顔を赤らめてオドオドしている。

 いや、ほぼ無表情のままだ。


「ほうほう…なかなかの素質ありネ!」


 おお、よかった。

 魔力が少ない代わりに、【気】の扱いには潜在能力があるらしい。

 魚族特有なのか、それともレネーだけが特別なのかはわからない。


 どちらにしても、これで学習の突破口が開ける。


「…よかった…」


 普段無表情なレネーも、少し表情が柔らかくなる。

 完全な笑顔ではないが、いつもの無表情よりは確実に緩んでいる。


「じゃあ! 俺は他の子の授業があるからこれで! すぐにまた戻ってくるね!」


 他の生徒たちも教えなければならないからな。


「待つアル!」


 テンちゃんが呼び止める。

 どうしたんだ?


「授業料は1時間につき銀貨1枚アル」


 金か!

 さすがテンちゃん、きっちりしている。

 人の時間を使う以上、当然の要求だろう。


「分かった! それじゃあよろしく! ラーニング3つ同時発動。【トリプルエクストラテレポート】!」


 シュン。


 瞬間移動の感覚が全身に走る。

 そして、俺は学校へ戻り、レネー以外の生徒たちとの授業を再開することになった。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


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