263.金属バットではない
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
グレゴリーのミスリルソードと、エイブのバットがぶつかった瞬間――。
空気が裂けるような鋭い金属音が響き渡った。
訓練場の砂地に立ちこめていた熱気が、一瞬で凍りつく。
バキーン!!!
次の瞬間、グレゴリーのミスリルソードが粉々に砕け散った。
陽光を反射した無数の銀片が、まるで光の雨のように宙を舞う。
「…へ…!?」
グレゴリーは目を見開いたまま、硬直して動かない。
あまりの現実離れした光景に、思考が止まったようだった。
ズガン!!!
「ぐべっ!?!?」
バットの軌道が風を裂き、鈍い衝撃音とともにグレゴリーの顔面を正面から叩き抜く。
衝撃で砂煙が舞い、周囲の観客が息を呑んだ。
「新必殺技!! 【気合いど根性バットクラッシャー】!!」
ズガーーーン!!!
その声と同時に、グレゴリーの身体は空高く打ち上げられた。
人形のように回転しながら、青空へと吸い込まれていく。
バシュッ!
審判が即座に飛び上がり、宙に舞うグレゴリーをキャッチ。
砂埃を巻き上げながら、静かに地面に降り立った。
「…勝者! エイブ!!」
張り詰めていた空気が解け、観客席が一瞬だけ静まり返る。
やがて――。
パチ、パチ、パチ……
Gクラスのバースがゆっくりと拍手を始めた。
その音が合図のように、レスター、シルビィア、ニャウンシェ、アンブルが次々に立ち上がり、歓声を上げながらエイブに駆け寄る。
ちなみにイザベラは……安定の居眠り中。
「よくやってくれましたわ! 胸がスっとしましたわ!」
「まだ本気出てないのに勝てるなんて凄いニャ!」
「よ、よせよお前ら! 大袈裟すぎるぜ! これぐらい!」
シルビィアとニャウンシェの声に、エイブは耳まで真っ赤にしながら頭をかいた。
正直、本人もまさかこの一撃で勝てるとは思っていなかったようだ。
「よくやったエイブ!」
俺も遅れて駆け寄り、肩を叩いた。
その顔は、師として誇らしくてたまらない。
「お、おう先生! 先生のおかげだぜ!!」
エイブが笑う。その笑顔を見た瞬間、思わず胸が熱くなった。
だが、その輪の外で――一人、納得がいかない顔をしている男がいた。
「不正だ! 何かの間違いだ!!」
Cクラス担任のニコロが、顔を真っ赤にして叫ぶ。
怒りに震える指先が、こちらを真っすぐに突きつけていた。
「不正だなんて負け惜しみにもほどがありますよ?」
俺はついニヤリと笑って返す。
ようやく心にも余裕ができて、口調が自然と丁寧になっていた。
「不正であろう! 金属バットでミスリルソードを破壊することなんてできるはずがない!!」
――そう。本来なら、そんなことは絶対にあり得ない。
「そうですね…これが金属バットならな!」
「な、なんだと…?」
「これは金属バットじゃない。ミスリルで作ったバット。名づけるなら【ミスリルバット】だ!」
「ミスリルバットですと!? なんですかそれは!? そんなものどこに売っているというんですか!?!?」
ニコロの叫びが訓練場に響く。
確かにその通りだ。ミスリルでバットなんて――誰が作る? どこに需要がある?
そんなもの、誰も作らない。どこにも売っていない。
だからこそ俺は、胸を張って言い放つ。
「買ったんじゃない! 俺が作ったんだ!!」
ざわめく観衆。
砂を踏む音が止まり、視線が一斉に俺へと集まった。
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