259.それぞれの特性を活かす
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
森の木漏れ日が差し込む中、俺は2人を見据えた。
「というわけで武術科が向いていると思うぞ!」
「剣じゃないのかニャ!?」
「武術なんてやったことないのだ!」
驚いた表情で目を丸くする2人。
これまで剣を握って戦うことが“当たり前”だった彼女たちにとって、武術科という言葉はまるで未知の世界だろう。
「大丈夫! 俺がしっかり教えるから!」
そう言うと、2人の耳と尻尾がピンと立った。
不安よりも、どこかワクワクしているようにも見える。
そして、次は無口な少年――レネーの番だ。
彼の瞳が静かにこちらを見つめていた。
「レネーの感知能力はとても優れている。だから前衛で接近戦をするだけでなく、パーティーにおいてみんなに危険を知らせる役割をやるといいだろう!」
レネーの感知能力は、魔法でもなければ種族特有の力でもない。
彼自身が、生まれながらに持っていた“勘”――いや、“才能”だ。
それは鍛えればさらに精度を増す。俺にはそれが確信できた。
「…俺…頑張る…」
か細い声ながら、はっきりとした意思を感じる。
無表情のままでも、心の奥では火が灯ったのがわかる。
「あと、海流拳は俺が少しくらいなら教えることができそうだ! だから一緒に頑張ろう!」
昨日、ラーニングで習得したばかりの海流拳。
テンちゃんの八極気功拳と合わせれば、戦闘の幅が一気に広がる。
「ほんと…? 嬉しい…!」
その瞬間、レネーの口元がわずかに緩んだ。
表情は変わらないのに、空気が柔らかくなる。
ああ――これが、彼なりの“最高の笑顔”なんだな。
「ウェル先生! 俺はこの金属バット以外認めないぜ!!」
元気いっぱいの声が響いた。
エイブだ。いつもどおりの熱量で、まっすぐな目をしている。
そう、こいつは剣術科なのに、なぜか金属バットを愛用している。
「…どうして剣を使わないんだ?」
素朴な疑問を投げかけると、彼は後頭部をかきながら笑った。
「剣も使ったんだけどよー…。剣筋立てるのが苦手でよー…」
なるほどな。
どうやら、エイブは剣を振るうときの角度や力の方向――つまり“刃筋”を正確に合わせるのが苦手らしい。
剣は角度を間違えると、どんなに上質でも斬れ味が落ちる。
特に鎖ノ国の刀なんて、ほんの数度のズレで結果が変わるからな。
「だから俺はこの金属バットだ! それに田舎にいた頃はこいつで魔物を追っ払って村を守ったんだからな!」
語る彼の声には誇りがあった。
金属バット――それは彼にとって“武器”であり、“絆”そのものなんだろう。
剣術科といっても、扱うのは剣だけとは限らない。
短剣、槍、斧……戦場で生き残るために使えるなら、何でもいい。
だが、金属バットだけは前例がない。
というより、エイブ以外誰も使おうとしなかった。
「…それが一番しっくりくるならそれでいこう! 剣術科に認められないなら強くなって見返せばいい!!」
俺の言葉に、エイブの瞳が一気に輝いた。
「認めてくれるんだな先生! 俺、頑張るぜ!!」
握りしめたバットの金属が陽を反射して光る。
その姿は、まるで信念そのものだった。
やはり、人は誰かに認められると強くなれる。
それは俺も同じだ。
さて――他の生徒たちはどうするか。
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