25.追放した冒険者の成れの果て
第一部完結まで連続投稿します!
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
空から落下して現れたのは犬耳の美少年――ウェル・ベルクだった。
「…ウェルくん!」
全身に傷と衝撃の痛みが走るゲルドは、声を絞り出すのもやっとだった。
「妾もおるぞ!」
ひょこっと現れたのは、小族の少女、エリスお嬢様だ。
森の落ち葉の間に光を散らしながら、華奢な体からは想像できない威厳が漂っていた。
「エリスお嬢様。
ゲルドさんに回復と結界をお願いします」
ボロボロで今にも倒れそうなゲルドのため、急ぎ治療を頼む。
結界はオークロードとの本気の戦闘に備えるためだ。
「そのつもりじゃ!
聖なる加護を、汝の光、癒しを捧げよ。
光魔法【ヒール】!」
光の魔法がゲルドを包み込み、傷を癒していく。
だが、光はまだ応急処置の域を出ず、彼の痛みを完全には取り除けなかった。
「ま、待て! お前たちの適う相手じゃない!
オークロードは危険度Sランク!! 再生もするぞ!」
危険度Sランクで再生――それは戦況を一気に絶望的にする要素だ。
だが、逃げるわけにはいかない。
足止めだけでは犠牲者が増える。
倒す――俺が倒すんだ。
危険度Sランクのオークロードを!
「ぐおおおお!!!!!!」
背後から、ジェネラルオークが二体、ゲルドにトドメを刺すべく襲いかかる。
「くっ! くそ!」
エリスお嬢様もゲルドも危険な状況だ。
「エリスお嬢様! 結界をお願いします!
【ラーニング】二つ同時発動。
【剛剣】【ファイアブレス】
合成!【二刀流 火炎の剛剣】!!!!」
ズドーン!!!
同時に二本の巨大な火柱が天を焦がす。
二体のジェネラルオークは炎に包まれ、瞬時に灰と化した。
「くっ! なんて威力だ!!」
ゲルドですら全力の一撃でやっと倒せる相手を、一瞬で制圧した。
「全く、妾の結界がなければ危なかったぞ」
光魔法【シールド】。
無詠唱で放たれたエリスお嬢様の結界は、以前より格段に強固になっており、火柱の衝撃を防いだのだ。
「すみません。急だったもので」
その戦いぶりを見つめるのは、ゲルドとクラーラだけではない。
B級、C級の冒険者たちも目を見張る。
そして、誰もが心の奥で思った――この二人なら、この絶望的なピンチを打開してくれるかもしれない、と。
危険度Sランク――オークロードさえも倒せるのではないかと。
森全体にその共鳴が広がる。
「うおおおおおおおおおお!!!!!」
冒険者たちは鼓舞されるように、声を上げた。
「なんだアイツすげぇーぞ!」
「ジェネラルオークを一瞬で倒しちまった!」
「もしかしたらオークロードも倒せるかもしれない!!」
「俺たち助かるぞおおお!!!!」
もう、俺のことをインチキだとか疑う者はいない。
俺は、一人前の冒険者として認められたのだ。
「……ビリーさんですよね?」
俺の発言に周囲は動揺する。
「今、ビリーって言ったか?」
「どこにいるんだ!?」
「アイツ今まで何してたんだ!?」
「姿が見えないが…」
冒険者たちは困惑する。
ビリーの姿も声も見えないのだから。
「ウェルくん、どういうことだ!?」
最初に問いかけたのはゲルドだった。
「俺の固有魔法【サーチ】のおかげです。
最近鍛えて、魔物と人間の魔力を見分けられるようになりました」
固有魔法【サーチ】――半径100mまで生物を感知する能力だ。
範囲を絞れば、敵の位置や攻撃のタイミングを精密に把握できる。
トレーニングにより、人間の魔力と魔物の魔力を識別できるようになったのだ。
「そして、このオークロードだけが人の魔力を持っています」
俺は、カーリンとユルゲンからの頼みを受け、森に入った直後に【サーチ】を使用した。
その結果、オーク大群の中心に、人の魔力を宿すオーク――オークロード――を発見したのだ。
「俺はある冒険者たちに頼まれてオークになったビリーさんを探していました。
まさか、オークロードになっているなんて…」
恐らく、楽園の使徒【ラプラス】の仕業だろう。
大量の魔力でオークを生み出し、融合させ、ビリーを核としてオークロードを作ったのだ。
「諦めるのじゃ。
ウェルのマナドレインなら理論上救えるが、
オークロードには通用せんぞ!」
そうだ。
俺が扱える闇魔法【マナドレイン】は弱い魔物にしか効かない。
オークなら魔力を吸い取り元に戻せるが、オークロードには通用しない。
前にグリーンドラゴンで試したからな。
「どうしたものか…」
「……ウェル……」
え?
「ウェル……ベルク!!」
オークロードが言葉を発したのだ。
「ぐおおおお!!!」
ウェルの名を呼び、雄叫びを上げるオークロード。
「ウェル・ベルク!!!
コロス!! コロス!!!!」
え? 俺?
斧が振り下ろされる。
「やば! 空間魔法【テレポート】!!」
即座にゲルドさんとエリスお嬢様とともに、空間を飛び越えた。
ゲルドを巻き込むわけにはいかない。
「こ、ここは?」
ズドーン!!!!!!!
50m離れても、振り下ろされた斧の衝撃波が森を震わせる。
怪力に恐怖すら覚える。
「ゲルドさん、エリスお嬢様。
ここで待っててください。
空間魔法【テレポート】!!」
俺は二人を安全な場所に残し、オークロードの元へと戻った。
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