244.本当の想い
第12章完結まで連続投稿します!
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
ザイヤくんの輪廻転生の光に包まれたあと、俺は気づけば真っ黒な空間に立っていた。
音も風もない。上下の感覚すら曖昧で、自分の呼吸音だけがやけに大きく響く。
「ウェル! 無事か!?」
最初に聞こえたのは、エリスお嬢様の声だった。
その声が、暗闇の中に一筋の光を差し込ませたように感じた。
周囲を見渡すと、薄い靄の向こうに仲間たちの姿が見える。どうやら全員無事らしい。
「まーたうちの主は無茶したのよ~!」
レナが呆れたように笑う。その顔を見て、胸の奥の緊張が少しだけ解けた。
「まぁ無事なら何よりじゃ。それよりここはどこかのう?」
エリスお嬢様の声が静かに響く。
そうだ――のんびり話している場合じゃない。
ここがどこなのか、何が起こったのかを確かめる必要がある。
「あーあー。せっかく魔人戦争の時代に送り込んだのに強制解除しやがって」
そのとき、俺たちの誰でもない男の声が空間全体に反響した。
音の出どころが分からない。まるで空気そのものが喋っているみたいだった。
「この声は...ジャック!!」
そう、俺たちを二千年前に飛ばした張本人。
魔族の魔力残滓【ジャック】の声だ。姿は見えないが、間違いない。
「ほんとはもっといさせるつもりだったんだけどな! 魔人戦争後の魔族は人族に敗北し、生きてる魔族はほとんど奴隷となって酷い仕打ちをされているところを見せたかったのによう!!」
ジャックの声には、怒りよりも深い悲しみのようなものが滲んでいた。
その言葉を聞いて、胸が締めつけられる。
魔族の恨み…。どうやら、まだ終わっていないらしい。
「...なぁジャック…なんで魔人戦争の時代に俺たちを飛ばしたんだ? 魔族の恨みの発祥かもしれないが、お前自身が受けた恨みじゃないだろう?」
ずっと気になっていた疑問を、今ようやく口にする。
もし本当に恨みを晴らしたいだけなら、もっと別の時代を選べたはずだ。
「お前はマルディから引き継いだ恨みの塊だ。だから俺たちを飛ばすならマルディが受けた非道の時代に飛ばした方が、お前自身が受けた憎しみを見せることができたはずだ。なのになんでマルディもお前も生まれていない時代に飛ばしたんだ?」
俺の声が暗闇に吸い込まれていく。
返事はない。だが、ジャックが迷っているのが伝わってきた。
「…本当は...俺たちに魔人戦争の歴史を変えて欲しかったんじゃないのか…?」
その言葉に、空間がわずかに震えた気がした。
しばらく沈黙が続いたあと、ジャックが低くつぶやいた。
「...ちっ…ガキが知ったような口聞きやがって...あぁそうだよ! 魔人戦争の結果が変わってりゃ...魔族が奴隷扱いを受ける世界でなけりゃ…マルディの両親…俺の両親は奴隷として扱われて死ぬことはなかったんだからな!!」
声が震えている。怒鳴っているのに、悲鳴にも聞こえた。
ジャックの言葉の裏に、深い絶望が渦巻いているのが分かった。
「それなのに御先祖たちは邪魔しやがって! あのあと俺たち魔族がどんだけ苦しんだと思ってるんだ!!!」
「…ジャック...」
見えないその顔を想像する。
涙をこらえながら怒っている、そんな姿が脳裏に浮かんだ。
「...俺たちが変えてやる! 元の時代で!!」
俺は拳を握りしめた。
ザイヤくんが命を懸けて残した希望――人族と魔族の共存。
その想いを、俺たちが受け継がなきゃいけない。
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