240.改造人間型ホムンクルス
第12章完結まで連続投稿します!
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
「クソ! かなりやられた!!」
焦げた地面と血の匂いが入り混じる中、数少ない生き残りの人族兵が叫んだ。
あたり一面には、氷に閉ざされた仲間の死体が転がっている。
その兵士は、傷だらけの体を引きずりながらも、何かを引き連れてきた。
「だがこっちにはラルスさんから派遣された強力な助っ人がいるのだ!」
その影が、ゆっくりと炎と煙の向こうから現れる。
ヒオラの瞳が揺れた。
「あ…あなたは…」
それは、かつてウェルたちと共に戦っていた人族――魔法剣士【アーサー】だった。
だが、今目の前にいる彼は、どこかが違う。
肌の色は死人のように青白く、瞳には生気がない。
背筋を通る冷たい悪寒が、ヒオラの胸を締めつけた。
いったい、何があったのか。
「ラルスさんがこいつを捕まえて人体実験を行ったのさ!【改造人間型ホムンクルス】の試作1号とか言っていたな」
兵士の口から出たその言葉に、ヒオラの表情が固まった。
周囲の空気が、一瞬で冷たくなる。
改造人間型ホムンクルス――
それは通常のホムンクルスとは異なり、人間そのものをベースに作られた存在。
後に【人工魔導士】と呼ばれる、倫理を捨てた産物だった。
「【ホムンクルス】…噂では聞いたことがありますが...リーズのお友達を改造するなんて! 許せません!」
ヒオラの声が怒りで震えた。
同じ人族でありながら、ここまでの非道を働くことができるのか――。
彼女の背後で、氷の粒がざわめくように浮かび上がる。
「幸いにも私の魔法は拘束するのに適しています。氷漬けにして、後に治す手立てを考えましょう!」
ヒオラが両手を組み、周囲の温度が急降下した。
白い息が空中で凍りつき、アーサーの足元から氷が這い上がる。
「【氷河の古】!」
ヒオラの声が響いた瞬間、アーサーの足が瞬時に氷結した。
空間がきしむような音を立てる。
それはヒオラの固有魔法【グラキエース】による封印魔法。
対象を凍らせ、永遠の眠りに封じるスキル。
しかし――。
ドゴーン!!!
轟音と共に、眩い爆炎が爆ぜた。
氷は粉々に砕け散り、炎の熱風がヒオラの頬を焼く。
「な…なんて炎...!」
ヒオラの強力な封印魔法を一撃で打ち破るその力に、彼女は目を見開いた。
炎の向こうに立つアーサーの姿。
その剣の刃には、まだ燃え盛る炎がまとわりついている。
「ははは! 驚いたか! こいつは改造によって【全属性魔法】を完全無詠唱で扱える上に【不老】の力を手に入れたのだ! その代わり意識は失ったがな!」
隣の兵士が勝ち誇ったように叫ぶ。
アーサーの瞳は焦点が合っていない。
それでも剣を握り、まるで機械のように動き出す。
炎が舞い、雷が迸り、風が唸る。
10属性すべての魔力がアーサーの体から漏れ出していた。
ズバーン!!
ズガガガガガガガガガ!!!
次の瞬間、雷と風を纏った剣閃が、ヒオラを襲った。
氷の結界が砕け、氷槍が次々に打ち砕かれていく。
バリーン!!
そして、多重魔法障壁も破壊された。
「…こ...これ程とは...」
ヒオラは地面に膝をついた。
息が荒く、血が口元から滴る。
序列5位の魔族――その彼女が、まるで子供のように圧倒されている。
炎に照らされ、アーサーの無表情な顔が浮かび上がる。
ウェルたちと旅をしていた頃の穏やかな彼の面影は、もうどこにもなかった。
「...これが...私の...最後なのですね...」
ヒオラの唇がかすかに動く。
アーサーは何も答えない。
ただ、剣を振り上げ――。
その瞬間、ヒオラの頬を一筋の涙が伝った。
「...リーズ…大好き…」
ズガーン!!!
光と音が爆ぜ、戦場が白く染まった。
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