221.運命の日
第12章完結まで連続投稿します!
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
――ここは魔族の頂に君臨する地、魔王城。
「シンティア様! おかえりなさいませ!」
大広間の扉が音を立てて開かれると、1人の下級魔族が深々と頭を下げて出迎えた。
「あぁ、今帰った」
シンティアは穏やかな声で答えながらも、瞳の奥には雷光が揺れていた。
その両腕には、ぐったりとした二つの人影――テンテンとサヤの姿がある。
「シンティア様...そちらのもの達は...?」
下級魔族は恐る恐る問いかけた。
白銀の髪が揺れ、シンティアはわずかに顎を引いて応える。
「この者たちは人族に加担する悪だ。だが交渉材料として生かしている。牢に入れおけ」
その声音には、冷徹さと理性が混じっていた。
彼女はテンテンとサヤを殺すことなく、ウェルを仲間に引き入れるための交渉材料とするつもりだった。
雷速の魔法を操るシンティアは、テンテンたちとの戦闘を終えてからわずか10分足らずで魔王城に到着していた。
「は! 承りました!」
部下たちは慌ただしく動き、倒れた二人を拘束して牢へと連れて行った。
雷の音が遠くで鳴り響き、シンティアの表情に一瞬の影が落ちる。
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それから1ヶ月後。
「ふ~やっと魔王城についたね~」
疲れた声を上げるのはココ。
その後ろで、ウェル、エリス、そしてザイヤが並んで歩いていた。
「ザイヤくんの方向音痴がなかったらもっと早くついていたよ...」
「全然道案内にならなかったのじゃ!」
「少し目を離すとすぐ迷子になりますからね」
道中の惨状を思い出し、3人が同時にため息をつく。
ザイヤくんの方向音痴は想像絶するものだった。
「まぁその分、【深淵の闇魔法】の練習になったから良いじゃないか」
俺は微笑みながら肩をすくめた。
この旅の間、彼はザイヤから直接魔法の制御法を学び、暗殺作戦の準備を着々と進めていた。
「ザ、ザイヤ様!? まさかこんなに早く帰還するなんて!?」
門番の下級魔族が目をむき、慌てて敬礼する。
その直後、城中に響き渡る叫び声。
「た、大変だーー!! ザイヤ様が二番目にご帰還なされたー!!」
「な、なんだって!?!? あの方向音痴のザイヤ様が!?!?」
「槍の雨が降るぞ!! 総員災害に備えろ!!」
なんかとんでもなく失礼な歓迎!?
一応この人、序列2位なんだけど!?
どうやら、六魔将軍で帰還したのは俺たちで2番目の到着ということか。
それが極度の方向音痴であるザイヤくんが到着したから大騒ぎ。
1ヶ月あったとはいえ距離も魔王城とはバラバラだろうからな。
パリッ――。
空気が弾けるような音がして、閃光が門前に走った。
シュタッ!
「ザイヤ! 戻ったか!」
電光の残滓の中から、白銀の髪をなびかせた男――シンティアが現れた。
その動きは雷そのもの。視線を向けた瞬間には、すでにそこに立っている。
これがザイヤから聞かされていた固有魔法【ドルジェ】。
肉体を半雷化させ、稲妻のような速度と破壊力を得る能力。
そして、今見せたのが得意技【雷速歩法】――雷光とともに移動する神速の術。
(まさか……本当に雷の速さで動くとは……)
俺は息を呑んだ。
城門前の空気が一気に張り詰める。
そして、予期せぬ事態が――静かに幕を開けようとしていた。
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