22.あんなやつだけど仲間なんだ!
第一部完結まで連続投稿します!
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
上空からオークの群れを見下ろしていると、森の隙間に二人のボロボロの冒険者がいるのが目に入った。
「あれは…」
剣士ビリーと、いつも一緒にいる魔導士カーリン、そして拳闘士ユルゲンだ。
カーリンはユルゲンの肩を借りながら、よろよろと歩いている。
あんなところにいては、オークの餌食になるのは時間の問題だ。
「助けなきゃ!」
俺が二人の元へ飛び降りようとした瞬間、エリスお嬢様が制した。
「ちょっと待つのじゃ。なぜ、ひどい目にあわされたあやつらに助けるのじゃ?」
あんな奴ら、助ける義理はないはずというエリスお嬢様。
だが、俺は決めていた。
「俺は冒険者なんで…助けられる命は助ける!」
「まったく、やっぱりウェルはお人好しなのじゃ」
そうかもしれないな。
俺は覚悟を決め、ユルゲンとカーリンの元へ降下した。
「だ、だれだ!?」
「俺です! 大丈夫ですか!?
ユルゲンさん、カーリンさん!」
ビリーとの決闘以来、再会は初めてだ。
この三人が今の俺をどう思っているかは分からない。
でも、助けたい――それだけは確かだ。
「ここにいては危険です!
オークの大群が近くにいます!
すぐにここから離れましょう!」
しかし、二人は自力で逃げられる状態ではない。
ならば――
「俺に掴まってください!
ラーニング二つ同時発動。
空間魔法【ダブルテレポート】!」
空間魔法【ダブルテレポート】は、テレポートを二度同時に発動することで移動距離を倍増させる魔法だ。
本来のテレポートは50m移動が限界だが、これで100m移動できる。
俺はエリスお嬢様、カーリン、ユルゲンを抱え、森の外へ飛び出した。
街の安全圏まで一瞬で到達する。
「な、なんて魔法なの…」
驚愕するカーリン。
中級者向けの空間魔法を、無詠唱で二つ同時発動するなど、そうそういない技だ。
「お、お願いだ…ビリーを…助けてくれ!」
え? ビリーを!?
カーリンとユルゲンが必死に頭を下げる。
事情を聞くと、楽園の使徒ラプラスが関わっているらしい。
ビリーはその使徒について行き、カーリンとユルゲンを傷つけたという。
「私は意識を失う前にポーションで応急処置をしました。その後、光魔法【ヒール】でユルゲンの手当ても行い、一命を取り留めました」
「そのあと、身体を引きずりながらビリーを追いかけたんだが…ビリーがオークにされちまった!」
まさか、あのオークの大群はラプラスの仕業なのか。
奴らめ、何を企んでいるんだ?
「オークの群れにずっといたけど、オークたちが私たちを襲わないのは、きっとビリーのおかげよ! 私たちを斬ったのも操られたせいに違いないわ!」
頭を下げて必死に頼む二人。
「頼む!! 助けてやってくれ!!!
ビリーはまだ生きているんだ!!」
エリスお嬢様が眉をひそめる。
「何を図々しいことを言っておるのじゃ。主らがどれほどの悪行をしてきたかわかっておるのか?」
ビリーとやりたい放題してきた三人。今さら誰かに助けを求めるなど、お門違いだとエリスお嬢様は言う。
「わかってる! 罪は償う!
でも、後輩の冒険者に恥を忍んで頼む!!
あんなやつだけど仲間なんだ!!!!」
あんなやつだけど仲間なんだ。誰かにとっては憎まれる存在でも、誰かにとっては大切な仲間――。ならば助ける価値はある。
「…わかりました。助けましょう!」
これが俺の答えだ。
「何を言っておるのじゃ!?」
「エリスお嬢様、俺を気遣ってくれてありがとうございます。
でも、俺なら助けられるかもしれないんです」
「ウェル、まさか…」
「はい、闇魔法【マナドレイン】で、オークにされた原因の魔力を全部吸い上げます」
オークレベルなら、マナドレインも通用する。
これが使えるのは、俺だけだ。
ならば俺にしかできない。
俺ならビリーを助けられる。
「このお人好しが!!
どれだけ負担になるか分かっておるじゃろう!!
なんで自分をひどい目に遭わせたやつらを助けるのじゃ!?
自分を犠牲にしてまで!!!」
エリスお嬢様は怒り混じりに叫ぶ。だが、俺は止まれない。理由は、父の教えにある。
「…たぶん…父親の影響ですね…。
【優しさは取り柄だからその心で人を助けなさい】。
そう言い聞かされていました。
いじめられて引きこもっていても、取り柄があると思えたから、自殺せずに済んだんです」
父の教えが、俺をここまで導いた。引きこもり時代でも、家事を手伝うことで自分の価値を見つけた。
それが今、冒険者として人を助ける力になっている。
「だから、このお人好しは俺の個性なんです。
嫌なヤツでも、誰かにとっては良いヤツ。
だから、その人がいなくなると悲しむ人がいるんです。
この人たちのように…」
それでもどうしようもないヤツなんていくらでもいるのじゃ、と顔で言うエリスお嬢様。
わかっている。俺はもう36歳だ。人生は積んでいる。
だが、この『良い人』は生まれ変わっても消せない。
お人好しでお節介で、貧乏くじばかり引く。
でも、誰かの役に立ちたい。
誰かを助けたい。
かつては力がなく、エリスお嬢様を守れなかった。
今は力がある。
助けられる。
もう、あの時の後悔はしたくない。
「…ほんっっっっっっっっとに!!
大バカが10個つくほどのお人好しなのじゃ!!!
妾はもう知らん!!!」
バカが10個。さすがエリスお嬢様だ。
「あはは、ありがとうございます。
エリスお嬢様」
俺はカーリンとユルゲンを安全な場所に残し、再び戦場へ向かう。
オークになったビリーを探し、危険度Aランクのジェネラルオークを倒さなければ。
ゲルドさんは大丈夫だろうが、他の冒険者では太刀打ちできない。
一方その頃――
オークの大群の奥深く。
「くそ!! なんで…なんで!?!?
こんなところにオークロードがいるだよおおお!!」
オークロード――危険度Sランク
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