表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/600

22.あんなやつだけど仲間なんだ!

第一部完結まで連続投稿します!

追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!

 上空からオークの群れを見下ろしていると、森の隙間に二人のボロボロの冒険者がいるのが目に入った。


「あれは…」


 剣士ビリーと、いつも一緒にいる魔導士カーリン、そして拳闘士ユルゲンだ。

 カーリンはユルゲンの肩を借りながら、よろよろと歩いている。

 あんなところにいては、オークの餌食になるのは時間の問題だ。


「助けなきゃ!」


 俺が二人の元へ飛び降りようとした瞬間、エリスお嬢様が制した。


「ちょっと待つのじゃ。なぜ、ひどい目にあわされたあやつらに助けるのじゃ?」


 あんな奴ら、助ける義理はないはずというエリスお嬢様。

 だが、俺は決めていた。


「俺は冒険者なんで…助けられる命は助ける!」


「まったく、やっぱりウェルはお人好しなのじゃ」


 そうかもしれないな。

 俺は覚悟を決め、ユルゲンとカーリンの元へ降下した。


「だ、だれだ!?」


「俺です! 大丈夫ですか!?

 ユルゲンさん、カーリンさん!」


 ビリーとの決闘以来、再会は初めてだ。

 この三人が今の俺をどう思っているかは分からない。

 でも、助けたい――それだけは確かだ。


「ここにいては危険です!

 オークの大群が近くにいます!

 すぐにここから離れましょう!」


 しかし、二人は自力で逃げられる状態ではない。

 ならば――


「俺に掴まってください!

 ラーニング二つ同時発動。

 空間魔法【ダブルテレポート】!」


 空間魔法【ダブルテレポート】は、テレポートを二度同時に発動することで移動距離を倍増させる魔法だ。

 本来のテレポートは50m移動が限界だが、これで100m移動できる。


 俺はエリスお嬢様、カーリン、ユルゲンを抱え、森の外へ飛び出した。

 街の安全圏まで一瞬で到達する。


「な、なんて魔法なの…」


 驚愕するカーリン。

 中級者向けの空間魔法を、無詠唱で二つ同時発動するなど、そうそういない技だ。


「お、お願いだ…ビリーを…助けてくれ!」


 え? ビリーを!?


 カーリンとユルゲンが必死に頭を下げる。

 事情を聞くと、楽園の使徒ラプラスが関わっているらしい。

 ビリーはその使徒について行き、カーリンとユルゲンを傷つけたという。


「私は意識を失う前にポーションで応急処置をしました。その後、光魔法【ヒール】でユルゲンの手当ても行い、一命を取り留めました」


「そのあと、身体を引きずりながらビリーを追いかけたんだが…ビリーがオークにされちまった!」


 まさか、あのオークの大群はラプラスの仕業なのか。

 奴らめ、何を企んでいるんだ?


「オークの群れにずっといたけど、オークたちが私たちを襲わないのは、きっとビリーのおかげよ! 私たちを斬ったのも操られたせいに違いないわ!」


 頭を下げて必死に頼む二人。


「頼む!! 助けてやってくれ!!!

 ビリーはまだ生きているんだ!!」


 エリスお嬢様が眉をひそめる。


「何を図々しいことを言っておるのじゃ。主らがどれほどの悪行をしてきたかわかっておるのか?」


 ビリーとやりたい放題してきた三人。今さら誰かに助けを求めるなど、お門違いだとエリスお嬢様は言う。


「わかってる! 罪は償う!

 でも、後輩の冒険者に恥を忍んで頼む!!

 あんなやつだけど仲間なんだ!!!!」


 あんなやつだけど仲間なんだ。誰かにとっては憎まれる存在でも、誰かにとっては大切な仲間――。ならば助ける価値はある。


「…わかりました。助けましょう!」


 これが俺の答えだ。


「何を言っておるのじゃ!?」


「エリスお嬢様、俺を気遣ってくれてありがとうございます。

 でも、俺なら助けられるかもしれないんです」


「ウェル、まさか…」


「はい、闇魔法【マナドレイン】で、オークにされた原因の魔力を全部吸い上げます」


 オークレベルなら、マナドレインも通用する。

 これが使えるのは、俺だけだ。

 ならば俺にしかできない。

 俺ならビリーを助けられる。


「このお人好しが!!

 どれだけ負担になるか分かっておるじゃろう!!

 なんで自分をひどい目に遭わせたやつらを助けるのじゃ!?

 自分を犠牲にしてまで!!!」


 エリスお嬢様は怒り混じりに叫ぶ。だが、俺は止まれない。理由は、父の教えにある。


「…たぶん…父親の影響ですね…。

 【優しさは取り柄だからその心で人を助けなさい】。

 そう言い聞かされていました。

 いじめられて引きこもっていても、取り柄があると思えたから、自殺せずに済んだんです」


 父の教えが、俺をここまで導いた。引きこもり時代でも、家事を手伝うことで自分の価値を見つけた。

 それが今、冒険者として人を助ける力になっている。


「だから、このお人好しは俺の個性なんです。

 嫌なヤツでも、誰かにとっては良いヤツ。

 だから、その人がいなくなると悲しむ人がいるんです。

 この人たちのように…」


 それでもどうしようもないヤツなんていくらでもいるのじゃ、と顔で言うエリスお嬢様。

 わかっている。俺はもう36歳だ。人生は積んでいる。


 だが、この『良い人』は生まれ変わっても消せない。

 お人好しでお節介で、貧乏くじばかり引く。

 でも、誰かの役に立ちたい。

 誰かを助けたい。


 かつては力がなく、エリスお嬢様を守れなかった。

 今は力がある。

 助けられる。

 もう、あの時の後悔はしたくない。


「…ほんっっっっっっっっとに!!

 大バカが10個つくほどのお人好しなのじゃ!!!

 妾はもう知らん!!!」


 バカが10個。さすがエリスお嬢様だ。


「あはは、ありがとうございます。

 エリスお嬢様」


 俺はカーリンとユルゲンを安全な場所に残し、再び戦場へ向かう。

 オークになったビリーを探し、危険度Aランクのジェネラルオークを倒さなければ。

 ゲルドさんは大丈夫だろうが、他の冒険者では太刀打ちできない。


 一方その頃――


 オークの大群の奥深く。


「くそ!! なんで…なんで!?!?

 こんなところにオークロードがいるだよおおお!!」


 オークロード――危険度Sランク

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


と思ったら


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ