202.新たな宿敵
第12章完結まで連続投稿します!
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
ここは魔族たちの王が住まう巨大な黒城――魔王城。
吹き抜けの広間には冷たい霧が流れ、巨大な円卓を囲むように六つの影が座していた。
六魔将軍――魔族軍の中枢にして、王に次ぐ最強の六人。
その全員が今、同じ場に揃っていた。
「独断で飛び出して…しかもやられて帰ってくるなんて六魔将軍の座を剥奪したほうがいいんじゃねぇのか?」
不機嫌そうに椅子へ背を預けた赤髪の男が吐き捨てるように言う。
六魔将軍・序列3位――炎魔の【ラヴァ】。
燃え立つような髪と、瞳に宿る灼熱の光。短気で荒々しいが、その言葉の奥には仲間への苛立ちよりも焦りが見えた。
「…」
黙して何も言わぬのは、序列6位――風刃の【ヴァン】。
その表情には怒りも後悔も見せず、ただじっとテーブルの一点を見つめている。
「いやいや。魔族は人族より人手不足だから嫌ですよ~!」
軽い調子で口を挟むのは、序列5位――氷姫の【ヒオラ】。
氷のように透き通った青髪は長く、片目を前髪で隠している。黒いゴシックドレスに包まれた身体は華奢で、声は鈴のように儚い。
その性格はラヴァとは正反対、気弱で臆病――だが、時折暴走する妄想癖を持つ。
「おで、知ってる。ラヴァ、優しい。ヴァンに、傷ついた身体を癒すために、休め、って言ってる。ツンデレ」
低く響く声で言ったのは、序列4位――地滅の【ロドルガ】。
岩のような肌を持ち、丸太のような腕を組む大男。だが喋り方はどこか幼い。
ラヴァの心情をずばり暴露され、周囲の空気が一瞬止まる。
「誰がツンデレだ!」
顔を真っ赤にしながら立ち上がるラヴァ。椅子が軋む音が響く。
「ラヴァくんの顔が赤く!? つまり、ここから愛が芽生えて男と男の…ぐへへ」
ヒオラが頬を押さえて、別の意味で顔を紅潮させる。
完全に腐った妄想の世界に入り込んでいた。
「「ねぇよ!!!」」
ヴァンとラヴァが同時にツッコむ。円卓の上に重い沈黙と軽い笑いが混じる。
「まぁ、ヴァンは強いから抜けて欲しくないね。それよりもヴァンを圧倒した犬族の少年の話をしようか」
静かに場を戻したのは、序列2位――深淵の【ザイヤ】。
黒の髪を垂らし、紫色の瞳を持つ小柄な少年。
闇が彼の周囲にゆらめき、空気そのものを重く変える。
「今回集まったのは、他ならぬその犬族と仲間たちの話だ」
重々しく声を響かせたのは、円卓の最奥に座る序列1位――天雷の【シンティア】。
白銀の髪を持ち、王族のような気品を漂わせる青年。
その背後には稲妻のような魔力の残光がほのかに揺れ、まるで玉座に座る王のような風格を放っていた。
彼は魔王に代わって魔族を統べる実質的な支配者である。
「ヴァンが連れていった者たちはなかなかの精鋭だ。それが1VS1で人族にやられるとは前代未聞だぞ」
シンティアの声が広間に反響する。
ヒオラが息を呑み、ロドルガが拳を握る。ラヴァは歯を食いしばり、ヴァンは沈黙を貫いた。
ザイヤとシンティアは視線を交わす。
その眼差しの奥には、焦りよりも「興味」があった。
犬族の少年――ウェル・ベルク。
ヴァンを圧倒した存在。
その力が本当に人族の枠を超えているなら――魔族にとって、彼は脅威であり、同時に価値ある存在でもある。
シンティアは静かに椅子の肘掛けに手を置き、低く呟いた。
――こうして、ウェルたちは魔族の完全な標的となったのだった。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当にうれしいです。
何卒よろしくお願いいたします。




