20.復讐を誓う追放した冒険者
第一部完結まで連続投稿します!
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
ここは、とある暗く湿った洞窟の奥。
足元の岩は水滴で濡れ、薄暗い光が壁に反射してわずかに揺れている。
空気はひんやりと冷たく、湿った土の匂いが漂う中、B級冒険者のパーティーが険しい表情で進んでいた。
「くそ! こんなはずじゃないんだ!!」
剣士ビリーが苛立ちを露わにする。
彼はかつてウェルに敗北し、街での罰ゲームとして全裸逆立ちで一周という屈辱を味わった。
その影響で、領主である両親からも勘当され、精神は不安定。クエストは失敗続きとなっていた。
リーダーでありながら、焦燥に駆られるビリー。
その横で、巨乳美女だが目つきの鋭い魔導士カーリンが慎重に声をかける。
「落ち着いてよ、ビリー! また失敗なんてイヤよ!」
さらに、スキンヘッドで筋骨隆々の拳闘士ユルゲンも声を荒げる。
「冷静になれ! あんたはリーダーだろ!」
「うるせえ!! オークの巣の排除ぐらいで俺が殺られるか!!!」
洞窟の奥から、低いうなり声が聞こえる。
オーク――豚のような魔物の一種。危険度はCランクだが、巣を根絶するためにはBランク任務相当の戦力が必要だ。
「おやおや、何やらお悩みがありますかな?」
突然、背後から誰かの声が響く。
振り返ると、全身黒いローブにフードを被った男が、影のように立っていた。
「気味の悪い。何者ですか?」
カーリンが警戒する。
「私は楽園の使徒【ラプラス】の遣いです。
この世界を救い、あなた方をも救う――善良なる組織の者です」
「自分で善良とか言うやつにろくな奴はいねぇよ!」
ユルゲンは眉をひそめ、即座に否定した。
「信じてもらえぬかもしれません。
しかし、私にはわかります。そちらの剣士さん――」
「あ? 俺か!?」
「あなたの心は怒りと不安に満ちています。
いったい何があったのでしょうか。
私はあなたに力を与え、救うことができます」
謎の男はフードからチラリと覗く目でビリーを見据える。
その視線に触れた瞬間、ビリーの瞳は虚ろになっていった。
「ち…か…ら…」
「おいビリー! こんな怪しいやつの話なんか聞くな! さっさとクエスト達成しようぜ!」
ユルゲンが肩を掴むが、ビリーの心は完全に動揺していた。
「力! 力だ…そうだ、力さえあれば!」
「ビリー?」
「力! 力!! 力!!!
力さえあれば、あのガキに負けることはなかった!
力さえあれば、俺は一流の冒険者になれるんだ!!」
洞窟内に叫び声が響き渡る。
ビリーは力さえあれば今の惨めな状況を全て打開できると信じているのだ。
「そうです! 力です!!
望むなら力を与えましょう」
謎の男が声を張ると、ビリーの表情はますます狂気に染まる。
ユルゲンが肩を掴んだ瞬間――
ズバ! ズバ!
ビリーは仲間に剣を振るった。
「ぐはっ!」
「がっ!」
二人は血を流して倒れ込む。
「邪魔するなぁ!!! 俺の邪魔をする者は全て敵だ!!!」
狂った叫びと共に、ビリーは剣を振り回す。
「くへひゃひゃひゃひゃ!! ひゃははははっ!!」
その光景に謎の男は満足げに頷いた。
「素晴らしい! あなたには才能があります。
これほど神の恩恵を授けられるとは――。
さあ、奥へ参りましょう。
あなたに力を与えます」
「早く!! 早く力を!!!
あのガキをぶっ殺してやる!!!」
謎の男とビリーは洞窟の奥へ進んでいった。
「うぅ…ビリー…」
ユルゲンは微かな意識の中で二人を見つめ、やがて気を失った。
一方その頃――
グリーンドラゴン討伐から2週間。
俺はギルドの掲示板を眺めて、次のクエストを探していた。
「うーん、A級冒険者向けのクエストはないなぁ」
平和の証とも言える状況だ。
俺はギルド内で唯一のA級冒険者。
過去のいざこざや突然の決闘も、今は全て収まり、空気は落ち着いている。
焦る必要もない。
宿に泊まれる報酬は一年分あるのだ。
そうだ、前世で憧れたアレをやってみるか――
【【真っ昼間に酒を飲む!!】】
「よーし! ギルドのカウンターへGO!」
ギルドの酒場は木の香りと麦酒の匂いが混ざる、心地よい空間だ。
俺はカウンターに駆け寄る。
「おねーちゃん! エールを一つ!」
エール――地球でいうところのビールだ。
昼間から飲むという背徳感が、心をワクワクさせる。
「ボクー? 子供はまだお酒を飲んじゃダメなんだぞ?」
ガーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
しまったーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
俺の姿は子供だったーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
中身36歳なのに酒が飲めないのかーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「残念じゃったのう! お子様はジュースでも飲んでおるのじゃ。そこの者、妾にワインを持ってくるのじゃ」
「…お嬢ちゃんもまだ早いわよ。お酒は大人になってからね」
「妾は大人じゃーーー!!!!!!」
笑顔で未成年を諭すカウンターのお姉さん。やれやれ、しばらく酒はおあずけだ。
その瞬間――
ガタン!
ギルドの扉が勢いよく開く。
「た、大変だ!!!
オークの大群がこっちに向かって来ているぞ!」
緊急事態発生か!?
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