02.悪役令嬢と美人巨乳猫耳メイド
第一部完結まで連続投稿します!
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
あまりにも神秘的で美しい光景に、俺は数秒間だけ立ち止まって心を奪われてしまった。
だが、このまま見つかれば覗きと誤解される――そう直感して、踵を返す。
直ぐにここを立ち去らねば……そう思った矢先だった。
パキッ
乾いた音が森に響く。
……枝を踏んでしまった。
ベタかよ!!!!
心の中で叫んだが、もう遅い。
「誰じゃ!」
湖の方から鋭い声が飛んできた。
間違いない、水浴びしていた少女の声だ。
俺は反射的に背を向け、全力で駆け出した。
はぁ…はぁ……
「こ、ここまで来れば大丈夫かな?」
荒い息を整えながら、ようやくテントに戻ってきた。
本来は喉の渇きを癒やすために湖へ行ったのに、全力疾走のせいで余計に体力を消耗してしまった。
とはいえ、どうしようもない。朝になってから水を汲みに行けばいい――
そう思ってテントに入ろうとした、その瞬間。
ゲシッ!!!
「ほばぅ!?」
後頭部に強烈な衝撃。
あまりの痛みに、人生で最も奇妙な声が勝手に漏れた。
ドサッ
俺はそのままテントの中に吹っ飛ばされる。
「いてて…」
呻きながら振り返ると、そこには――着替えを終えた、あの少女が立っていた。
「覗きとは感心せんなぁ。この凡人」
彼女の眉がピクリと動き、鋭い眼差しが俺を射抜く。
さっき湖で見た神秘的な天使のような姿はどこへやら。
目の前にいるのは、怒りを露わにした気の強い少女だった。
「す、すみません…覗くつもりでは…」
本当はただ水を飲みに行っただけ。
そう言いかけた俺の言葉を、彼女の叫びがかき消す。
「問答無用!!!!」
ゲシッ!!!
「アベシ!!!」
鋭い回し蹴りが脇腹を抉る。
……いや、感心している場合じゃない!
これ以上受けたら本当に命が危ない。
「ま、待ってくれ!! 俺は喉が乾いただけで――」
「理由はどうあれ妾の裸体を観たからにはタダでは帰さぬぞ?」
彼女の声音には、揺るぎない怒気と威圧がこもっていた。
……どうしたものか。
ふと足元に視線を落とすと、少女は裸足だった。
いや、それどころか――
少し、浮いている!?
「なんじゃ? 浮いてるのが気になるのか?」
「気になる! というより凄いよ! 魔法が使えるんだね!」
異世界に来て二年、俺には魔法の才能が一切ない。
だからこそ、目の前の光景はただただ驚異的に思えた。
「ま、妾からすれば朝飯前じゃ!」
年端もいかないように見える彼女が「妾」と名乗る姿に違和感を覚えつつも、俺は息を呑む。
「…話をはぐらかしたとは思ってないであろうな?」
またも鋭い視線。
その眼差しに、俺の罪悪感がえぐられる。
不可抗力とはいえ、覗いてしまったのは事実。
何か償いをしなくては――そう思っていると、彼女が先に口を開いた。
「お主…名前は何という?」
そういえば、名乗っていなかったな。
「セーイチ…川端誠一…です…」
「川端誠一……お主は鎖ノ国から来たのか?」
「...!? 鎖ノ国…とは?」
二年暮らしているが、冒険者として街の近辺しか知らない。
その名を聞いたのは初めてだった。
「…そうか…知らぬか…」
彼女の表情が変わる。
嘲笑を浮かべていた顔は消え、思案げな瞳が遠くを見つめる。
「……ふむ、それならお主の処遇は…」
ごくり、と喉が鳴る。
「妾に仕えるのじゃ」
「…え?」
あまりに予想外の言葉に、思わず声が漏れた。
「聞こえなかったのか? お主は妾の元でしばらくタダ働きで仕えるのじゃ。もちろん衣食住ぐらいは用意してやるがのぅ」
「ありがとうございます!!!!!!!!!」
思わず土下座する勢いで叫んでしまった。
衣食住さえあれば、もう何もいらない。
冒険よりもよほど天職じゃないか。
「いきなりデカい声を出すでないわ! びっくりするではないか!」
……早速怒られた。
「さて、面白いオモチャが手に入ったから屋敷に戻ろうかのう」
オモチャって俺のことだよな……
やばい、雲行きが怪しい。
とはいえ今はこれしかない。
よし、変な人体実験とかされそうになったら逃げよう!
「そういえば君の名前は…」
ゲシッ!!!
「ふべぼ!?」
また蹴られてしまった。
「主に向かっていう態度ではないな? もっと言葉を選んだらどうじゃ?」
うぅ…ごもっとも。
少女とはいえ主だ。
「あなた様のお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「やればできるではないか!」
よし! 褒められた。
少女でも何度も蹴られたりしたけど、やはり褒められるのは嬉しい。
「妾の名前はエリス。エリス・グランベルじゃ」
エリス……
いい名前だ。美少女に相応しい。
「よろしくお願い致します、エリス様。では、屋敷までご案内よろしくお願い致します」
「任せるのじゃ!」
そして、いつの間にか日が登り、朝日がやってきた。
まるで光が新しい人生を祝福してくれるようだ。
エリスの屋敷に案内されて、門の前には1人の女性が立っていた。
「お帰りなさいませ。お嬢様」
美人猫耳メイド!!!
そして胸がデカ……ゴホン!
メイド服なのに生乳の谷間が見れるとは……
「…私の胸に視線を送るそちらの殿方は…?」
あらヤダ鋭い!!!
「…この覗きドスケベ男は妾の新しいオモチャじゃ」
あぁ…ドスケベという新しいレッテルが貼られてしまった。
違うぞ!健全なだけだぞ!
しかも童貞なんだから推定Gカップの谷間を見るのはしょうがないだろ!
そして、俺はやはりオモチャか。
「あぁ、かわいそうに…お嬢様のオモチャですか。では、お嬢様に仕える執事としてご案内致しますね」
オモチャ=執事で通じるのか!
かわいそうって……一体何されるんだ……
もしかしてエリスはいわゆる悪役令嬢!?
ちょっと先が不安だが切り替えねば!
第一印象悪くても健全な挨拶で挽回だ!
「コホン、先程は失礼致しました。私の名前はセーイチと申します。この度はエリスお嬢様の元にお仕えすることになりました。初めてなことが多く、至らぬ点が多々あるとは思いますが、何卒ご教授よろしくお願い致します」
「…あいさつだけはまともですね」
あいさつだけは!!!
塩対応!!!
美人猫耳巨乳メイドさんの塩対応!!!
しかし、悪くない!!!
「ではお仕事をご案内しますね」
「…よろしくお願い致します」
俺は態度を崩さず対応した。
猫耳メイドさんの名前はココ。
なんて可愛らしい名前なんだ。
そして、仕事内容は屋敷の掃除や給仕。お嬢様のスケジュール管理や身の回りの世話。
なるほど。執事兼家政婦といった感じか。
というか執事なんてこの世界じゃ地位が高い職業なのに俺に務まるのか?
いや、むしろやってもいいのか?
そのことをココさんに聞いてみた。
「構いませんよ。お嬢様の決めたことですし。お嬢様はワガママなのですぐにお辞める人が多いんですよね。今までの最高記録は最短24時間でお辞めになった方もいます」
雲行きが少し怪しいと思っていたら、漆黒の闇が目の前に現れた。
俺、大丈夫かなぁ。
というかエリスお嬢様ってどんだけワガママなんだ……
人がいない理由はすべてお嬢様のワガママにたどりつく。
もしかしてではなく悪役令嬢間違いなしだな。
「…よろしくお願い致します」
俺は覚悟を決めた返事をすると、ココさんは俺の足元から頭まで視線を送るなり、嫌な顔をしながら言い放った。
「…とりあえず、汚物と見間違えるほど、ものすごく汚いのでとっとと身体を洗って下さいね」
心臓をくり抜かれるほどのクリティカルヒット!!
セーイチ選手!!
絶命寸前!!!!
しかし意外と悪くない!!!!!!!
……まぁ、風呂なんて街にはないし、水浴びしかできないし、身体を洗うのが面倒だったからほとんど風呂に入れなかったんだよな。
大浴場に入って着替えを用意してもらい、休む間もなく、仕事を始めるのだった。
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