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197/620

197.上級魔族の本気

追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!

 瓦礫の渦の中、空気が熱を帯びていた。粉塵で霞む視界の向こう、城壁の断片がまだ硝煙をあげた。


「魔法剣【爆炎斬】!!」


 剣先が赤く燃え、翼のように広がる炎が爆ぜた。


「ぐあ!? 爆発する剣だと!?」


 アーサー、エリス、リーズ、ココの四人は互いに息を合わせて中級魔族を打ち倒した。


「なかなかの強敵でしたわね」

「防御に専念したからのう。手間がかかるのは当然じゃ」


 勝利の余韻が冷めぬ間にも、風が突然うなる。


「ハァァァァァ!!!」


 ヴァンの魔力が渦を巻き、周囲の空気に黒い筋が走る。魔力の密度が見る見る高まり、石畳が震えた。


 途中で倒れた中級魔族の者が、苦しげに声を絞り出す。


「ぐへへ…ヴァン様がついに本気になった! あのガキ…死んだぜ…」


 視界を遮る発言にもかかわらず、ヴァンの力は広がる一方だった。


「お前ほどの実力者なら空も飛べるだろう。空中に来い!」


 いや、実力と空が飛べるとは関係ないと思うのだが…。

 2000年前の文化から来るのか、魔族の考えなのか…。


「まぁ…飛べるんだけどな!【エアウォーク】!!」


 風に乗って、俺は空へ跳んだ。魔導霊気と共鳴するエアウォークは、地を蹴る瞬間に刃のような速度を与えた。


「敬意を払って全力同士で相手になろう。地上が気になって全力出せないようだからな」



 ヴァンは静かに構える。周囲の民衆を危険に晒さないための配慮だという。だが皮肉にも、そうした「誇り」がこの戦を苛烈にする。


「わかっているなら一般人を攻撃すれば隙ができるんじゃないのか?」


 俺は意地悪く問い返した。相手の誠実さを試すような問いだ。


「タイマンでの勝負に人族のようなずる賢いことはせん! 上級魔族の誇りにかけてな!!」


 ヴァンの声は冷たく響く。過去の憎悪がその口調に塗り重なっている。


「それに犬族にはなんの恨みはないし、お前は部外者だ。1人の戦士としてその実力を認めて俺に勝ったら話ぐらい聞いてやろう!」


 それは、思いがけない条件だった。だがこの時代の常識がどうであれ、交渉の余地が生まれたことには違いない。


「魔力を最大まで高めた状態で魔法を放つと威力が段違いになる。俺を殺すつもりで来ないと死ぬぞ!」


 ヴァンは静かに、しかし確実に宣告した。魔力の渦が膨らみ、周囲の風景を歪める。


「超級風魔法【テンペスト・レイ】」


 その一声と同時に、細く鋭い風の光線が放たれた。光線は空間を切り裂くかのような速さでこちらへ迫る。


 ズギューン!!!


「うわっと!?」


 回避のために反転。魔導霊気でなければ回避すら叶わない殺気だ。


「よくかわしたな! 人族なら回避防御不可能の魔法だというのに」


 ヴァンの瞳が冷たく光る。だがこちらも負けてはいられない。

 戦いはもう言葉の域を超え、互いの全てを削り合うぶつかり合いへと変わっていった。

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