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19.女の子に俺はなる!

第一部完結まで連続投稿します!

追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!

 ここは街の外れに広がる静かな森。

 昼間は木漏れ日が差し込み、小鳥のさえずりが心地よい場所だが、夜になると森全体が漆黒の闇に包まれる。

 魔物はほとんどいない、安全地帯として冒険者たちにも知られている場所だ。


 そんな森の一角で、中身は36歳の童貞美少年、ワンコことウェルが、誰にも見られないようにこそこそと何かをしていた。


「よし! ラーニングの実験を開始しよう!」


 月明かりに照らされた森の空気はひんやりとしており、木々の間を吹き抜ける風が心地よく肌を撫でる。

 ウェルは深呼吸し、ラーニングの更なる可能性を探るべく集中を高めた。


「変身する固有魔法【メタモルフォーゼ】。

 俺はこの魔法を使って…」


 両手の拳を握りしめ、夜空に向かって高々に掲げる。

 静かな森に、彼の決意がこだまするようだ。


「女の子になる!!!!!!!!!!!!」


 童貞の夢。男なら一度は抱く願望。

 女の子になることで、未知の世界を体感したい――。


 なぜ男は女の子になりたいのか?

 純粋な性欲ゆえだ。


 なぜ童貞は女の子になりたいのか?

 経験がないゆえの好奇心だ。


 異論は認めない。これは紛れもない俺の価値観だ。


 男なら一度は思ったことがあるはずだ。

 一度でいい、女の子の体を体験してみたいと。

 現実世界では手術やバ美肉で叶えることもできるが、この世界では魔法でリスクなしに試せる。

 しかも、手触りはシリコンではない。本物に近い感覚があるはずだ。


「地球の男子諸君――!!

 俺は代表して、未知の体験を味わってくる!!!!!」


 森の中で、ウェルの体を光が包む。

 彼は目を閉じ、イメージを細部まで固める。


 おっぱいの形、花園の形、肌の質感……。


 しかし――。


「ん? 身体の質感!?

 おっぱいってどんな感触だ?」


 触ったことがない。何もかも未知だ。

 魔法を一旦中止し、膝をついて森の土の上に倒れ込む。


「そうだ…俺は童貞。

 経験がないから触感がわからない…」


 焦燥感が胸を締め付ける。


「いや、まだだ!!」


 ウェルは地球で培ったありとあらゆる情報を頭脳に叩き込む。

 スーパーコンピュータ並みの処理能力で、最も近い触感を再現する。


 来た――!

 イメージは限界まで固まり、手が触れたときの感覚が脳内で再現される。


 しかし……。


 エリスお嬢様、ココさん、ミリアさん――。

 この三人の記憶が強すぎて、どうしても彼女たちにしか変身できない!


「あああああぁぁぁあああああぁぁぁ!!!!!!!!!」


 罪悪感が全身を貫く。

 童貞ウェル、ここで敗北か――!?


 しかし、諦めるわけにはいかない。

 全世界の童貞たちよ、力を分けてくれ――!


 森の闇の中、ウェルの胸に元気が湧き上がる。

 これまでの人生、童貞でいた意味はこの瞬間のためにあったのだ!


「固有魔法【メタモルフォーゼ】!!」


 再び体が光に包まれる。

 光が収まり、鏡で姿を確認すると――。


 間違いない。女の子の体だ。

 小柄で柔らかな体つき、肌の感触もまさに女の子。


 小さな胸を触り、手鏡で確認する。

 まだ精通していないが、それでも感触は想像以上だ。


「ふっふっふ…いざ! 禁断の花園へ!」


 ズボンを下ろす瞬間、期待と緊張が森に漂う。


 しかし――。


 花園が、存在しない。


「なんだと!? どういうことだ!?

 異世界転生してから2年間、一度も見ていない……!?」


 叫び声が森に響き渡る。

 全世界の童貞たちよ、すまない――。

 夢はここで砕け散った。


 だが諦めはしない。

 いつか、必ず夢を叶えてやる――!


 気を取り直し、ウェルはズボンを上げ、森を抜けて宿に戻る準備をした。


 その時――。


「誰に見つからないようにじゃ?」


「ブ、ブロバァハァ!?!?!?!」


 振り返ると、そこにはエリスお嬢様が立っていた。

 36歳童貞、人生最大の動揺により元の姿に戻る。


「妾をみくびるでない。

 宿をこっそり出たことくらい気づくわ!

 まさか妾の姿に変身してエッチなことをしようとは…」


「ち、違う!!! これはラーニングのトレーニングで、男の探究心と夢と希望を叶える大切な…」


 しかしエリスお嬢様の飛び蹴りがウェルの顔面に直撃する。


「へぶし!?」


 吹き飛ぶウェル。力強い蹴りに驚愕するも、心は折れない。


 次はない覚悟を胸に、ウェルは宿屋に戻る。


 果たして、漢ウェルの夢は――叶うのか。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


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