177.二千年前にタイムスリップ
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
冷たい風が頬をかすめた。
戦闘の余波で舞い上がった砂埃が、まだ空気の中を漂っている。
「お、お兄ちゃん…大丈夫?」
「主~無理するなよ~」
ブランとレナが、まったく違うテンションでよろける俺に声をかけてくる。
体の芯が抜け落ちたように重い。
魔導霊気を使い切ったせいで、魔力も気も霊力もほぼ空っぽだ。
時間の経過とともにわずかに力が戻り、ようやく自分の足で立てるようになった俺は、サヤとテンちゃんと共に近くの魔導士たちのもとへ歩み寄った。
「何にしても助かった。我々だけでは下級魔族とはいえ相手にできなかった」
そう言って、先ほど魔族の首を斬り落とした魔導士がフードを取る。
淡い金髪と、鋭い眼差しが露わになった。
なかなかのイケメンだ。
「私はギザール。人族の魔道騎士団124番隊の分隊長だ」
人族の魔道騎士団――!?
聞いたこともない名前だ。
というか、そもそもここはどこなんだ?
俺は混乱する頭を押さえながら、率直に問いかけた。
「いえ、ところでここはどこですか?」
「ここはスカラオゴ王国とオーブウロス王国の間にある荒地だ。魔族とはここでよく戦闘している」
「スカラオゴ王国とオーブウロス王国!?」
突然、リーズが叫んだ。
彼女の瞳が大きく見開かれ、震えている。
「リ、リーズ?」
驚いて声をかける俺を無視して、リーズはギザールに歩み寄った。
「お聞きしたいのですが…」
緊迫した空気の中、リーズが低い声でギザールに何かを尋ねている。
その会話の内容までは聞き取れない。
だが前世の感覚で言えば、「今は西暦何年ですか?」と尋ねているような雰囲気だった。
そして数秒後、リーズの顔が蒼白になる。
「大変ですわ! いったん集まってくださいませ!」
その声に、俺、エリスお嬢様、テンちゃん、サヤ、ココさん、ブラン、レナが慌てて集まり、身を寄せ合ってヒソヒソと会議を始めた。
「わたくしたち【二千年前の時代】に遡ってしまっていますわ!!!」
「二千年前!?!?!?」
全員が叫び、空気が一瞬止まる。
耳の奥で自分の鼓動がやけにうるさく響いた。
「二千年前ってあの二千年前!?」
思わず間抜けな声を出してしまう。
理解が追いつかない。
「スカラオゴ王国とオーブウロス王国は二千年前に滅んだ王国ですわ! だからわたくしたちの時代には存在致しませんわ!!」
リーズの言葉が脳内で反響する。
つまり――
異空間に放り込まれたと思ったら、俺たちは過去に飛ばされたというのか!?
二千年前の世界……。
どうやって帰ればいいんだ……?
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