172.ひとりじゃない
第10章完結まで連続投稿します!
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
「ファニー!!!目を覚ませ!!!!」
ズガガガガガガガ!!!
閃光のような斬撃が空間を切り裂き、風が吹き荒れる。俺は全身の筋肉を軋ませながら、ジャックを守る多重魔法障壁へ猛攻を仕掛けていた。
硬質な膜が何層にも重なり、衝撃波を弾き返すたびに大地が震える。
どうしたらジャックとファニーを引き離せるのか――その答えを探しながら戦っていた。
可能性があるのは、俺の【ラーニング】で魔力の構造を解析し、【サーチ】によって魔族の魔力とファニー自身の魔力を識別し、分断すること。
だがそれを実行するには、ファニーが自ら目を覚まさなければならない。完全に融合してしまっている今、彼女の意識が戻らない限り、どうにもできないのだ。
「ぐおおお!?」
ジャックの体がよろめく。俺の攻撃が魔法発動の隙を許さない。
ジャックの武器は魔法のみ。だからこそ、間合いを詰めて接近戦で押し切るしかない。
村を巻き込むような大規模魔法を撃たせるわけにはいかない。
「うぉぉおおおおお!!!!」
ズガガガガガガガ!!!!
「ファニー!! 聞こえるか!?」
振り抜いた刃が障壁を弾き飛ばす中、俺は必死に叫ぶ。
その声が届くかどうかもわからない。だが、それでも叫ばずにはいられなかった。
「君はひとりじゃない!!!」
そう、君はひとりじゃない。
今はジャックの呪縛のせいで、村の人々に恐れられる存在となってしまった。
だが、本当は違うんだ。
「何もできなくてクヨクヨしていた時もあったんだろう!?
頼りないと思われることもあっただろう!?
でもそれらは君のことを心配していたんだ!!
今は何もできなくてもいつか立派になるって信じているんだ!!!」
この村に来たとき、俺は村人たちの噂を耳にした。
【あの子は優しすぎる。領主には向いていない】と。
けれどそれは、彼女の優しさを知っているからこその言葉だった。
助け合えば、きっと素晴らしい領主になる――そう信じていたのだ。
だが、心が弱っているときにそんな言葉を聞けば、「向いていない」という部分だけが心に刺さってしまう。
「ひっひっひ!! 何を言ってもムダだ!!!
コイツは落ちこぼれの出来損ないだからな!!
お前にコイツの何がわかるんだ!?!?」
「わかる!!! 俺もそうだったからな!!」
胸の奥が熱くなる。
前世の記憶が脳裏をよぎる。
俺も落ちこぼれだった。
虐められ、笑われ、誰も助けてくれないと思っていた。
でも――手を伸ばせば、両親がそこにいた。
泣いても、怒っても、見捨てずに手を差し伸べてくれた。
君にもいる。
君を見捨てない人たちが。
村のみんなは、君のことを信じているんだ。
「手を差し伸べるんだ!! ファニー!!!」
全力で声を張り上げる。
焦げるような魔力の波が押し寄せ、体が軋む。
それでも――
「ムダだ!!!」
ジャックが両腕を天に掲げた。
「闇魔法【デッドワールド】!!!」
瞬間、空間そのものが黒い渦に飲み込まれる。
ジャックの体は黒球に包まれ、周囲の光が吸い込まれていく。
風が止み、音が消えた。
沈黙の中、地面がじわりと歪む。
その黒き球体に向かって、俺は叫んだ。
届いてくれ――ファニーの心へ。
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