159.グラサン貴族
第10章完結まで連続投稿します!
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
俺たちは貴族のクエストを受けに来たはずだった。
そして、今いるのは貴族の屋敷のはずだった。
しかし、扉の向こうから現れたのは、アロハシャツにサングラスという、とても貴族には見えない少女だった。
肩まで届く金髪が風になびき、瞳はまぶしく光を反射している。
見たところ十五歳前後だろうか。
「え…えっと…侯爵【ファニー・パース】様はいらっしゃいますか?」
俺は半信半疑で尋ねる。
この人が貴族であるはずがない。
しかし、その答えが衝撃的だった。
「きみーーーーー!!! ついてるね!!!! 僕が侯爵【ファニー・パース】だ!!よろしくな!!!!」
マジかよ……。
屋敷に漂う重厚な空気と、豪奢なシャンデリアの光、そこに突如飛び込んできた南国ノリの貴族。
俺たちは思わず立ち尽くす。
「…」
女子たちはドン引きで口を開けている。
お嬢様すら眉をひそめる状況だ。
「そ…そうですか…」
俺はたどたどしく答えるしかなかった。
これでクエストのランクが別の意味で上がった気がした。
「さて! 外で立ち話もなんだなら屋敷入ろうか!! あと堅苦しいのは苦手だから呼び捨てで構わないよ!!!」
全員が耳を疑うテンション。
貴族とは思えないほどの開放感と陽気さ。
エリスお嬢様は例外として、通常女性は爵位を持つことはないはずだ。
何か事情があるに違いない。
そして俺たちは屋敷内へと招かれた。
だが、そこにあったのは誰もいない広間。
床には薄く埃が積もり、陽光が高い窓から差し込んで床に斑模様を描いている。
「誰もいないアルね…」
テンちゃんが周囲をキョロキョロ見回す。
貴族の屋敷にしては使用人の気配もなく、静まり返っている。
「気になるかーーい!? 屋敷に誰もいないことを!」
ファニーは突然、場の空気を切り裂くような声をあげる。
それでも笑顔を絶やさず、陽光の中でますます輝いて見える。
「実は僕、1年前に両親を亡くしているんだ!」
過酷な事実なのに、なぜか明るく語るファニー。
先ほどよりも少し落ち着いた印象だが、明るさは健在だ。
「両親が亡くなったというのに、なぜそんなに明るいのじゃ?」
全員が疑問を抱く中、エリスお嬢様が問う。
境遇としては似ているが、エリスは異世界転生者であり、両親への愛着はない。
ファニーの方がずっと辛いはずだ。
「…僕の両親の教えさ。【笑顔は正義】!! 幸せとは今ある幸せに気づくこと。だからどんなに辛い時でも笑顔を絶やさないで、少しでも今の幸せを見つめて笑って生きろと育てられたのさ」
俺たちは思わず頷く。
良い教えだ。
「最初は泣いたよ…。ずっと塞ぎ込んでいたさ。でも、村のみんなは優しいし、友達もいたから! だから泣いてなんかいられない! 仮で今は爵位があるけど、また復興してやるんだ!! 僕を育ててくれた両親のために!」
第一印象は衝撃的だったが、この信念を聞いたことで、ファニーに対する印象がだいぶ変わった。
「さて、魔族に関わっているということで来てくれたみたいだけど、正確には魔族と関わっているのは、この近くにいるとウワサされている闇ギルドなんだ!! だからその闇ギルドが何か知っているんじゃないか?」
ファニーの笑顔と情熱に圧倒されながらも、俺たちは新たな任務の核心に触れようとしていた。
――――――――――――――――――――――
そして、ファニーの情報を元に俺たちは闇ギルドを探し出し、討伐することになった。
あの時はまだ、本当の敵がすぐそばに潜んでいるとは、誰も知らなかったのだった。
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