14.楽園の使徒【ラプラス】
第一部完結まで連続投稿します!
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
先日、村に向かう途中の森の中。
朝露に濡れた草の香りが鼻をくすぐり、木々の枝葉がそよ風に揺れる。小鳥の囀りが微かに響く、静かな森。だが、その静けさを破るようにリザードの群れ討伐の準備を進める俺たちの心は緊張で高鳴っていた。
「ラーニング2つ同時発動!?」
「そうじゃ」
ラーニング――魔法や技を学習し、使いこなす能力――でそんな器用なことができるのか。
俺は何度も試行錯誤を繰り返した。
右手に炎魔法! 左手は剣術!
遠距離攻撃と近距離攻撃、二つを同時に使うバランス型の戦法だ。
「うおおおおぉ!!!!!!!! 難しい!!!!!!!!」
片方、剣に集中すれば魔法は消えてしまう。
片方、魔法に集中すれば剣術が使えなくなり、刃を振り回すだけになる。
森の木漏れ日が揺れ、葉のざわめきと自分の息遣いが交錯する中で、俺は悩んだ。
「そうだ! 剣術と魔法で分けるから難しいのか!」
俺には二種類の剣術がある。
ココさんからラーニングで学んだスピード重視の剣術。
ゲルドさんからラーニングで学んだパワー重視の剣術。
ズババ!!!!
「うおおおおぉ!!!!!!!! なんとなくコツがわかった!!!!」
難しいことには変わりないが、ついにコツを掴んだ。
ココさんのスピード重視の剣でカウンターを狙い、ゲルドさんのパワー重視の剣で複数のリザードを吹き飛ばす。
二刀流でタイプの違う剣術を操る――世界で俺だけだろう、とエリスお嬢様は言った。
次は魔法だ。
対極する属性の魔法を二つ同時に発動するのは非常に難しい。
炎魔法と氷魔法、雷魔法と水魔法、風魔法と土魔法、闇魔法と光魔法――いずれも片手ずつなら可能だが、三つ同時は無理だった。
「今回はここまでか…」
無理に挑戦しても、実践で使えなければ意味がない。
そして今に至る。
「うおおおおぉ!!!!!!!!」
ズバババババ!!!!!!!!
俺はリザードたちに無双状態だ。
しかし数は多い。そろそろ魔法で減らすか。
「炎魔法【フレイムバースト】!!」
直径150cmほどの火の玉を手から放つ。燃え盛る炎が森の木々を赤く照らし、20体ほどのリザードが吹き飛んだ。
「とはいえまだまだいるなぁ…。さすが1000の数だ…」
そうだ! 良い作戦を思いついた!
「水魔法【ウォーターショット】」
空に向かって水の魔法を放つ。雨のように降り注ぐ水がリザードたちをずぶ濡れにし、足元の土はぬかるむ。
「何をしておるのじゃ?」
エリスお嬢様は首をかしげる。
「まぁ、見てて下さい。雷魔法【サンダーボルト】」
中級の雷魔法で広範囲に雷を落とす。スバーン!!!!
水に濡れたリザードたちは感電し、50体ほどが地面に倒れた。
「よし、この調子で…」
再び同じ戦法を使おうとしたその時。
「うぐ!!」
突然、体の力が抜ける感覚に襲われた。
「な、なんだこれ?」
魔力切れ……いや、そんなはずはない。
自分の限界値は把握している。
「ウェル! しっかりするのじゃ!!」
エリスお嬢様が叫ぶ。
空間魔法【アイテムボックス】は今使えない。懐の【マナポーション】を取り出し、一気に飲んだ。
「困りますねぇ。私の可愛いリザードを傷つけるのは」
声が、俺でもエリスお嬢様でもない、聞いたことのない低い声に変わった。
リザードたちが整列して道を開け、奥に全身黒いローブでフードを深く被った怪しい男が現れた。
「誰だ!? おまえが黒幕か!?」
どう見ても不審者。
俺はほぼ確信して問いただした。
「まぁ、そんなところです。ちょっとおいたがすぎるので私自らお仕置きしに来ました」
ならば、俺はこいつを倒せばすべてが終わる! そう確信して突っ込んだ。
しかしリザードたちが行く手を阻む。
剣で斬っても次々現れ、魔法で狙ってもリザードが盾となり、男を守る。
「揺らぎいる闇の使者。数多の魔を吸い取り糧となれ…」
詠唱――あれが魔法の詠唱か。
俺は詠唱が終わる前に攻撃を放った。
「闇魔法【マナドレイン】」
ぐっ!? また力が抜ける……倒れた。
「ウェル!!」
「そうそう、あなたの動きが鈍ったのは私の魔法ですよ。闇魔法【マナドレイン】。魔力を吸収する魔法です」
なるほど、それで魔力切れになったのか。
「それにしてもあなたは凄い魔力の持ち主だ。平均の魔道士の十倍はありますね。この私でもずっと持ってはいられないので、この魔力をリザードにしましょう」
なんだと!?
「我が名において来たれ闇の精霊、意志を継ぐものよ、手に取りし魔を授け、その姿を形に変えよ。闇魔法【マナメイク】」
黒い煙が男から立ち上り、次々とリザードが生み出される。
「そうか…この大量発生のリザードもお前の仕業か!」
俺は声を絞り、問いただした。
「その通りですよ! あぁ…なんて可愛いリザードたちなんでしょう…。観てるだけで癒される…」
すまん、その感性はわからない。
「お、お前は何者だ!」
「ふっふっふ…私はメイデン。楽園の使徒【ラプラス】の信者です! 今回の騒動で幹部に昇格すること間違いなし!! ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!! 神よ!!!! 私はこの時のために生まれてきたのか!!!!!」
聞いてもいないことをべらべらと……。
異世界転生して2年半、冒険者ギルドにいたが聞いたことがない組織だ。
「…お前たちは…闇ギルドか!? 何が目的なんだ!?」
男は絶叫した。
「キエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!!!!!!!!」
顔は見えないが、怒りが爆発しているのはわかった。
「あなた!!!! あなたあなたあなたあなたあなた!!!! ラプラスを闇ギルド!!!! 失礼な!!!! その発言はまさに!!!! ラプラスへの侮辱!!!!! 神への冒涜!!!! 死んで侘びなさい!!!!!!!!」
地雷を踏んだようだ。
最初の【マナドレイン】を受けてから、1分が経過した――。
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