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132.憎しみの果てに

第8章完結まで連続投稿します!

追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!

 エリスお嬢様がピエールによって貫かれた。

 その瞬間、時間が止まったように思えた。

 その音すら、鼓動のように遠くで鳴っていた。


「うあああああああああああぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 喉が裂けるほどの叫びが洞窟全体に反響する。

 怒りと絶望が混ざり合い、体の内側から黒い渦が吹き上がった。


 ラーニングにより緊急発動。

 【深淵の闇魔法】解放。


 視界が闇に塗りつぶされていく。

 心の底で何かがはじけ、記憶が霧に覆われた。


 ズガーーーーーーーン!!!


「…なんだ…?」


 ピエールの表情が一瞬だけ硬直する。

 凄まじいほど禍々しい魔力が空間を揺らした。

 その中心に、黒いオーラを纏ったウェルが立っていた。


 今までの彼とは明らかに違う。

 まるで闇そのものが人の形を取ったようだった。


「…これは…素晴らしい!」


 ピエールは恍惚とした笑みを浮かべる。

 狂気と歓喜が混ざり合う声。


「人族がこれほどの力を得るとは…長生きしてみるものだな」


 その言葉と同時に、空気が震える。

 冷たい圧が辺りを覆い尽くす。


「うあああああああああああぁぁぁ!!!!!!」


 ウェルの咆哮が轟く。

 衝撃波が走り、岩壁が砕け、洞窟全体が震動した。


「…来るがいい」


「うあああああああああああぁぁぁ!!!!!!」


 光が走る。

 次の瞬間、ウェルはピエールの目の前にいた。


 シュバッ!


 ズバッ!!


 音よりも速く、左腕が宙を舞った。


「なんと! この俺が人族の動きを見誤るとは!」


 切り落とされながらも、ピエールの瞳は笑っていた。

 余裕すら残る不気味さ。


「【黒き盾】」


 黒い塊が渦を巻き、障壁のようにウェルを包む。

 だが――


 ズバッ!!


 その盾は、まるで薄紙のように両断された。


「【黒き盾】を一撃で…大したものだ」


 賞賛を口にしながらも、ピエールの表情には焦燥が滲む。


「【黒き槍】」


 闇が伸び、槍が数十本、蛇のように襲いかかる。

 ズガガガガガガガ!!!!!!


 ウェルの剣が黒閃を描く。

 全ての槍が、光速の軌跡で断ち切られた。


「こうも【黒き槍】を斬るとは…」


 ピエールの声がかすれた。

 闇の空間に金属音が響く。


 ウェルの身体が一閃ごとに霞み、残像が幾重にも重なる。

 その動きはもはや人の域を超えていた。


 ズババババババババババ!!!!!


 ピエールの体が、ゼリーのように滑らかに切り裂かれていく。


「【羅刹の剣】」


 ズバーーーーーーーン!!!!!!!


 地面が裂け、光が地上まで貫いた。

 空気が一瞬にして焼け焦げる。


「ふははははははは!!! この俺を超えるか!!! 人間よ!!!!」


 ピエールは四肢を失い、胴も首も断たれながら、なお笑っていた。

 血ではなく、黒い霧がその身体から溢れ出す。


「……【黒き槍】」


 ズバ!!


 ウェルの放った漆黒の槍が、ピエールの頭を貫いた。


「俺の【呪術】まで真似るとは…! …なら突き進むがいい…。その魔の道を!!!!」


 ピエールの身体は灰へと変わり、闇の中で崩れ落ちていった。


「うあああああああああああぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 敵はいなくなった。

 だが、ウェルは暴走したままだ。

 その黒い魔力は空気を震わせ、洞窟の壁に黒い亀裂を走らせる。


「…ウェル…」

「…ダメですわ…」

「…あれが…ウェル殿で…ござるか…?」


 テンテン、リーズ、サヤが目を覚ます。

 倒れていた仲間たちは、恐怖と絶望を混ぜた目でウェルを見つめた。


「…お願い…ウェル…そっちに行ってはダメですわ!」


 リーズの声が震える。

 その祈りが闇の中で小さく響いた。


「止まりなさ〜〜い!」


 その声が、空気を震わせた。

 だが、それを聞いたのはウェルだけだった。


「………………………レ……ナ………?」


 それは確かに、死んだはずのレナのものだった。


「アタシはもう死んでるのよ~!」


 あの軽い調子の声。

 間違いない。レナだ。


「落ち着いてきたわね~。

なら後ろを見なさい~!」


「……後ろ…?」


 振り返ると、そこにはココがエリスお嬢様を支えながら起き上がらせていた。


「……あ……あぁ……」


 涙が止まらなかった。

 生きている。確かに、そこに。


「元に戻らぬか!!!! バカ者!!!!!!」


 エリスお嬢様の怒声が響く。

 その力強い声が、暴走する闇を揺さぶった。


「今ね~! 【深淵の闇魔法】を抑え込むよ~!!!」


 レナの光がウェルを包み込む。

 闇と光が交錯し、空間が軋むように揺れた。


「……俺…は……いったい…?」


 光が収まり、ウェルは元の姿に戻った。

 意識が戻ると同時に、恐怖と安堵が押し寄せる。



「エリスお嬢様!!!!」


 フラフラになりながらも、俺は走った。

 足がもつれ、呼吸が荒くても止まらない。


「はぁ…はぁ…!」


 目の前には、確かに生きている彼女がいた。


「だ、大丈夫…なのですか?」


 ピエールの【黒き槍】が貫いたはずの胸。

 風穴があるのに、血の一滴も流れていない。


「妾のこの身体は人形であるのは知っているであろう? 痛みなど感じぬわ!」


「…あ…」


 そうだ、エリスお嬢様は魂を人形に宿す存在。


「妾のこの人形にどれほどダメージを与えても痛くも痒くもないわ! 妾の魂が傷つくことがない限り死ぬことはないのじゃ!」


「そうだったの!?!?!?」


 初めて知った。


 すると突然、俺の身体が光を放つ。


「チィーーーーッス!! 美少女精霊レナちゃん再び登場〜〜!!」


 まばゆい光の中から、レナが笑顔で現れた。


「レナ!! 無事だったのか!!」


 声が震える。涙がこぼれそうだった。


「レナ! 無事だったアルか!」


 テンちゃん、リーズ、サヤ、ココが駆け寄ってくる。


「当たり前よ~! アタシはもう死んでるんだからね~! 一定のダメージを受けたら【精霊界】に移動して回復すんのよ~」


「【精霊界】!? …って何!?」


 俺は思わず聞き返す。


「ウェルったら~そんなことも知らないで霊力使ってアタシを呼び出しているの~?」


 レナが軽くウェルの額をつつく。


「わたくしが説明致しますわ」


 霊力のスペシャリストとして、リーズが静かに一歩前へ出た。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


と思ったら


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面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


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