118.ショタワンコ VS 鎖ノ国の侍
第7章完結まで連続投稿します!
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
鎖ノ国から来た滅魔流剣士【黒國 沙耶】との決闘を終えた翌日。
陽光の射す森の奥で、ウェルたちのパーティーは今日もクエストをこなしていた。
木々の隙間から差し込む光が揺らめき、湿った土の匂いとともに小鳥のさえずりが響く。
「さすがにAランクはもうやりがいがないアルな」
テンちゃんが木の枝を蹴り折りながら、あくび交じりにぼやいた。
ウェルパーティーの現在のランクは――
ウェル・ベルク【A+2】
リン・テンテン【A+2】
エリス・グランベル【A+1】
リーズ・アクィルス【A+1】
つまり、全員が単独でAランクの魔物を討伐できる実力者ということだ。
今さらAランクの依頼に苦戦することもない。
(もっと上の敵とやり合わないと、ナハトやラプラスには通じない…)
ウェルはそう胸中で呟く。
「パーティーの連携を向上する目的なら、Aランクは妥当であろう」
エリス曰く、闇ギルド【ナハト】や楽園の使徒【ラプラス】と戦うための連携訓練も兼ねているらしい。
だが現実には――
「依頼が多いけどAランクばかりだからね…」
ウェルの口から漏れたため息が、森の静けさに溶けていった。
Sランクのクエストは滅多に来ない。
「確かに、こうも続くとマンネリ化してしまいますわね」
リーズが髪を耳にかけながら、日差しを見上げる。
「個々の実力アップならクエストではなく、別のトレーニングを積んでおるじゃろう? のう? ウェル?」
「はい、そうですね」
ウェルの脳裏に、三週間前の光景が浮かんだ。
――あの日、俺は光の精霊【レナ】を呼び出し、【深淵の闇魔法】をどうにか制御できないか模索していた。
「うーん…やっぱり無理みたいだね~」
レナは浮遊しながら、困ったように眉を寄せた。
ウェルの手の甲に刻まれた黒い紋章。
「これがなんなのかわからないけど、エリスお嬢様たちを守る力になるなら扱いたいんだけどなぁ」
ウェルは苦笑しながら拳を見つめる。
闇ギルド【ナハト】のNo.5、ルビー。
王国最強と呼ばれたレオンを超える実力者。
そんな彼を倒せたのは、この【深淵の闇魔法】の力があったからだ。
だが、その力は危うい。
「でも、主が主でなくなったらみんな悲しむわよ~?」
レナの声は優しいが、どこか切なさを帯びていた。
「そうだね。だから闇に呑まれないように、せめて制御できるようにならないとね」
ウェルは静かに拳を握った。
暴走すれば全てを失う。
だが使いこなせれば、仲間を守る力になる。
――もう、誰も失わないために。
そう誓った日から、ウェルたちは各自のトレーニングを重ねてきた。
そして今、森の風が穏やかに吹く午後。
「じゃあクエストも終わったし、そろそろ帰ろうか!」
ウェルの声に、みんなが頷いた。
それぞれの修練に戻る予定だった――その時。
ガサガサッ。
「ん! 誰じゃ!?」
テンちゃんが反応し、全員が一斉に武器を構える。
木々の影から現れたのは――
「昨日ぶりでござるな」
剣士サヤだった。
薄暗い森の中で、彼女の刀が冷たく光る。
「サヤ!」
全員の声が重なった。
「ウェル殿…改めて決闘を申し込むでござる!」
昨日とは違う、研ぎ澄まされた殺気が漂っていた。
「えっと…どうしても?」
ウェルはわずかに目を細める。
少女相手に剣を振るうことには、どうしても抵抗があった。
「…今日は拙者の愛刀で勝負するでござる。昨日のように手加減できるとは思わぬことでござる!」
シュバッ!
言葉が終わるより早く、サヤの刀が抜かれた。
閃光のような斬撃がウェルを襲う。
「わわ!!」
キィンッ!
金属がぶつかる音が森に響き渡った。
ウェルも反射的に剣を抜き、受け止める。
「さぁ、本気を出すでござる!」
「ウェル!! 今助けますわ!!」
「大丈夫!! 手出ししないで!!」
ウェルは背後のリーズに叫んだ。
「ウェル!?」
「多分、何かあるんだ! ここは俺に任せてくれ!!」
剣を構え直し、ウェルはサヤの双眸を見据える。
「そう来なくては男でないでござる!」
カンッ!
刃と刃が幾度も火花を散らす。
森の空気が震え、地面の落ち葉が舞い上がった。
ズガガガガガガガガ!!!!!!!
激しくぶつかり合う金属音が止まらない。
それはもはや人間の反応速度ではなかった。
「前にも思ったが不思議な剣術を使うでござるな。一人で三人の剣士と戦っているみたいでござる」
サヤの視線が鋭く光る。
ウェルの剣は、ココの迅剣、ゲルドの剛剣、レオンの氷剣――
それぞれの技を模倣した融合の剣術。
「ともあれ滅魔流と拙者の愛刀【冥漠丸】をどこまで受けきれるでござるかな!?」
サヤの斬撃は模擬戦とは比べものにならない速さ。
そして――
「滅魔流…【魔翔一閃】!!!」
サヤが地を蹴り、閃光のごとき抜刀を放つ。
「滅魔流…【魔翔一閃】!!!」
「!?」
ウェルも同じ技で迎え撃った。
ズガァァァァン!!!!
衝突の瞬間、轟音と衝撃波が森を吹き飛ばす。
落ち葉が舞い、空気が一瞬止まったように静まり返る。
「な!? バカな!? 拙者と同じ剣技!?」
驚愕するサヤの瞳に、ウェルの決意が映った。
「本気で来るなら本気で反撃させてもらうよ。女の子と戦いたくないけど、まだ死ぬ訳にはいかないんでね!」
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