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114.初デートは波乱!?

第5.5章完結まで連続投稿します!

追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!

 中身が童貞36歳の俺と、いつもと違って清楚系のワンピースを着こなすテンちゃん。


 お互いが恋愛未経験という、ぎこちなくも甘酸っぱいデートが始まった。


「こ、ここのランチがおすすめってココに聞いたアル…!」


「そ、そうかーテンちゃん! じゃあ一緒に入ろう(棒読み)」


 緊張しきった声が空気に浮かぶ。

 昼下がりの石畳の通りには、焼き立てのパンの香りと風鈴の音が漂っていた。

 俺とテンちゃんは互いに顔を見られず、視線が泳ぐばかりだ。


 そんな俺たちを、少し離れた屋根の上から望遠鏡で覗いている二人の影。


「うわ~。見てるこっちが恥ずかしくなるほどガッチガチ~」


「これは予想以上ですね…」


 レナとココさんが、まるで実況中継のように小声で呟く。

 その間に俺たちは、ぎこちない動きで店へと入っていった。


 店内は温かなランプの灯りに包まれ、パンの焼ける香ばしい匂いと、静かに響くバイオリンの音色が漂っている。


(だ、ダメだ!! 緊張で味がしない!!)


 美味しいはずの料理を前に、俺の舌は味を感じない。

 フォークを持つ手が震え、テンちゃんと視線が合うたび、心臓が無駄に跳ねた。


 ふと見ると、テンちゃんも同じようにスープを見つめたまま固まっている。

 スプーンを握る手の先が小刻みに揺れていた。


 食事を終えて外に出ると、広場の方から怒鳴り声が響いた。


「た、大変だーー!! 家畜が逃げ出したーー!!」


「あ、あれは…!」


 砂煙を上げて走ってくるのは、牛のような巨大な生き物。

 黒光りする角を振り回しながら、こちらへ突進してくる。


「アタシがやるネ!」


 テンちゃんは反射的に前へ飛び出した。

 白いワンピースの裾が風を裂き、跳び蹴りが炸裂する。


 ゲシッ!!


「モーーーーー!?!?!?」


 牛のような魔獣は一撃で地面に沈んだ。

 砂埃が舞い、周囲の人々が一斉に歓声を上げる。


「いやー助かりましたよー!」


「大した事ないネ!」


 家畜主に笑顔で応じるテンちゃん。

 だが、その腕を見た瞬間、俺の口から思わず声が漏れた。


「あ、テンちゃん…!」


 白いワンピースの裾が破れ、布が風に揺れていた。

 どうやら魔獣の角に引っかかったらしい。


「せっかくのワンピースが…」


 落ち込むかと思ったが、テンちゃんは不意に笑い出した。


「ぷっ…アハハハハハ!」


 透き通るような笑い声が、青空に響く。


「くくく…やっぱりアタシはこういう服は向いていないアルね! 動きやすい格好がアタシらしいアル!」


 笑顔には後悔の色はなく、むしろ清々しいほどだった。

 風に乱れる髪を押さえながら、テンちゃんは太陽に向かって笑う。


「そうだね。似合う似合わない以前に、テンちゃんがやりたい格好が一番だよ」


 自分を飾るより、自分を貫く。

 その姿こそが一番輝いて見える。


「そうアルね! さっきは悪かったアル!! やっぱりアタシたちはいつも通りが一番アルね!」


 笑いながら拳を突き上げるテンちゃん。

 吹き抜ける風が、二人の間のぎこちなさを吹き飛ばしていくようだった。


「ハハハ! お互い慣れないことはするもんじゃないね!」


 男と女という関係を意識したからこそ、互いに緊張していた。

 だが、冒険者として、仲間としての自然体の関係が一番心地よい。


「それじゃあデートはここまでネ! 次はエリスだから頑張るアル!」


 テンちゃんはいつもの笑顔で手を振り、街角を駆け抜けていった。

 彼女の背中を見送りながら、俺の胸には奇妙な達成感と温かさが残った。


「次は…エリスお嬢様…」


 一体、どんな意図で俺を誘ったのか。考えながら夕暮れの街を歩く。

 オレンジ色の光が石畳を染め、行き交う人々の影が長く伸びていた。


 やがて夜が訪れ、街灯が灯る。

 俺は約束の場所――噴水の前に立っていた。


「ここにエリスお嬢様がいるんだよな…」


 見渡すが、小さな彼女の姿はない。

 いるのは一人の後ろ姿。月光に照らされたその輪郭は、かつて見た“人の姿”のようだった。


 その美少女が振り向いた。


「ウェル…」


 その声、その顔、その眼差し――。


「え…エリスお嬢様!?!?!?」


 かつての人間だった頃のエリスお嬢様が、目の前に立っていた。


「ひ、久しぶりじゃのう…この姿は…」


「ひ、久しぶりって…元に戻れたんですか!?」


「メタモルフォーゼ…習得には時間がかかったが、やっと習得できたのじゃ。ウェルをその姿にした時の残滓が残っていてのう。一度だけこの姿になれるチャンスがあったのじゃ。ここまで時間がかかるとは思っていなかったがのう」


 淡く揺れる金髪、薄桃色の唇、宝石のように輝く緑の瞳。

 彼女は人形の姿を脱ぎ捨て、再び“人”としてそこに立っていた。


「そうだったんですね…」


「久しぶりにこの姿になったのだ。妾をエスコートするがよい!」


 エリスお嬢様が白い手を差し出す。

 俺は自然と膝をつき、その手を取った。


「わかりました。仰せのままに…」


 そのまま彼女と並んで歩き、街のレストランで食事をした。

 リーズやテンちゃんの時とは違い、緊張はなく、ただ穏やかで静かな時間が流れていた。


 そして、人気のない庭園の茂みで、俺たちはこれまでの出来事を思い返していた。


「あれから色々あったのう」


「そうですね…まさかこんなにいろんなできごとがあるなんて思いもよりませんでした」


 エリスお嬢様との出会いから始まり、ココさん、闇ギルド【ナハト】、人形化、変身、模擬戦、追放、ラプラス、テンちゃん、リーズ、レナ――。

 怒涛のような数ヶ月だった。


 すべての出来事を思い返しながら、俺は微笑んだ。


「良かったです…エリスお嬢様と出会って…。この姿になれて…だから今、すごく楽しいんです!」


 それは心からの言葉だった。

 後悔も迷いもない。ただ、感謝だけがあった。


「そ、そんなこと真っ正直に言うでないわ!」


 ポカッ。


「いて!」


 軽く拳で頭を叩かれ、思わず笑ってしまう。


「まったく…言ってて恥ずかしいとは思わんのか…」


「いえ、感謝の気持ちは正直に言わないと…」


 俺の真っ直ぐな言葉に、エリスお嬢様は少し顔を赤らめた。


「そ、そうか…なら正直に言うがいい!」


「え?え、えぇ…」


「今日のリーズ、テンテン、妾の3人のデートで一番良かったのは誰じゃ!?」


 ……え?


「えええええええええぇぇえええ!?!?!?!?」


 夜空に俺の絶叫が響いた。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


と思ったら


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面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします。

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