11.追放した冒険者と決闘
第一部完結まで連続投稿します!
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
剣士ビリーはギルドの訓練場で、先輩の指導という名の新人イビリをするつもりだった。
こいつの性格の悪さ……俺はよく知っている。
領主の息子の権限を使い、ツケを貯めていた店を踏み倒したり、他の冒険者の彼女を寝取ったり、どこか抜けていたり――やりたい放題だった。
前のギルドマスターはそれを全て黙認していた。領主からワイロでももらっていたのだろうか。
「俺が勝ったら、【生意気なことを言ってごめんなさい】と土下座しろ! いいな!? ついでに有り金全部置いていけ!」
「良いじゃろう! ウェルが勝ったら【全裸逆立ちでこの街を一周】して貰おうかのう?」
待て! 俺が戦うのに、話が進んでいくんだけど!?
その時、遠くでゲルドさんがこっちを見ていた。
俺は視線で送る。
「助けて!」
するとゲルドさんは笑顔でウィンクし、親指を立てた。
――要するに、【頑張れ(キラン)】ってことだろう。
いや、頑張れ(キラン)じゃないわ!!!
まぁ、訓練場での正式な練習や決闘なら、ギルマスは口を出さないということか。
仕方がない。やってやる!
俺はもう、あの時の【無能なおっさん】じゃない!
お前に勝って、トラウマを乗り越えてやる!!!!
「…行きます」
俺はすぐにビリーに向かって距離を詰めた。
「うわ!」
ガン!!
ビリーは俺の攻撃を防いだが、全く余裕はない。
その後、俺が一方的に攻める展開になる。
あれ? こいつってこんなもんか?
ガガガガガガ!!!!
「く! くそ! な、なんなんだ! こいつは!」
全く手も足も出せない様子のビリー。
当然だ。
俺は元A級冒険者のココさん、ギルドマスターのゲルドさん、闇ギルドとの命のやり取り、強敵との戦闘を経験してきた。
さらにラーニングの力でゲルドさんの剣術も習得済み。ゲルドさんと戦った時よりも強くなっている。
ちなみにラーニングの習得には、受けてすぐに発動するわけではなく、1分のインターバルがあるらしい。
これが今の俺の実力だ。
今さら親の七光りでB級冒険者になったやつに負けるわけがない!
そして――
「貰った!」
俺はビリーを完全に捉えた瞬間だった。
しかし――
え?
俺の身体が急に重くなる。
ガガガガガガ!!!!
ビリーが俺を押し返し、形勢が逆転する。
「どうしたよ! こんなもんか!?」
急に強気になるビリー。何かある。
この感覚は……状態異常の魔法だ。
闇魔法【バフ】。
相手の攻撃力、防御力、スピードを大幅に下げる厄介な魔法だ。
この魔法を使えるのは……魔導士カーリンだ。
ビリーが負けそうになったから、こっそり魔法を使ったのか。
そしてビリーはそれに気づき、強気に出たのだ。
くそ……次第に追い込まれていく。
あぁ……また負けてしまうのか。
やはり俺はダメなのか。
俺はまだトラウマを乗り越えられないのか……。
最初に話しかけられたとき、震えてしまった。
どんなに魔法やスキルを習得しても、俺はまだ【無能なおっさん】なのか。
何も見えない。真っ暗だ。
どうすればいい……?
結局、俺は一人じゃ何もできないのか。
まずい。
もう勝てる自信がない。
やられる……!
「癒しの光、魔を取り除く精霊の加護を、汝に与える輝きの星、その全てを解除せよ!
光魔法【リリース】」
エリスお嬢様が魔法を詠唱した。
すると状態異常が解除される。
【リリース】は、あらかじめ譲渡しておいた魔法だ。
「あきらめるでないわ! この大バカ者!!!!」
あぁ、エリスお嬢様……。
俺より気高く、強い存在なのに、俺を救ってくれた。
俺は彼女の助けになりたいと思い、今も戦っている。
そうか。
俺がこの半年で得たのは魔法や剣術だけじゃない。
エリスお嬢様、ココさん、ミリアさん、ゲルドさん。
心から信頼できる仲間がいる。
心を許せる仲間がいる。
心から叱ってくれる仲間がいる。
心を通わせる仲間がいる。
俺は……もう……。
一人じゃないんだ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「うおおおおぉ!!!!!!!!!!!!!!!!」
ガキン!!
その瞬間、ビリーの木刀は俺の木刀に弾かれ、宙を舞った。
「勝者、ウェル・ベルク!」
ギルマスのゲルドさんが声を上げる。
勝った。
俺はトラウマに打ち勝ったんだ!!
「手を出すつもりはなかったんじゃが、お主がその気なら容赦はせぬぞ」
「くっ!」
カーリンの妨害に気づいていたエリスお嬢様。
「ズルだ!!!!!!!!
何かズルしたに決まっている!!!!
俺がこんなチビに負けるわけがねぇ!!!!」
一回りも年下の子供に負けたことを認められないビリー。
「いや、ズルをしたのはお前たちだ!」
いつの間にかゲルドさんが近くにいた。
「カーリンよ、お前はウェルに闇魔法【バフ】をかけていただろう」
さすがギルドマスター。見抜いていたようだ。
「うっ!」
何も言い返せないカーリンとユルゲン。
「まぁ、これぐらいのことでウェルが負けるとは思えなかったがな!!」
なるほど、だから見過ごしていたのか。
いや、危なかったけど!!
こうしてビリーは街を全裸で逆立ち一周する羽目になった。
数日後、ビリーは全裸逆立ちの影響で、店や冒険者に顔を利かせられなくなり、さらに親である領主から勘当される。
プライドはズタズタに砕かれ、精神状態のせいでクエストの失敗も続いたのだった。
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