10.追放した冒険者再び
第一部完結まで連続投稿します!
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
俺はA級冒険者として、その名を街の隅々まで広がっていった。
おっさんだった頃は荷物持ちだったのに、今やギルド内でも噂になるほどの出世だ。
身を隠す必要があるのに、なぜここまで目立つ行動をしているのか――理由はただ一つ、最終目標がグランベル家の復興だからだ。
しかし現状、世間ではエリスお嬢様はすでに死んだことになっており、グランベル家も潰えたという話が広まっている。
だから、今は元の名前を出すわけにはいかない。何より、エリスお嬢様はかつて悪役令嬢だったため、人望はほとんどない。グランベル家を潰した者たちを討伐しても、復興は容易ではないだろう。
ならば、新しい名前で新たな貴族になる――そう俺たちは決めた。
この世界では、一流の冒険者として認められれば、王から貴族の地位を与えられることもある。
だからこのギルドで名を上げ、実績を積めば、新たなグランベル家を築く道が開ける。エリスお嬢様は、自ら貴族になる必要はないという。
名前が変わろうと、本人でなくとも、受け継ぐ意思さえあれば十分――その意思を俺に託すのだ。
俺、エリスお嬢様、そしてココさん――三人で決めた目標。これが俺たちの未来の指針だ。
「では、私はレイリー家の偵察に行って参ります」
ココさんはここで別行動になる。暫く会えないと思うと、少し胸が締め付けられる。
ほぼ黒と見ているレイリー家だが、闇ギルドを雇うのは非常に危険だ。闇ギルドはその力を盾に、法外な報酬や多くの生け贄を要求する。下手をすれば自分の家すら潰れることもあり得る。
――そこまでしてグランベル家を潰すというのか。
その真実を探るため、ココさんは足を運ぶのだった。
俺と肩に乗ったエリスお嬢様は、冒険者ギルド【ルミネスゲート】直営の宿屋に到着した。
「妾に補助系の魔法を譲渡するのじゃ」
人形であるエリスお嬢様は、この状態では魔法を使えない。そこで俺は、以前『ラーニング』で魔法を譲渡されたときのように、いくつかの魔法を譲渡することにした。
「固有魔法【メタモファ】」
譲渡した魔法は、光魔法【ヒール】、光魔法【リリース】、光魔法【シールド】だ。
【ヒール】は初級の回復魔法。俺には上位の【エクストラヒール】があるが、もし俺が手を出せない時の補助として渡した。
【リリース】は毒や幻術、魔封じなどの状態異常を解除する魔法。これも保険として譲渡。
【シールド】は中級レベルの結界魔法で、防御の軸となる力を持つ。
こうして、エリスお嬢様は俺のサポート役として戦場を支えることになった。俺が前線で戦い、彼女は補助――戦力バランスは完璧だ。
「では、妾は寝るのじゃ」
「おやすみ、エリスお嬢様」
明日からはここでの仕事が始まる。肩を落とす暇はない。
冒険者ギルドに入って2日後、俺と肩に乗るエリスお嬢様は再びギルドの扉をくぐった。
エリスお嬢様は後日テストを受けるため仮冒険者として登録されている。ココさんのお墨付きの特例措置だ。感謝、ココさん、ゲルドさん!
扉をくぐると、そこにいた冒険者たちの視線が一斉に俺たちに向いた。
「噂の新入りか…」
「まだ子供じゃん」
「新人のクセにいきなりA級らしいぞ」
視線の圧が肌に突き刺さる。中には、俺の実力を知らず、ギルマスに媚びてのし上がっただけだろうと考える者もいるようだ。
だが、そんなことに心を奪われてはいられない。俺には俺の役目がある。エリスお嬢様のため、全力を尽くす。
「…えっと…これにしようかな」
仕事内容は【リザードの群れ討伐】。C級ランクだが、久しぶりの冒険者の仕事で、魔物退治も実戦経験がほとんどない。ウォーミングアップにはちょうどいい。
「おいおい、期待の新人が何こんな仕事を受けようっていうんだ?」
一人の若い男が声をかけてきた。その声を聞くと、体に嫌な緊張が走る。
忘れもしない――俺をパーティーから追放した男、B級冒険者でリーダーの剣士ビリーだ。
その後ろには、巨乳美女で目つきの鋭い魔導士カーリン、スキンヘッドで筋骨隆々の拳闘士ユルゲンが並んでいる。
あの時のトラウマが一気に蘇る――異世界転生前の34年間、転生後の2年間、ずっと無能の烙印を押され続けた俺の自己肯定感が、音を立てて崩れた。
「なんじゃお主ら?」
俺が下を向いて黙っていると、エリスお嬢様が鋭く口を開いた。
「A級冒険者なんだから、もっとランクの高い仕事を受けたらどうだって言ってんだよ? 実力が本当ならな!」
「先輩のアドバイスは聞くものですよ」
「まぁ、インチキでもC級なら大したもんだがな」
相変わらず、ビリー、カーリン、ユルゲンの順で挑発する。エリスお嬢様は怯まず、たんかを切る。
「ご忠告感謝なのじゃ。じゃが仕事を選ぶのは妾たちの自由なんじゃから、ほっといて欲しいのじゃ」
バチバチ――空気が張り詰め、まるで火花が散るかのような睨み合い。
「生意気な小族だな。先輩が指導してやろうか! 訓練場に来い!」
「良いじゃろう。妾のペットが相手になってやろう!」
え? 待って! 俺が戦う流れになってる!? 何も喋ってないのに!?
「訓練場へ案内してやる! こっちだ!」
「おいビリー…」
「ん? どうしたユルゲン?」
「訓練場はその逆の方向だ」
「………………………」
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