01.追放された俺は悪役令嬢と出会う
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です。
燃え盛る炎。
屋敷に火が周り、誰も助けに来ない。
焼け死ぬには十分な熱さだ。
その燃える屋敷の中で一人のおっさんが少女を抱えながら泣き叫ぶ。
「なんで…なんで…なんでこんなことになったんだあああああああああああ!!!!!!!!!」
「……泣くでない…妾の力を授けてやるのじゃ…」
おっさんが抱える少女は長くキレイな金髪、透き通るような肌、淡いグリーンの瞳をしている。
この屋敷の令嬢だ。
その少女が微かな声でおっさんに話しかける。
半年前。
ギルドのテーブル席にて。
「お前はもういらねぇよ! このお荷物野郎!!」
B級冒険者のリーダー。
剣士ビリーの暴言とともに、パーティーのクビを宣告された。
「えっと…突然過ぎるかなぁ~…なんて」
「あんたはギルドでなんて言われているか知っているだろ?
【無能なおっさん】というレッテル貼られたやつと一緒にいるとこっちも評判が下がるんだよ!」
「そ、そんなぁ~」
「おっさんより優秀な荷物持ちなんていくらでもいますしね」
「まぁ、無償で働くならいいけどな」
魔導師カーリン、拳闘士ユルゲンも酷い言葉を次々と浴びせる。
「おっと! 出ていく前に、お前の有り金全部置いていけ!!」
「そ、それはさすがに…」
「お前の意見なんかどうでもいいんだよ!
目障りだから有り金全部置いて出ていけ!」
無理やりビリーに金貨の入った袋を取り上げられて。
ゲシッ!
蹴られて倒れる。
周りに笑われながら【無能なおっさん】は
しぶしぶギルドを出ていった。
「せいせいしたぜ!」
「おい、ビリー」
「ん? なんだ?」
「それ…俺の飲み物…」
「………」
ビリーはユルゲンの飲み物を間違って飲もうとしていた。
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パーティーにクビを宣告された俺の名前は【セーイチ】。
実は2年前に異世界転生した36歳のサラリーマンだ。
本名は【川端誠一】。
地球にいた頃は社畜で疲れて帰ってくるつまらない日々を送っていた。
カップ麺ばかりで睡眠時間は2時間もない。
楽しみもなく、ただひたすら仕事をする日々。
若いときから特にパッとしない存在で、目立つことはなく、モテることもなかった。
小学校の頃はいじめにもあったなぁ。
昔はお人好しのせいかパシリに使われていることを「頼られている」と勘違いしていた時期もあった。
我ながら黒歴史だ。
とはいえ今でも世話焼き好きは変わっていないんだけどね。
いつものように帰宅したが今日は特に身体が重い。
ベッドまで行きつくことができない。
ダメだ。
眠い。
玄関で倒れてしまった。
「…ん、朝かな?」
日差しが眩しい。
なんだが天国にいるみたいだ。
自然の中で眠れるなんて本当に快適だ。
「…森!?」
目覚めたら天国ではなく森にいた。
それから森の中を探索してゴブリンに遭遇。
異世界に来たと確信した。
ゴブリンに追われながらやっとたどり着いたのが今、俺が住んでいる街だ。
異世界転生してしまったが俺にはなんのスキルも与えられていない。
ラノベの異世界転生ならここで俺TUEEEEなスキルが手に入るのだが…。
若くもないし、運動不足で体力もない。
更に、身元不明なので信頼がない。
そんな俺にできることなんてGランク冒険者として荷物持ちと雑用ぐらいしか食いぶちがない。
冒険者なら一から信頼を築けるらしいからな。
異世界転生して2年が経った。
なんで転生したかわからないまま過ぎていった。
剣なんていまだに扱えず、魔法なんて論外だ。
ドンドン若い子が入ってくる中。
冒険者ギルドの中では蔑まれる毎日。
ついにはギルド内で【無能なおっさん】というレッテルを貼られる。
なので【無能なおっさん】と言ったら俺に当たる。
転生前も転生後もなんて理不尽な人生なんだ。
それでも最初は、持ち前の人当たりの良さと入ってくる新人冒険者の面倒見の良さで慕っている人もいた。
しかし、ベテランのB級冒険者であるビリーの方が影響力が大きいので【世話好きなおっさん】ではなく【無能なおっさん】の方がどうしても広がってしまう。
そして、ついに長期的に契約をして荷物持ちをしていたB級冒険者のパーティーから追放された。
荷物持ちだって立派な仕事だ。
しかし、B級冒険者の荷物持ちでもある程度戦えて自分の身を守ることぐらいはできる。
俺は喧嘩すらロクにしたことがないのに魔物を殺すなんてとてもとても…。
特に犬型の魔物は苦手だ。
昔飼っていた愛犬を浮かべてしまってどうしても殺せない。
こんなことだから足を引っ張ってばかりだ。
B級冒険者のパーティーから追放されたからといって仕事ができないわけではない。
しかし、ビリーはそれなりに信頼があり、街の領主の息子でもある。
そこから追放されたとなるとかなりの信頼を失ってしまう。
本来できるはずの薬草取りなどの仕事もできなくなった。
更に小耳に挟んだのだが、俺を追放したビリーは過剰に話を大きくして無能っぷりを広めているらしい。
ギルドではどうしようもないということなので、俺はギルドどころか街を出ることにした。
とりあえず、別の街のギルドに入り、再スタートすることにしよう。
そのためにも今日中にこの森を抜けようと思う。
そして安全を確保し、森で野宿することとなった。
その夜。
「…ん、まだ夜か…何か飲み物…」
深夜に目が覚めてしまった。
喉が乾いたので、近くで見つけた湖で喉を潤そうと向かっていった。
ザッザッザ...
歩いて数分。
湖に到着すると、水浴びしている裸の美少女がそこにいた。
淡いグリーンの瞳の14~15歳ほどで妖精か天使かと見違えるほど美しく見とれてしまった。
これが運命の出会いであると今はまだ知る由もない。
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