プロローグ
もう周りに住んでいた人達はとっくに避難した。
異星人には反撃してはいけないと言われている。
正確に言うと「攻撃するなら確実に異星人を殺さなくてはいけない」らしい。
異星人が地球に侵略してきたのは約10年前。
その時、銃火器は異星人に通用していた。
だが銃で撃たれた異星人が異星人の巣に戻る。
三日後には巣から出て来た異星人には銃は効かなかったという。
それどころか巣にいた全ての異星人に銃はそれ以降は無効になった。
威力の低い核兵器『劣化ウラン弾』で最初の頃、異星人に無差別攻撃していたせいで核兵器も異星人には効かなくなった。
生物兵器も化学兵器も既に効かない。
強い効果がある生物兵器や化学兵器は有効かも知れない。
だがそれらは人間にも悪影響を及ぼすだろう。
つまり直接攻撃以外の考えつく限りの攻撃を異星人は一切受け付けなくなった。
「これ以上攻撃手段が無効になったら戦う方法がなくなる」という事で「確実に目の前の異星人を全て殺せる時以外異星人への攻撃は禁じる」という事になったのだ。
「直接攻撃で異星人を倒せるなら素手で殴り殺せば良いじゃないか」そう考えるのが普通だ。
だがそれは「雨粒を避ければ濡れない」というのと同じで「理屈ではその通りだがそれを実行出来る人間は果たしているのか?」という話だ。
遠巻きに見た時に人間と異星人の見分けはつかないだろう。
しかし目の前で異星人を見た時、人間と見間違えるヤツがいる訳がない。
異星人は3~5m身長がある。
かつて皮膚の厚さは人間も異星人も同じだった。
しかし今は銃火器は無効である。
最強の拳銃コルトパイソンがゾウの皮膚を貫通する事を考えると「異星人の皮膚はゾウの皮膚より硬い」という事だ。
「人間の倍以上の身体の大きさがある異星人は、人間の倍以上の力がある」
つまり理論上は喧嘩で異星人を倒せる。
しかし異星人より喧嘩が強い人間を見た事がない・・・そういう事だ。
勝てないのに中途半端に喧嘩は売ってはいけない。
菌を完全に殺すまで抗生物質を飲まないと抗生物質が効かない『耐性菌』が生まれてしまうのと同じ理屈だ。