La Morte
この能力に気が付いたのは、高校三年の夏だった
塾の夏期講習の帰り、辺りもすっかり暗くなってしまい
僕は近道をして帰ろうとしていた
すると、同じ高校の不良グループに出くわしてしまい、僕は絡まれてしまった
「なぁ高木、俺たちカラオケで歌いすぎて帰りの電車代なくて困ってんだわ。ちょっと金貸してくんない?」
「い、嫌だよ…僕お金持ってないし…」
「いいから黙って財布出せよ」
彼らはそう言って、僕のカバンを取り上げて中を調べ始めた
「やめてよ、本当に持ってないんだって…」
「もしかして…財布はポッケに入れてるのかな?」
今度は僕の体を隅々まで弄り始めた
「や、やめ…やめろって言ってるだろ…!」
僕が相手の腕を掴んだ瞬間
「うっ…ぐはっ…く、苦しぃ…たすけ…」
彼は突然喘ぎ出し、その場に倒れ込んでしまった
「須藤…?おい、どうし…ひ、ひぃ!!」
様子がおかしい、そう思い、僕はそっと近づいて彼の首に触れた
「脈が…ない…死んでるのか…?」
僕はすぐに救急車を呼び、彼を病院に搬送してもらった
死因は心臓麻痺
持病もなく、いたって健康だった彼が、突然心臓麻痺で死んでしまった
数日後、例のグループから因縁をつけられた僕は、河川敷に呼び出された
「おい、お前が何かしたんじゃねぇのか?」
「ぼ、僕は何もしてないよ…」
「嘘つけ!お前が触った途端苦しみ出したのを俺ら全員が見てんだよ!」
僕は胸ぐらを掴まれ、壁に叩きつけられた
咄嗟に彼の腕を掴む
「な、なに…しやがった…てめぇ…」
彼はそう言って、倒れた
いうまでもなく、死んでいた
その時、僕は確信した
僕の手には不思議な能力が宿っている
それは
人 を 殺 す 能 力
試しにもう一人に触れてみた
しかし、何も起こらない
違う男の腕を掴んでみた
死んだ
なるほど、触れるだけでは発動せず、握ることで発動するのか
残った不良グループたちは、助けてくれと懇願してきた
まぁ、むやみに人を殺すのも気分が悪い
そう思った僕は見逃すことにした
「ただし、今見たことは他言無用。漏らせば…わかるよね」
いつしか不良グループは僕の取り巻きになっていた
それから数年の時が過ぎ、僕のこの能力を知るものは僕しかいない
つまり、そういうことだ
この数年でいろいろ調べた結果、発動にはいくつかの条件があるらしい
① 触るだけでは発動しない
② 動物を殺したり、機械を故障させるなどは出来ない
③ 素手で握った時だけ発動する(手袋等があれば発動しない)
④ ③の影響から、相手の肌に直接触れないと発動しない
ざっとこんなところか
たったこれだけのことを調べるのに、幾つもの尊き命を犠牲にしてきた
しかし、いつだって犠牲というものはつきものだ
そういえば、不良グループの最後の一人は、僕にこう言い残していったっけ
「お前は悪魔だ…取り憑かれてるんじゃない…正真正銘、悪魔そのものだ…!」
いいね、悪魔
いや、でも僕が今まで殺したのは社会のゴミだけだ
ゴミを処分したのだから、むしろ天使と呼ばれるべきだろう
天使のような悪魔の笑顔…なんてフレーズをふと思い出した
今の僕にぴったりなんじゃないかな?
しかし
最近殺してないな
久しぶりに社会のゴミでも掃除しに行こうかな
なんだか、キラにでもなったような気分だ
「僕は新世界の神になる!」
なーんてね
殺すだけの力じゃ新世界の神になんかなれやしないさ
神というのは破壊の上で創造をする存在だ
僕の勝手な想像だけど
神はそんな感じだと思ってる
まぁ、なれたところで死神ってところだろう
…死神?
そうか、死神…
いいねぇ、死神
気に入った
でも普通に死神じゃあ面白くない
学生時代に興味本位で調べたことがあったな
確かイタリア語で…
La Morte
うん、いいね
今日から僕の名前は
《ラモルテ》だ