一陣凩の来訪者
※このシナリオには以下の成分が多少、混じる可能性があります。その気あるなしは解釈によります※
・薔薇、百合に近しい表現並びにやや刺激の強い性的表現
(R18メインではないので極抑えめです。でも一部は距離感がおかしい…かもしれない。)
・グロ・ゴアに近しい表現並びに理不尽、不条理、不可解な行動表現
(これは多分シナリオ上多くなるかと。)
・極力おかしいなと感じる文章は手直ししながら書いてますが、読者側から見て「これおかしくね?」と思う表現も点在するかと思います。その場合はご連絡頂けると幸いです。意図的に崩している部分は恐らく強調点がついていると思います。多分。
・ある程度多数の方が読みやすいようにルビは振っていますが、振っていない部分もあります。著者の主観によって、難読漢字は必ず振りますのでご了承下さい。一部は気にしたら負けです。
以上のことをご理解頂いた上で御一読下さると嬉しいです。
なお、サブタイトルは「いちじんこがらしのらいほうしゃ」と読みます。
俺達は決して留まることが無い。
渡り鳥と呼ぶ者もいる。回遊魚と呼ぶ者もいる。
だが、俺達はそんな彼らにとって不可侵で不可解な領域を守るためにいる。
真実は誰も知らない。
隣にいる、無邪気に列車車窓に映る景色を眺めては燥ぐ、相棒を除き。
さて、そろそろ着くだろう。今度は少し羽休めできる。
「そろそろ出る支度するぞ」
一冊の小説の扉を閉じ、俺は相棒に促す。
時に平和、時に奇怪。そんな物語が綴られるのだろう。
まぁ、退屈凌ぎには最適なものではあるだろう。
「将兵兄ちゃん早く早く!!」
「お前落ち着け。急がなくても街は逃げない」
列車から降り立ち、ホームを、エントランスを一つ一つ抜けていく。生憎今日は俺の苦手な晴れの日だった。それから丁度祭りの時期だろうか。遠くから太鼓の音が微かに聞こえてくる。
「眩しい」
「時間は待たないって。はーやーくー!!」
「じゃぁお前ここから宿まで一人で辿り着けるか?ここから後十数㎞はあるぞ」
「…無理!」
笑顔で言い切るこいつ…和狼は、俺よりも五歳年下。もうそろそろいい歳なのだが天真爛漫でいて、記憶力は欠片も無い。と思いきや突然突拍子も関係も無いものの単語が出てくる実に侮れない少年だ。何故こんな奴と俺が一緒かというと、こいつもまた『同業者』なのだ。
「あー!あっちに美味そうな匂い!!」
「こら和狼!!無駄遣いしたら今月のおかず一品減らすぞ!!」
「はーい…」
物分かりがよく素直で、食べ物を引き合いに出すと、割と素直に聞く。それから割と社交的で、知らない人にも声をかける節があるから目を離そうにも離せない。かく言う俺も過保護気味だと分かってはいるのだが、俺と和狼の事情が事情なだけにおいそれと人間関係を繋ぐのは自殺行為に近い。
宿へ向かうべく、しかし先程言ったように無駄遣いはできない為に、徒歩で向かう。幸い歩行する体力は俺も和狼もそれなりにあり、それどころか和狼に限り、とてつもなく元気で驚かせられる。宿に着いたらその瞬間に睡魔に襲われそうだ…
「あ、あった!!宿舎『タッジーマッジー』!!」
未だ元気の良い和狼の声に俺は彼が指差す方向に視線を寄せた。
『旅人、憩いの宿舎 『タッジーマッジー』 絶賛営業中』
どうやら目的地のようだ。これからここが俺達の拠点になるだろう。
「にーちゃん…オレへとへとー…」
珍しく弱音を吐いた和狼の頭を、俺は撫でてやった。
「あぁ、お疲れ様。」
撫でられたのが余程嬉しかったのか、元気を取り戻し一番乗りと入っていくその姿を追うように、俺は新しい拠点となる場所の扉を潜る。
「いらっしゃいませ」
その言葉に出迎えられて。
2018/11/12 冒頭部分作成、次回続き更新予定。