第2問『心情の問題』
「才蔵くーん」
そう呼んだのは俺のクラスメートでクラス内……いや、校内一の馬鹿。
馬場 鹿子こいつがその馬鹿。名前まで馬鹿であだ名も馬鹿。だがしかし、こいつは校内一の美少女でもある。ある意味マイナス方面プラス方面両方で名がしれている少女。残念なのは胸がないことくらいかな、あと低身長。
「どうした馬鹿。」
「ウグッ。いきなり馬鹿呼ばわりは酷いんじゃないかな〜?」
そう馬鹿みたいに……いや馬鹿なのか。じゃなくて、大きい手振り身振りでそう表現する。
「んで何だ。要件を話せ鹿子。」
「ええと。またいつもみたいにテストの話をしてほしいな〜って」
なんだその事か……こいつは、馬鹿だからテストが嫌いだ。だからか俺の話を聞いてくれる唯一の拝聴者という訳だ。
「じゃあ……そうだな……
国語の心情の問題についてを今日俺は話そう」
――国語の心情の問題
について、君はどう思う?
これは馬鹿げている話だ。どの教科も人が作り出したものだ。だからそういったことはあって仕方ないのだと思う。
だが、その中で国語は摩訶不思議だ。
人が作った文章を人が解読したものを俺らがその解読した人の意図を組んで問題を解く。
俺が唯一苦手な教科だ。
「心情の問題ねぇ〜。確かによく分からないよ。人の気持ちを理解するなんて無理。」
「本当。その通りだ。この問題にはすごい欠点だらけなんだよ。」
「才蔵くん文章中に書いてあることだって前言ってた」
「そうそれ。確かに文章中には書いてある。だが、見つけずらい。それ心情かよって突っ込みたくなるものばかりだ。」
俺はそう馬鹿でも分かるように教える。
「と言うより人間の心情なんてそう単純じゃないよ……」
鹿子は、そう寂しげに行った。
――はい、ここで問題です。この時の馬鹿の心情を読み取りなさい。
寂しいとか切ないと書くだろ。テストでは……。まあ、それが正解。
そんな時そんな問題が才蔵の中で出ているだろうと思った私は。
(それは答えじゃないよ。私は才蔵くんのことが好きって思ってた。)
そう思っていた。ほらね。才蔵くんの言ってる事はいつだって正しい。
「まずこれが第一の難点。まあ、これはできる人はできる。」
そう言って俺は馬鹿……ごほんごほん。『①鹿子に冷たい目線を送る』。
――ここで二個目の問題です。俺は『①』の時どう思っていたでしょうか。
どうよそこの君。この問題はかなりの難点だぞ。
………さあ、答えを聞こうではないか……
え? こいつはもちろん解けないか。だって?
ぶっぷー大正解。
なんだそれ矛盾してるじゃねーか。とか思っているやつに聞こうじゃないの。
――どうしてそう思ったの?
俺はただ冷たい目線を送っただけ。そうだろ? 違うか?
この時俺は確かにそう思っていたかもしれない。
だがな。俺はその時、プリンが食べたいと思っていた。
そんなの出鱈目だろって? 違うぞ。俺はそういう行動をしながらそう思っていた。
但し、その思っていたことが書かれていなかっただけ……。
そう。心情の問題は必ずしも答えが一つなのか? 違うだろ? 誰でも他人の心は大体こうだろうと想像はできるかもしれない。だが、想像することと心を読むことは違う。
結局、その文章を読んだ他人が作った問題でしかないから。
人によって考え方が違う。この問題は想像の自由を打ち砕いてる。
「……じゃあさ、鹿子この問題とけるか?」
俺は今君らに出した問題をそっくりそのまま出す。
それを一生懸命考えたはて鹿子はこう言った。
「これはできる人はできる。」
「……。」
俺はその単純すぎる答えに呆れてものが言えなくなる。
「なあ、馬鹿。この問題。普通なら、《こいつは勿論とけないか》になるんだ……」
「……。でもそうじゃないんだよね。才蔵くんは……」
「よく分かったな。俺はこの時《プリンが食べたい》と思っていた。
必ずしも、行動と思想が一致するとは限らない。
それの極端な例がこの問題だ。」
俺は君らに説明したようにそう馬鹿に説明する。
「そうだよね。誰も人の心なんて分からない。」
再び悲しい顔をする鹿子。どうしたんだ? 人の心はわからなくて当然なんだぞ?
「だからこの問題は本当の意味ではどんな天才にも解けない問題なんだ。」
「ふぅ〜ん。」
そんな事をしているうちに授業前のチャイムがなる。
あ、そういえば次国語の小テストだっけか……
「お、おい……」
おれが「変なこと書かないでちゃんとした答えを書けよ」と言おうとしたが、鹿子の席は遠く俺にそんなこと叫ぶ勇気もないのでやめることにする。
大丈夫……だよな……?
「ハイ席に付け。テストを始めるぞ。」
若めの青少年くらいの国語担当の佐々木先生が言う。
本当に大丈夫だよな……?
それから数日が経ち。
「ハイ席に付け。テストを返すぞ。
阿部…………」
そう少しずつ人が呼ばれてゆく、そのテストを見て喜んだり悲しんだり一喜一憂していた。
「烏野。お前はいつもやるな、今回も唯一の満点だ。」
烏野。それが俺の苗字。烏って頭いいんだぞ。
俺はまあ大丈夫なんだ。先生も言った通り、テストはほぼ満点。
問題は馬鹿だ。あいつ本当に間に受けてないだろうな……
「馬場! お前またこんな点数とって…… しかもなんだこれは!? プリンが食べたいって!? お前バカにしてんのか!?」
あー、やっぱりか……
馬鹿は、頭を深々と下げて反省の態度をとる。
そりゃあ怒られるだろうよ。俺の力説には社会は賛同しない。
多数派にはどう足掻こうと少数派は勝てない。そんな世の中になってるんだ。
その次の休み時間。
「だからものすごく前に言ったろ。俺のこの話はあくまでもひねくれ話だって……」
「はい。反省してます……
でも分かったよ。人と人とは表面上はわかりあってると思っててもホントは分かり合えない」
「そうだ。人とはそれぞれ違う生物。すれ違う生き物でありお互いに理解して行けない。だからこそ楽しいんじゃないかこの世界は……なっ鹿子?」
「そうだね。(人を好きになってる感情も分かってもらえない……)」
その鹿子のしょぼくれたその顔を見るのが最近多くなってきがした気がした俺だった……




