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少し運がよいはずの男のハーフウェイ・ポイント2

 ○月☓日 エミコ



 また、誰かがここに迷いこんできた。私が殺された時よりも年齢は上のようだ。あくまで殺された時を基準にした場合だけれどね。ここでの時間も加算したなら、恐らくは、私の方が年上だ。外見で年上ヅラをされたら堪らない。自分が幼い容姿をしていることは理解している。生意気そうな人だから気をつけなくっちゃ。

 まず、先制攻撃をしよう。ボードでメッセージ表示作戦だ。宙にある何かに、文字が表示されていて驚かないはずがない。これは毎回上手くいくからね。

 ・ようこそ、ハーフウェイ・ポイントへ。

 ふふ、驚きなさい。

「なぁ、アンタ、ここはドコだ?」

 え? なんなのよ。この人は、落ち着きすぎよ。ここ、高いのよ。そもそも、理解が出来ない場所にいることに驚きなさいよ。今までに来ることが無かったキャラクターね。まず、ステータスを参照しましょう。

『名前/タカハル――ね。年齢/十八歳――やはり少し上……あくまで死んだ時点の話では……能力値は……運はかなり高いわね、知力が平均以上……あとは……平均以下は一つも無いのね……特殊能力は……確率を操作する(ただし、一定以下の確率は本人が起こるわけがないと信じている為、操作することが出来ない)』

 平均以下が無いというのは、かなり優秀な基礎能力値ね。そうだ、一応は確認しておかないと……

『状態/死亡(他殺・父)』

 やはり、今回もそうか、例外が紛れ込むと、ここに来る人が増えそうだし、本当に最低限のレベルではよかったと言えるのかしら?

 そうだ。・はい/いいえ。作戦を始めなければね。次の質問から反応をしてみよう。

「もしかして、俺は死んでいますか?」

 ・はい○/いいえ。

 ふふっ、混乱するといいわ。

「そんな感じでは答えてくれるわけね?」

 ・はい○/いいえ。

 あれ? この人、受け入れたわよ。あ、見落としがあった……能力値の精神力が高いわ。十って……精神力は平均が七、範囲が十までの評価なのを忘れていたわ。最大値、ステータスの表記で最大値ってすごく珍しい……おかしな人もいたものね。

「俺は何故……。おっと、俺は殺された?」

 ・はい○/いいえ。

 ちょっと……・はい/いいえ。に適応しないでよ……私、このまま、これで会話をしなければいけなくなるのかしら……

「時間はあるみたいだし、思い出してみるよ。何かやり方はない?」

 これは、・はい/いいえ。で答えることが出来ないわ。ザマアミロよ。と小気味良く思っていると、「聞きたいが、アンタ喋れるんじゃないか? 最初にアンタって言ったときに不快さが表情に出ていたぜ。ノンプレイヤーキャラクターがそれじゃあ成立しないだろ」と言ってきた。

 あれ……もうバレてる……はぁ……安心したけど、やり辛い――

「つまらない人ね。いえ、楽しませてくれるのかしら」

 でも、助かったって気持ちが大きい……けど、やっぱり、口調が気に入らないわ。私の方が年上なのよ。

「そんなことは俺にはわからないよ。でも、殺される理由がすぐに思いつかない男の殺された理由探しってのは、なかなかに面白そうだと思わないか?」

 大まかに言ってしまうなら、ここではそれしか出来ないのだけどね。

「まぁまぁだとは思うわ」

 それしかすることが無いの。

「さいですか。取り敢えず、記憶が曖昧なんだが、何とかならないか?」

「私のステータスボードには日にちを指定すれば、あなたの視点を視る――まぁ、脳に他人の主観をインストールするようなものかしらね。それが出来る能力も備わっているわ」

 ステータスボードの説明に嘘はない。だけど、全てではないわ。私だけは視ながらにして、自分の意識を動かすことが出来る。だから、視ると表現することにしている。それらが特殊能力として備わっていることに、タカハル君なら気づいてしまうかもしれないけれど、いつになるかしら、少し楽しみだわ。ここで楽しみを見出すなんて久しぶりかもしれない。大体の人は私が導かないと始まらないし。

「それを見させてもらうことは可能か? あと、俺の名前はタカハルです。以後、お見知りおきを」

 もうそのことは知っているけれどね。貴方はそのことを知らなかったでしょう?

「私はエミコ。長い間は覚えてもらわなくて結構よ」

 彼はそのうちにここから消えてしまうだろう。このくらいで丁度いい。

「んじゃ、宜しくお願い致します。んで、エミコは映写に付き合ってくれます?」

 ・はい○/いいえ。

 取り敢えずの抵抗、私の方がお姉さんなのよ? 大人の余裕ってわけ。ただ大人はこんなイジワルをしないのかもしれないけれど――



 三月二十日 エミコ→タカハル



 彼の周りは……どうやら卒業式のようね。造花が胸に付いている人が相当数いるもの。

 彼は、自らの能力として、運がいいとことを認識しているようね。気づかずに生きている人もいるのに、文字通り幸運な人。

 友人のような人が近づいてくるわ。ステータスを参照させてもらいましょうか。

『名前/リュウ 年齢/十八歳――彼とは同学年でしょうね。この人は身体能力が高い傾向ね。精神力は平均以下ね。外見値はタカハル君より高いのね……特殊能力は放物線イメージの実行能力……? なんだかよく分からないけれど、サッカーでパスを出すときやバスケットボールのシュートとかには役に立ちそうね。汎用性はまぁまぁというところかしら』

 しかし、この外見値というのは基準が分からないわ。さっき視たタカハル君よりリュウ君の方が少し高いのだけれど……私の主観で数値化されているならタカハル君の方が少し上だと思う。これが神の見えざる手というものなのかしら。

「よう、今日でここともお別れだな」とタカハル君が言った。

 その後、彼の思考から、リュウ君がバスケットボールをしていたこと、そこで能力を活用していたことは把握できた。

「お前には天罰が下るよ」とリュウ君が言った。

 天罰を下せるとして、具体的に、その特殊能力はどんなものだろうか。というか、彼は数日後に死ぬ。能力など無くても、人は予言めいたことをしてしまうことがある。そして、彼がもし、この言葉を覚えていたら、後悔するだろう。いえ、彼が犯人……その場合は……けど、ハーフウェイ・ポイントに来るのだから、それは無かったわね。

「金もできたし、実家に籠るわ。じゃあまたな」とタカハル君が言った。

 しかし、上等な特殊能力を持ちながら、この体たらく。なかなかできたことじゃないわ。精神力の高さは本当のようね。悪い意味で。



 四月三日 エミコ→タカハル



 え、二週間後? なんというか、タカハル君は達観しているのかしら? 確率を少し引き寄せる。いい能力だと思うけれど、強大すぎるというほどではない。世の中は確率に支配されているとはいえ、過信が過ぎる。

 何故か、バイクを衝動買いしたらしい。そのくせ、コンビニに行く程度でいろいろと考えるのね……少しだけ、視ることを投げ出したくなってきたわ……

 あら、タカハル君の好みってこんな感じの人なの? それとも節操が無いだけ? ……彼は後者の予感がするわね……取り敢えず、ステータス、視させていただきましょうか?

『名前/サクラ 年齢/二十歳――タカハル君は年上好きなの? 運の数値が低いわね。外見値はなかなか高いわ……薄白い肌、見方によっては霊のようだけど、それは悪意のある見方ね……幸の薄い美女。客観的にいうならこれが当てはまるわね』

 あ、タカハルってば、ペラペラとしゃべり始めたわよ……あんな女に狙いをつけるなんて……ちょっと休憩よ。まったく、お子様はこれだから……


 せっかく久しぶりに話し相手ができたというのに、こんなことでイライラしても仕方ないわね……

 あの女、今、わざとタカハル君に触れたわ。間違いない。気に入らない女。幸薄女の癖に男の子をひっかけるのは上手のようね……



 ○月☓日 エミコ



「一旦、休憩。コイツ、誰か知らないけど、マジでつまらねぇ。卒業式から家に籠っていた期間なんて、早送り確定だったぜ」

「…………」

 呆れた。私の久しぶりの話し相手は、とんだ痴れ者だった。タカハル君なんてもう言ってやらない。彼の呼称はタカハル。呼び付けで十分。

「何か言えよ」

 ・はい/いいえ○。

 少し真面目になってもらうわ。

「それ、いいえも使えたんだな。驚きだよ、本当にな」

 全然ダメージが無いようだけど……そうだった、この人はかなり早い段階でこの仕掛は見破った。そんな人には直球でいくわ。

「もちろん使えるわよ。言葉づかいだけじゃなくて、頭も残念な人のようね」

「うるさいよ。殺されたのに明るく、元気に頑張っているタカハル君をいたわってくれよ」

 あれ、今のは本心? もうなんなのよ。情緒不安定二名でお送りしているなんてイタすぎるわよ……

「ちゃらけているから、てっきり気にしていないものだと思ってしまったわ。ごめんなさい」

 でも、真剣に傷ついていたらかわいそう。確かに、彼は死んだばかりよね……

「えーっと、エミコさん。英才の貴女様と違い、エフォートが足りないので……」

「え、でいちいち区切らなくていいわ」

 前言撤回。タカハルは少しばかり今までここに来た人間から逸している。……かもしれない。この場所ではタカハルの気持ちを視ることは出来ない。

「とにかく、ごめん。美人の険しい顔は好きじゃない。しかも、気にしていないことは大正解だ。なんの問題もない。ただそのクールビューティーフェイスをだな……」

 ただ、恐ろしいまでに適当なだけだわ。なんとなく分かってきた。

「いい加減にしなさいよ」

 釘をさす。

 効果があったのか、タカハルの顔が真剣な……こういう時にはステータスの変化をみると面白いのよね。少し、視せてもらいましょうか。

 え……おかしいわ。特殊能力の項目が入れ替わっている……読心能力ですって? 確率関連の能力の範疇ではないわ。

「タカハル、貴方そんなことも出来るの? とすると、貴方の能力を見誤っていたようね……」

「ちょっと待て、俺は何もしていないぞ」

 理由は無いが、今の心を見られるのは、イヤ。止めなくては……

「私に嘘はつけない、と考えておいたほうがいいわ。見ようとするのは止めなさい」

 これで止めてくれればいいのだけれど。

 そうすると、タカハルの特殊能力の項目が最初のものに戻った。こんな例は始めてだ。複数の特殊能力を持つ人間は見たことがあるけれど、切り替えが起こるのは、今までの経験の中には存在しない。いくつかの能力を切り替えることも出来る特殊能力なのかしら?

「話は変わるが、ここにもどってきたのは、聞きたいことがあるからなんだ」

「何?」

「ステータスボードで視ることの出来る視点は、俺の視点だけなのか?」

 まだ、ヒントも出していないと思うのだけど、そこにたどり着くのも早いわね。

「あなたの、と言ったのが間違いだったわね。覗く人の指定は可能よ」

「つまり、幸薄女の視点も――」

 エッチな考えからの派生? やっぱり、ただの馬鹿なの?

「……出来るわよ。ただし……」

「十八禁要素は自動的にカットされるわ」

 ステータスボードは、本当に最低限のプライバシーは勝手に厳守される。理由はわからないけど、それでよかった。

「いや、そんな使い方しようと思っていたわけ無いだろ……」

 明らかにガッカリしたわね。私も女の子なんですけど……デリカシーに欠けるわ。場所が場所ならセクハラで訴えているところよ。

「行き詰まったり、実行者の目星がついたりしたら試させてもらいたいが、いいか?」

「エッチな目的でなければ、協力してあげるわ」

 彼には何度釘をさしても足りない気がする。彼らしさといってしまえば、それまでだけど、簡単に許しはしないわ。

「エミコ先生は、冗談に厳しすぎると思います」

 タカハルは生真面目な生徒のように言った。もう、この行動が真面目なものでないことは分かってきた。

「隣で貴方がニヤニヤとしている状況を考えるだけで吐き気がするだけよ。それより、続きは視ないのかしら?」

 お願いだから真面目に視て。



 四月四日 エミコ→タカハル



 次の日ね。

「いねぇなぁ……」

 オカマ探しって……この程度でも、この日以前の二週間よりは活動的なのが驚きね。

「帰るか……」

 ちょっと、飽きっぽすぎるわよ――でも、おかしな出会いはあるものだ。

「お兄さん? おどおどし過ぎじゃね?」

 ピエロ。でも顔を白く塗って、チェックの衣装を着ているだけね。忘年会の余興にしては時期が外れすぎているわ。タカハルの思うように、それでピエロは務まらないでしょうね。

 しかし、彼の芸は突出したものであった。絶対の自信を描く放物線。そして、私にはそれが出来る人物に心当たりがあった。

『名前/リュウ 特殊能力/放物線イメージの実行能力』

 この特殊能力を活用しているんだ。ふふ、タカハルは気づいていないようね。出し抜いた気分。反則ではないわ。私の力を必要に応じて使っただけだもの。タカハルはただ関心するばかりでピエロがリュウ君と同一人物であることに気づいてはいない。このことをいつ、明かすことにしようか、楽しみだ。

「なんつうか、面白かったです。機会があればまた今度見せてください」

 やはり、リュウ君=ピエロに気づくことは無い。やっと一本、取った。

 でも、このショーはタカハルにとって、とても楽しかったようで、私も純粋に楽しめばよかったとも思えた。

 そして、彼は死んだ。



 ○月☓日 エミコ



「え、短くね? この子、ビックリするくらい早く死んじまいましたよ?」

 本当よ。いきなり戻されて、私だってびっくりしているんだから……というか、これだけじゃ解決も何も無いわよ。まだ、タカハルの父親の顔も見ていない。でも、取り敢えず、事実の確認から始めましょうか。

「でも、次の日を見ることが出来ないわけでしょう? なら、そこで終わったと考えるのが自然じゃないかしら」

「エミコが操作して偽装を……」

 全く……この期に及んで空口を叩くなんて……そんなことは、「必要が無いでしょう?」

「最初に答えてくれたわけだけど、俺は殺された? という問いに、なんでエミコは、・はい。と答えることが出来たんだ?」

 ふざけたと思うと、確信を突くのは、わざとやっているのかしら? この場所では、彼の主観を視ることは出来ないから分からないけれど……

 実験を一つ、「……私が下を観測していた限りで、自殺者がここに来たことはないからよ」 嘘ではない。だが、本質からは程遠い。タカハルを試してみる。

「エミコは何故、観測が正しいといえるんだ? 実は大正生ま……」

 彼は、たまたま、確信を突く。特に考えているわけではなく、たまたま。それで決定していいかしら……そろそろ一発くらい、叩いてもいいわよね。

「ここに来るには資質が必要なの。それはステータスボードで参照できるわ。資質を持ち、他殺される。私が体験した、全例がこのパターンよ。これが貴方は殺されたと判断した理由よ」

 さらなるヒントを出した。本当は、『状態/死亡(他殺・父)』 とはっきりと視ることが出来るわけだしね。

「みんな苦労して死んでいるんだな、泣けるぜ」

「貴方は安定してバカのようね」

「人の名前を呼べないようなお子様に、バカとか言われても痛くも痒くもないね」

 すぐに居なくなる人に愛着を持ってもいけないでしょう?

「貴方のような変な人間と話すのは苦手なの。真面目な人にはそれなりの態度で応じるわ」

「コミュニケーション障害ちゃんかと思ったぜ」

 心外だわ。心中では何度も登場しているわ。心外に心中、別にふざけているわけじゃないのに……それもこれもタカハルのせいだわ。もう一度、叩いておこう。

「もうダメージを受けたくないので、話を変えまーす」

 私はコミュニケーション障害じゃないわ。

「どうぞ、タカハル君」

 ノリだって少しはある。

「メンドクサクナッタ」

「ふざけてばかりだから、私が折れて、乗ってあげたのに……」

 なんなの、なんなの。なんなのよ! ええ、少し変かもしれないわよ。貴方ほどじゃないけれどね!

「真面目なことを言うとだな、死因に検討がつかないので、他の人を見せてください。ってのは如何?」

 少しは真面目にやる気になったらしい。それは悪くない傾向だ。

「今までの映像で見当がつかないなら、そうするのがベターだと思うわ」

「候補なんだけど、まず、家族。あっ、俺、言ってなかったけど四人家族だから」

「あ、そう」

 私のステータスボードにだって視ることの出来ないものはある。だが、家族構成という項目は私が削除をした。もし、家庭になんの問題も抱えていないステータスを覗こうものなら、私が耐えられない。

「構成はですね。父、母、俺、弟でして、この弟が賢いわけさ。だから、俺のことも巧く殺っちまえるのではないかと思うわけです。そのあとで、他の二人の様子も見たい。エミコはどう思う?」

 貴方を殺したのは父よ。まず、間違いはないわ。

 でも、好きにやってもらいましょう。タカハルが満足することがなにより重要だから。

「貴方と接触の機会は他の人よりも多いでしょうしね。いいと思うわ」

「では、ご一緒にいかがですか、お嬢様?」

 本当に困った人だ。私は苦笑し、うなずく。



 三月二十日 エミコ→マサト



 これがタカハルの弟さんね。疑いたくなるのも理解できるわ。彼の顔をアイドル寄りにチューンナップしていったらこのような顔になりそうだもの。普通なら嫉妬して当然だと思う。

 早速、視せてもらうことにしましょうか。

『名前/マサト 年齢/十六歳。数値は……どれも高いわ。タカハルが優っているのは、精神力だけかしら。特殊能力/精神力が三以下の相手を魅了する――これは恐ろしいようでいて、実際は、ほぼ役には立たないわね。そこまで数値の低い人間はそうはいない。無意識使っている能力だとしたらこの子も大変でしょうね』

 しかし、マサト君は真面目な人ね。これだけの基礎能力を持ちながら、努力を怠らないなんて、完璧に近いんじゃないかしら。特徴を客観的に記して第三者に読ませたら、マサト君が兄だと答える人が多い気がする……

 あ、着信ね。この歳で携帯電話を持たせているというのは、一般的なのかしら……私の家とは違うわね……この様子からすると、何かワケありのようだけど……間違いなく、彼はモテるでしょうからその関係かしら……

 彼に能力の自覚は無いみたいね。気になるのは、彼らの父親がタカハルに類する能力を持っているとマサト君が考えているところね。運がいい、それだけなら、運の数値が非常に高いだけの場合もあり得るけれど。

「ただいまー。帰りましたぁ」この声は――

 やはりタカハルね……マサト君と同じく、私も呆れるしかない。彼のキャラは長時間かけて造りあげたもので無いことは、いいかげんに分かってきた。タカハルは気分で生きている。

「どなたかいらっしゃいますか?」

「部屋にいるよ」

「マサトちゃんか。今日もいいことあったか?」

 タカハルがマサト君の部屋に入ってきた。

「普通だったよ。兄貴さ、昼間に鍵が空いていて、家にいると考えられるのは僕だけというのが想像出来るだろう?」

 多分、タカハルは分かっていてやっている。基本的にはかまってちゃんなんだ。タカハルの少し高めの声も慣れてきて、かわいらしいところもあると思えるようになってきた。ただ、マサト君の方が低音だから、タカハルが兄には見えない。

「いやー、すまんね。学校でリュウに九十万が当たったという話をしてしまって、ふと、強盗さんとかがいらっしゃっていたら、ヤバイなーって思ってさ」

「兄貴、また当たったの?」

「最近なにかと入り用だからな。二百円払って、お金をもらってきた」

「僕を巻き込まないでくれよ」

「悪かったな」

 これ、日常会話? この一家はこのような事態に慣れすぎている。これは父親の能力が半端なものではない可能性があるわね。



 三月二十二日 エミコ→マサト



 ター君って……あとで絶対に馬鹿にしてやろうっと。



 ○月☓日 エミコ



 今度は主導権を握らせない。

「よくできた弟さんよね」

「あぁ」

「マサト君とタカハル君は、生まれてくる順番を間違えたのかしら?」

 もう一発。

「穿った考え方をすることしか出来ない誰かさんには、あの少年が狡猾な男に見えていたと、そういうことかしら?」

 今までのお返しよ。

「そうかもしんないッスねー」

 あら、意外とダメージを与えられたようね。遠い目をしだしたわ。かわいそうだし、本筋に戻しましょう。

「マサト君も問題を抱えているようだけれど?」

「ストーカーのような存在がいるようだったな。ヤツは賢くて、顔もいいしそのくらいいるかもしれないな」

「確かに、貴方とは違って人気がありそうな子よね」

 違って、を強調して言った。

「ケッ、よく母にも言われていたよ。と、いうことで次は母にインタビューいってみようか」

 逃げたわ。絶対に逃げたわね。



 三月二十二日 エミコ→サチ



「ター君ー。起きてるのー?」

 ダメ、笑っちゃうわ。

 しばらくして「起きているよ」とタカハルが降りてきた。

「私はパートに行くけれど、お昼はどうする?」

「冷蔵庫のものを使っていいなら、勝手に作るよ」

 あら、意外ね。料理は出来るのかしら。

「今日は買い物に行く予定だったし、あるものなら好きに使っていいわよ。余っている豚バラを使ってくれると助かるわ」

 この母親はタカハルのことを好きみたいだ。少しうらやましい。いろいろと彼のことを理解している。過保護かもしれないけれどね。でも、ター君はちょっとね……

 彼女への疑いを無くすためにも視ておこう。

『名前/サチ 年齢三十八歳――三十八歳? いや、そうよね……綺麗だけれどね。他は……思いやりの数値が高いわね。特殊能力/無し』

 特殊能力は無し……か。そういえば、誰かが意図したように、能力持ちばかりだったわね。

 この人はのんびりした性格のようだけど、のんびりをイタズラに増長させると、タカハルのような性格になるのかしらね。



 ○月☓日 エミコ



「ター君と呼ばれているのね。弟さんの時から予想はできたけれど」

 一応言っておこう。母親がいい人そうだから止めてもよかったけれど、真面目に考えてもらうためということで。

「悪いのかよ」

 え、ちょっと恐いわよ。彼の逆鱗はここ?

「嫌がりそうだと思ったわ」

「気に入ってはいないよ。まぁいろいろとあんだよ」

 ずっと、自信に満ちていたように喋っていた、タカハルが目を逸らした。

「この人を視るのもずいぶん早く打ち切ったわね」

 彼にも予想はついているということか……

「ああ。そういえば容疑者なんて一人しかいないんだわ」

「親父だ。親父を視る」

 憂鬱そうに彼は言った。



 四月四日 エミコ→セイジ



 この人が……最重要参考人だ。しっかりと視よう。

『名前/セイジ 年齢五十歳。妻であるサチさんとは、一周り違うことになる。基本能力はかなり高い……タカハル、マサト君のいいとこ取りといったような数値ね。でも、運は特に高いわけではないわね。特殊能力は……当たりを選ぶ――』

 これは、当たりの設定を上手くやれば、応用範囲はかなり広いわ。確率操作の比にならないほどの強力な能力……正解を設定して願うだけで様々なことが可能になる。このように普通の家庭生活を過ごすには強大すぎる能力。

 この人、タカハルは……どうでもいいのかな……? 主観を視る限りでは無関心だ。


 そして、この人は特殊能力を意識的に使用している。私欲の為ではないようだけど、恐ろしい人ではある。しかし、何故タカハルを……?

 どうやって?



 ○月☓日 エミコ



「終わっちゃったぞ」

 彼には何事も無く、野心的な父の姿だけが見えている。私もタカハルの死を引き起こした人を視ていなければすごい人間が一人いたと思うだけかもしれない。だけど、彼がタカハルの死因であることは間違いない。

「つまり、貴方の死んだポイントで貴方のお父様はお仕事中というわけね」

 そこは確定することが出来た。次はどう進めるべきかしら。

「俺の死んだ様子を見ていたかもしれないヤツを視てみよう」

 やはり、タカハルは優秀なのかもしれない。犯人を知らないなら、ベターなアプローチだと思う。

 最初からその気分で頑張って欲しかったとは思うけど。

「つまりは誰を視るの?」

「ピエロがいたろ。アイツは俺を見ているハズだ。四日のアイツを視る。よろしく頼むぜ」

 タカハルはそれがリュウ君と気がつくかしら。



 四月四日 エミコ→ピエロ=リュウ



 人間にはいろいろなことが起こる。確率を操作できようが、殺されもするし、相手の能力を視ることが出来ても、死ぬ。

 彼は少なくとも、最善といえる進路を選んだわけではなさそうだ。現代、田舎町にピエロの需要なんてあるわけがない。でも、なんでこんなことに?

 タカハルが近づいてきた。

 彼は見事ともいえる無神経さで、「お兄さん? おどおどし過ぎじゃね?」と言った。

 リュウ君は当然、タカハルに気がつく。

 彼はタカハルに気づいてもらいたくないようだ。まぁ、ピエロにいきなりなっていたらね……おそらくタカハルが死んだ理由には関係しないのでしょうけど。

「なんかすごいッスね。芸歴というか、ピエロ歴は長いんですか?」

 タカハルは本当にコドモよね。年齢的には子どもでよいのだけれど、精神年齢が低いわね。私もムキになって、対応しないようにしないと。お子様なんだから。

 そして、タカハルが倒れる。その瞬間を彼は見ていない。

「おい、冗談だよな? ピエロを驚かすなんて、悪趣味だぞ………………」

 やはり、彼が直接、手に掛けたわけではない。それは彼の主観からも明らかだ。



 ○月☓日 エミコ



「分かったことは二つ。ピエロが犯人ではない。ピエロは俺の知り合い。これについてはどう思う?」

「一つめについては同感ね。主観をここまでコントロール出来る人間がいたら最早、それは人と言えないわね。二つめについては、知り合いというより、もっと親しいように感じたけれどね」

 一つめはマサト君の主観を覗いてたどり着く、適切な解答例ね。二つめはマサト君とは長い付き合いのようだから、さらに具体的な答えにたどり着いて欲しかったけれど、仕方ないわよね。友人が数週間でピエロへの変身を遂げているとは、さすがに想像もしないでしょう。

「あとはどうかな?」

「コーラがヒントかしらね?」

 やはり目立つものはこれでしょう。

「そういえば、コンビニで買っていた種類とは違ったわね」

「あぁ、あの日は買いだめしてある安物を飲んでいたっぽいな」

 安物……同じコーラなんだから、安いのものがあるなら、ずっと安い種類のでいいんじゃないかとは思う。

「それなら、その中に毒を仕込めば、アリバイを持ちながら、貴方に死んでもらうことも可能ね」

 セイジさんが実行したのは、ほぼ確定なわけだしね。

 知っているのは私だけなのだけれど。

 だけど、タカハルは納得がいかないという表情をしている。

「とてもそんな仮説は納得がいかないと言いたいようね」

 タカハルから何も言わないので、聞いてみた。

「それをしてくるとすれば、親父なんだと思うが、どうもらしくないと思ってな」

 らしくない――か――私も父に対してその程度の理解でも出来ていたらこんな所にいないのかもしれない。

「感情、感覚というものは難しいものよね」

 数値、特殊能力では測ることの出来ない何か……でも、アイツのそれは未だに理解が出来ない。『なんか、殺したくなった』なんて感情、私には理解が出来ない。

「俺、ピエロの正体を決定づけておきたいんだが、エミコさん、ステータスボードの使用許可を」

 いきなり話題を変えてきたわね

「それ、重要?」

 一応の確認をした。断ることは無いのだけれど。

 タカハルは何も答えないが、今までより真剣な顔をしている。……様に見える。

「別にいいけど、人間関係に関しては、知りすぎるのもどうかと思うけれど?」

 殺した人を知っているからといって、リュウ君を無条件に信用するのも、どうかと思う。でも、タカハルは興味本位で覗こうとしている……?

「……まぁいいけれどね……」

 眉間にシワを寄せて何を考えているの? ここでは貴方の考えは視えないの。

「ピエロの三月二十一日を見せてくれ」

 彼は何かを決意するように言った。



 三月二十一日 ピエロ=リュウ



 私はピエロがリュウ君、ということが分かっているために気を抜いていた。

 それは間違いだった。サクラがマサト君に絡んでいる。確かにあの人は精神力が低かった。そのせいでマサト君に引っかかったというわけね……

 こうなっている人間は危ない。リュウ君はサクラが特殊能力によって魅了されていることに、もちろん、気付いていないし、マサト君も特殊能力を制御して使っているわけではないようで、困っている。しかもこのようなことをリュウ君は何回か目撃しているらしい。精神力の低い人間は意外と多く存在しているのだろうか。

 タカハルは、これを視て、どう思ったのだろうか。



 ○月☓日 エミコ



「面倒だからこの日だけでいいや。取り敢えず、ピエロ=リュウだったわけだ」

 さすがにそれは気がつくわよね。ステータスボードが間違っている、などと言い出さなくてよかった。

「ピエロになった理由は気にならないの?」

 野次馬どもが好きそうなポイント聞いてみた。

「だってここから何日も視るのは退屈だろ? 大方、肩の怪我だろうさ。折れたりしている所よりも、擦り剥いた所の方が、最初は痛く感じるということを聞いたことがあるよ。ピエロは犯人ではないみたいだし、プライバシーだよ、プライバシー」

「今更プライバシーとか言い訳にもならないと思うけれどね……」

 でも、見直したわ。少なくとも、人間として最低点はつかない人のようだ。

「話は変わるけど、マサトが付きまとわれていたな。あれはどっかで見たけれど、誰だっけ?」

「貴方が幸薄女と言っていた人でしょう」

 あの人を視たいとか、やはり、何も考えずに言っていたのね。タカハルは欲にまみれたフリをしている。なんでだろう? 少し気になる。

「確か、そいつを視れば、オールキャスト勢揃いってところかね?」

「そのはずよ。さっき視た日をその人の方から視るの?」

 今回はきちんと考えてのようね。それなら視てもいいわ。

「俺がコンビニに寄った日、関わりがあるとすればその日だろう」

 そうでしょうね。



 四月三日 幸薄女



「あれは……本当に現れるなんて……」

 この時点でタカハルを知っている? マサトにストーカー行為をしていたらイヤでも見る――いえ、その可能性は……少ない。タカハルはずっと、家に篭っている。微かな違和感を覚える。

 彼女の記憶に、明らかに怪しい人物がいるわね。『冷たい目をしたオジサン』この特徴だけでは材料が少なすぎる。けど、オジサン……特徴も一致はする。

 タカハルとは会話が成立していなかったのね。タカハルは最初、好みとか思っていたのに、眼中に無いなんて、少しだけ可哀想。

 おまじないというものに固執するわね……そういえば、この人の特殊能力を調べ忘れていたわ。

『特殊能力/体液操作(自らが手を触れたことのある人間なら離れていても体液組成の操作可能)』

 ああ――おまじないね――そして、オジサン――分かった――全て繋がるわ。



 ○月☓日



「この人はもういいや…… 気持ち悪ぃし」

「なかなかの入れ込みようよね。偏執といってもいいんじゃないかしら」

 ここで私が全てを話してしまって、彼は『満足』出来るだろうか?

 もう少し、タカハルには、考えてもらいましょう。

「気になることが二つ。俺の写真を渡したオジサンなる人物と、化学式の正体について。といっても、化学式の方は、カーボンが十に、ハイドロが十四で、ニトロが二、んで、あの結合……記憶違いでなければ、ニコチンだ。確かに、俺が死んだ時の状況も、その薬理学的特性を考えると、俺がニコチンが原因で死んだのは、正しいじゃないかと。まぁ、ニコチンで死んだ他の人にインタビューしたわけじゃないから、あくまで、その効き方は想像でしか無いが」

「そんな知識をどこで得るのよ」

 私は化学式の内容は分からなかったが、それをタカハルの体液に創りだす。それで、オシマイというわけね。あの人は仕事をしていて、動揺すら無かったけれど、タカハルが死ぬタイミングが分からなければ、感情すら誤魔化せるというわけね。素晴らしい『正解』を引っ張ってきたと思うわ。

 ――でも何故?

 何故、タカハルを殺す必要が……?

「オジサンねぇ……」

 彼も気がついたようだ。

「今の所、大人の男は貴方の父親のセイジさんしかいないわね」

「しかし、あのリアリストがおまじないだと? 俺はそんなの納得できねーぞ」

 さらに確信を突いてくる。そう、タカハル自身が解決に近づかなければ、『満足』は出来ないだろう。

 能力のことを教えるにはまだ早い……

 だけど、父親を簡単に疑うわね。消去法にしたって、少し、悲しい人。その悲しい部分を隠すためにふざけているのかもしれない。――それは、ちょっと、好意的に考え過ぎかもね。

「彼自身はおまじないと言っていないわ。『そうすれば君にはきっといいことがあるよ』と言ってはいたけれどね」

「リアリストは呪いなんて不確かなものは信用しない」

「でも、貴方の父親しか今までのキャストにはオジサンはいないわよ。まぁ、所謂モブの中にはいたでしょうけれど?」

「……あと一人、オールキャストには足りていない」

「……誰のことかしら?」

 ちょっと、それを視てしまっては世界には能力があることが分かってしまう……それはまだ早い――と思う。

「エミコさん、貴女です」

「私は直接には関係していないはずだけど?」

 まだ、駄目だ。それでは貴方が……『満足』出来なくなる。ここから去ることが出来なくなるかもしれない。

「いろいろとおかしかったんだよ。いや、おかしいというか……ともかくエミコは何か重要なことを隠している。ステータスボードってなんだよ。あと、能力ってなんだ? 俺が心を読もうとしたら気づいただろ?」

 なんてこと……彼は今までの構成だけで、何か、不可思議なものがあることに気がついてしまった。

 もう隠しておいて、最期にネタバラシをして、「なんだよそれ」と、『成仏』してもらうのは不可能になってしまった。

 こうなったら、徹底的に、『満足』して消えてもらうしかない――

「意外と鋭いのかしら? それともヒントを出し過ぎたのかしら?」

「お前がステータスボードの力を見せ過ぎたのは原因ではあるかな。プライバシーに配慮してきたつもりだが、コマが揃わない。ここを回避しながらでは答えにたどり着けない気がするんだ」

 次の人からは気を付けさせてもらうわ。

 プライバシーに配慮していたとは、微塵も思えないけれど。

「そう……じゃあ、私の視点、視てみる?」

「それで説明になるのならば」

「十分すぎるわ。長くなるから、貴方との会話で重要でないところはスキップをするわよ」

 少し恥ずかしいところもあるだろうけど、仕方が無い。

『理解』をしてもらうことで、ハーフウェイ・ポイントから去ってもらおう。

 タカハルには、きっと、それしかないんだ。



 ○月☓日


「えーと、世界には特殊能力を持つ人間がいる。俺や親父みたく、因果律をぶっ壊すようなヤツもいて? マサトがテンプテーション君で? リュウは超人で? サクラ? だよな? ソイツは殺し屋にでもなれよって感じで? 母さんは普通の人? まず、ここまでは合っているか?」

「ええ」

 エミコは諦めたように頷く。

 全く、世界は知らないことばっかりだったぜ。死んじまったのが、勿体無いな。

「驚かないの?」

 エミコが尋ねてきた。

「だって、少し運がいいなんて不確かなものにも理由がみえたんだぜ。むしろ、安心したっての。当然、めちゃくちゃビックリはしているよ」

「それにしては、冷静すぎてつまらないわ」

「エミコさんの心がカワイイ反応をしまくっていたので、俺もふざけまくるのはやめようかと思いましてね」

 こう言うとエミコの顔が真っ赤になった。この子は笑っていた方が絶対にいいと思うんだがな……

「これもあるから視せるのはイヤだったのよ……」

「これも、とは?」

「いろいろと視ているから、いくつか、気がついているかも知れないけれど、まず、私が能力を隠していた理由は、真剣に推理した後に、実は能力なんてものがあります。なんていったら馬鹿らしくなって『成仏』してくれると思ったからよ。今までは、それで上手くいっていたの」

「『成仏』ねぇ……そいつはスイマセン」

 取り敢えず謝る。

 エミコの顔つきが変わった。

「このハーフウェイ・ポイントがあるのは何故だと思う?」

「さぁ?」

 俺は間抜け顔で首を傾げた。エミコは答えを知っているのか?

 ハーフウェイ・ポイントって名付けたのは誰なんだろう。もし、エミコが名付けたのなら、余裕が出来たら、バカにしてやろうと思った。

「私は結構な間、ここにいて、ステータスボードを使えるから思ったのだけど、ここに来るのは、『状態/死亡(他殺・父か母)』の人間だけ。親が子どもを殺すなんて世界はもう末期よ。だから、それこそ神のようなものがここを作ったんじゃないかと、私は思っている。そして、何とかしてここから下の世界を変えてやりたいの」

 エミコも答えは知らないらしい。

 エミコは俺のステータスを表示させてこちらに向けていた。

 俺はそれを見る。確かに、親父が殺したって書いてあるな。

「そっか。それはあまり楽しそうじゃないな」

「それが貴方の答え?」

「かもな?」

 そこで俺は姿を消した。また会う日まで。一旦、お別れだ。エミコ。



 ――――



「やっぱり、精神力の高い人は違うな……」

 彼女は誰も見えなくなった空間へと語りかけ、

「一人で消えちゃえるんだもの」

「また、一人」

 小さく、ため息混じりで。

「きっと、いつもより、寂しくなるわね――」

 少しだけ泣いて、そんなことを言った。


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