登校と連行
元々古い病院を改築して造られた雨野赤高校は、街の中心に建ててあり、旧東京競技場に並ぶ面積で外装がかなり目立つ赤煉瓦だ。校舎裏に文化祭などでよくつかわれる桜やブナの木が植えてある森の庭があり、それを挟むようにして体育館が建てられている。体育館は、校舎ほどではないがなかなかの大きさで交流の庭はその半分くらいの広さだ。気づけば生徒会副会長の席に縛り付けられているわけだが、確かに学校の内装や評判はいいし、偏差値もそれなりのはずだ。
「さあ、羽柴先生、開放してもらえますか?」
羽柴は呆れたような顔になり、眉間にしわを寄せている
「文の内容が課題と違うんだが⋯まあ、今回は特別に良しとしよう。その代わり、これからは週三だぞ。」
週三⋯つまり一週間に三回は登校しないと会長の父、桐葉秀夫さんに、こっぴどく叱られることになってしまう。俺はいろいろあって秀夫さんには、お世話になっている分、あまり負担をかけさせたくないのが本心だ
職員室はもう羽柴と俺しかいなく、もうそれぞれのクラスでホームルームがはじまっているのが安易に予想づく。そして、それに当然のような顔で席に着くあのカマトトもな!
「おい、義哉。そんな未練がましい顔をするな。」
「入り口で、俺だけこけて遅刻って。しかも、何でそのまんま門を閉めようとしたんですか‼」
門の遮断でいためた脇をさすりながら、自分の不幸を呪っていると、軽く肩をたたき羽柴は青年のようなまっすぐな曇りのない目で問いかけてきた。
「どうやって、何もない場所で転んだんだ?」
それは、とらえようによっては、先生の純粋な好奇心だったのかもしれない。はたまた、俺への目くらましだったのかもしれない。
会長にさんざん付き合い果たされ、精神的に摩耗し始めた俺はやがて考えるのをやめた。