始まりの朝
日が差して街がかなり明るくなってきた。
4年前の戦争で戦地になった相摩市は、首都圏の近くで復興がかなり進んだはものの、市のすぐ外はコンクリートの剥がされ、瓦礫の転がる道路や大きな廃ビルが手付かずのまま残っている。
自分の今いる溶けて変形している電波塔は昔、地下に軍の資料館があって、今持っているボロボロの教科書もそこから借りてきたものだ。
人のいないこの時間とこの場所がなぜか昔から好きだった。
「やっとみつけた~!」
急に後ろから飛び掛かる勢いで抱きついてきた女学生徒に全てが台無しにされた。
「生徒会長は学校にいけよ。ところで今日は何でばれた⋯」
「フフフ、今までの義哉君の野宿場所が、市外の図書館だったから」
この人は市内の雨野赤高校の生徒会長桐山優。有名な家柄のわりに明るく人なつっこい性格で嘘を嫌うから、異性にもよく好かれているらしい。
「優、ここは資料館であって図書館じゃないよ。ってかくっつくな!」
右肩にのった小さな形の整った顔は艶やかな黒髪を肩まで伸ばし綺麗に切りそろえてあり日本人形のような可愛らしさと綺麗さがある
「今日は学校に一緒にいこうよ」
「断る。おれにはもっとしなきゃいけないことがあるんだ。」
「せっかく副委員長になって仕事仲間たちとも仲良くなれたのに?」
こいつめ⋯勝手にいれておいて何で偉そうなんだ⋯しかし、ここまでわざわざ来たのに追い返すもあれか。