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赤毛少女の提案

「あああ、もう! 誰でもいいから助けてー!」

 赤毛の少女は、誰もいない路地で叫んでいた。

 帝国学院内に存在する、グループのひとつに『特殊新聞部』というものがある。彼女、ブライスはそこに所属している学生だった。グループ名にセンスがない、と思いながらも、日々を楽しく過ごしている。

 だが最近は、グループ内の他人事と切り捨てられぬ出来事に、頭を抱えていた。

『新聞部』部長のオスカーと、彼を信頼している部員シンシアの仲が、よくないのである。この二人が顔を合わせると、周囲の温度が五度くらい下がる気がしていた。

「なんでかなー。普段、シアはあんなに部長大好きなのに」

 むしろ部長に心酔しすぎていて、友人のブライスとしては心配になるほどなのだ。

 だから最近の現象は、おかしい。

 そしてさらに困ったことに、向こう二人は何も話してくれない。さらに、同じ『新聞部』部員のカーターも、見て見ぬふりをしているのだ。おかげでグループ全体がぎすぎすしてしまっている。

「はあ……。『新聞部』にも、『調査団』くらいの団結力があればなあ」

 ブライスは、今は帝都にいない六人の顔を思い出しながらため息をついた。普段、二つのグループを引きあいに出すとオスカーの機嫌が悪くなるので黙っているが、『調査団』と関わるようになってから、彼女は常々そう思っている。

「どうしてあんなに結束強いのかな。休みが明けたら、訊いてみよう」

 ブライスは、呟くと、両の頬を手でぺちっと叩いた。気合を入れて、路地から出る。この後も、『新聞部』の集まりがあるのだ。

 彼女は、そこである提案をするつもりだった。


 公園に集まった四人は、相変わらず殺伐とした空気を醸し出していた。とりあえず、全員で、今後の新聞の発行予定や活動について話し合う。そして一通り話し合いが終わったところで、ブライスは、帰ろうとする三人を引きとめた。

「ね、ねえ! たまには、みんなでどこかに遊びに行かない?」

 ブライスが言うと、三人は揃って目を丸くした。シンシアが、まじまじとブライスの顔を見つめて目をすがめる。

「どうしたんですの? ブライスがそんな提案をするなんて、珍しいですわね」

「い、いやあ~。そうかな? だってほら、今年の冬はあまり活動しないでしょ? だったら息抜きついでに、どこかに行ってもいいんじゃないかなって思って」

 ブライスは、一生懸命笑顔を作りながら言う。それからちらりと、オスカーの方を見た。実際は、旅行ついでに彼とシンシアに仲直りしてほしかったのだ。無愛想な部長は、ブライスを見、続けてシンシアを見たが、すぐに何事もなかったかのように鼻を鳴らす。

「それは別に構わないが。どこに行くつもりだ?」

「本当!?」

 ブライスは、目をきらきらと輝かせた。一番説得が難しいと思っていた人間が、こうも素直に納得してくれるとは。彼女は勢いに任せて、部長の問いに答える。

「あのね。シュトラーゼなんてどうかなーって思ってたんだ!」

「シュトラーゼ? 北の?」

「うん! 静かな場所だけど、ほら。もうすぐ『女神像』の一般公開があるじゃない? だから新聞のネタ集めにもちょうどいいかなって!」

 ブライスがまくし立てている横では、カーターが「シュトラーゼ!?」と食いついてきている。神官専攻の彼は、神にまつわる話が大好きなのだ。

 オスカーはしばらく考え込んでいたが、部員の様子を見ると、諦めたようにため息をついた。

「良いだろう。ただし、女神像の公開に間に合うようにするなら、なるべく早く出ないといけない。おまえたち、大丈夫か?」

 部長の問いかけに、全員が肯定を示した。

 オスカーは、うなずくと、「決まりだ」と言った。ブライスは、心の中で、歓喜の声を上げた。


 もちろん彼らは知らない。

 シュトラーゼに、『調査団』の六人がいることを。

 そして――彼の街で近く、『金の選定』が行われるという事実も。


 運命は静かに、だが確かに動き出した。


Fin


蒼井七海です。ようやっと、第六部が完結しました。長かった……! 難産だった! 過去編をヴィント視点にしたのがまずかったでしょうか。えらく苦労しました。次はさくっと完結させたいところです。


さて次回。

 女神像の一般公開が迫る中、『調査団』は独自にその調査を始める。途中、『特殊新聞部』の四人と思わぬ再会を果たすも、彼らはなんだか様子がおかしくて……。

 そして、邂逅と再会を重ね、ついに『金の選定』の日を迎える。


 次の話で一区切りです。よろしくお願いします


2016.1.5

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